映画「地獄でなぜ悪い」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|園子温

地獄でなぜ悪い

監督:園子温 2013年9月にキングレコード/ティ・ジョイから配給

地獄でなぜ悪いの主要登場人物

武藤大三(國村隼)
主人公。武藤組の組長。昔かたぎの親分肌だが妻と娘を深く愛する。

平田鈍(長谷川博己)
高校時代から自主映画に熱中。28歳になった現在でも監督になる夢を追い続ける。

池上純(堤真一)
武藤と抗争中の組織のボス。勝負服は和服。

武藤ミツコ(二階堂ふみ)
武藤の娘。裏切った男は許さない。

橋本公次(星野源)
ミツコの1日限定の恋人。優柔不断で流されやすい。

地獄でなぜ悪い の簡単なあらすじ

極道者の武藤大三は自分を守るために体を張って罪を犯した妻・しずえに、娘のミツコを主役にした映画をプレゼントするつもりです。

一般人の橋本広次と平田鈍の知恵を借りながら、対立する北上会との出入りの模様をカメラに収めようとします。

撮影の最中に武藤は死亡しますが、生き残った平田が映画を完成させ世に送り出すのでした。

地獄でなぜ悪い の起承転結

【起】地獄でなぜ悪い のあらすじ①

ちょっぴり仁義なき戦い

暴力団を率いて北川会との縄張り争いに明け暮れている武藤大三ですが、妻のしずえと歯みがき粉のCMでブレイク中の10歳の娘・ミツコは何よりもの宝物です。

ある時に北川会の4名のヒットマンが武藤の留守中に自宅に押し入りますが、妻のしずえが包丁で返り討ちにしてしまいました。

4人のうち辛うじて息があり逃走したのは池上純で、その場を通りかかった映画マニアの高校生・平田鈍が手持ちのビデオカメラで録画します。

しずえは過剰防衛で深作警察署に逮捕されて事件が大きく報道されたために、ミツコが出演していたCMの放映は打ち切りになってしまい芸能活動も自粛しなければなりません。

武藤は北川会の事務所に乗り込んで前々から気に入らなかった会長の住田を殺害しますが、跡目を継ぐことになった池上純は意外にもクールです。

不思議と気が合ったふたりは取り敢えずのところ手打ちにして、武藤はしずえが刑務所から出てくる日をひたすらに待っていました。

【承】地獄でなぜ悪い のあらすじ②

映画界に殴り込み

武藤組の本部ビルに北川会の構成員たちが銃弾を撃ち込んで、両者の関係がふたたび険悪になったのは10年後のことです。

20歳になったミツコは子役から女優への転身を目指していましたが、束縛してくる父親に嫌気がさしていたために見張りのすきをついて行方をくらませました。

ボディーガードたちがしつこく追ってくる中で、ミツコは街中で見つけた橋本広次という青年に彼氏のふりをしてもらい久しぶりの自由を満喫します。

釈放が10日後に迫ったしずえはミツコの映画デビューを楽しみにしているために、撮影をすっぽかして主演を降板されたと本当のことを打ち明ける訳にはいきません。

ようやく発見されたミツコと橋本は身柄を拘束されて、武藤の前に引きずり出されました。

武藤は橋本が駆け落ちを唆したと勘違いして一刀両断に成敗しようとしますが、ミツコは「この人は映画監督」とうそを付きます。

武藤は北川会との抗争を終結させてしずえを喜ばせるためにも、殴り込みを実録にした映画を橋本に作らせるつもりです。

【転】地獄でなぜ悪い のあらすじ③

映画の神様のお導き

カメラから照明までが武藤ビルディングに運び込まれてきますが、素人の橋本は怖じ気づいて現場を脱走しました。

願い事がかなうと評判の祠にやって来た橋本は、10年前に平田が映画の神様に宛てて書いたメッセージを発見します。

紙の余白に記してあった電話番号にかけてみると、平田は近くのバーで飲んでいるそうです。

平田はあれから「Fuck Bombers」という制作チームを立ち上げたようですが、いまだに自分たちの作品を完成させていません。

製作費も人員も幾らでも出るという話に飛び付いた平田は、ミツコを主役にすることを条件に武藤組の映画班に加わりました。

撮影部、照明部、録音部と武藤組を3つのグループに分けた平田は、ミツコと橋本を連れて池上のところにあいさつに行きます。

武藤組と北川会との戦いにカメラを回すこと、双方の組員が平田の書いたシナリオ通りに動くこと、拳銃の撃ち合いではなくチャンバラで決着をつけること。

池上は10年前に武藤宅を襲撃した歳にミツコにひと目ぼれをしていて、彼女からの頼みであれば断れません。

【結】地獄でなぜ悪い のあらすじ④

血と歓喜のクランクアップ

深作署の組織犯罪対策課に所属する木村は、武藤組の動きが慌ただしいことに気がついたために張り込みを続けていました。

機材を積んだトラックが北川会へと向かったのを目撃した木村は、中身が危険物と勝手に思い込んで部下とともに現場に乗り込みます。

撮影がスタートすると武藤組と池上会の武闘派が入り乱れての大混戦となり、台本を無視して大暴れをする者が後を絶ちません。

武藤は首を斬り落とされて即死、池上も機動隊を引き連れて突入してきた木村によって射殺。

監督ではなく急きょ役者として現場に駆り出された橋本も、ミツコと手をつなぎながら力尽きました。

暴力団関係者と間違われたFuck Bombersのメンバーも銃撃戦の犠牲になる中で、ただひとりだけ助かったのが平田です。

一部始終を映したフィルムは高校生の時に仲間たちと通いつめて、今では休館中の名画座に届けられます。

タイトルは「地獄でなぜ悪い」に決定して、大勢の観客の拍手に迎えられながら上映されるのでした。

地獄でなぜ悪い を観た感想

強面のヤクザ者・武藤大三には、國村隼のイメージがピッタリとはまっていました。

映画の序盤で北川会の住田を片付けてしまうシーンは凶悪ですが、少しずつ父親らしい人間味が見え隠れしていきます。

そんな父親からは想像がつかないほどの魅力を放つ、ミツコ役を演じている二階堂ふみからも目が離せません。

草食系男子のサンプルのような橋本広次はおろか、着流しに日本刀を構えた池上純でさえ抗えないのは当然でしょう。

一世一代の1本を撮ることだけを夢見ていた平田鈍が、血まみれになりながら雄たけびをあげて走り出すラストも圧巻です。

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