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サクラ侵入の謎を解くキーパーソン
サクラの侵入ルートを押さえる意義は二つです。一つはサクラを最優先に捉える事。もう一つはアツシに捜査の手を伸ばすだろう警察よりも先に、部屋にお金が運び込まれた証拠を掴む事でした。
アツシは受付に常駐する臨時コンシェルジュの津吹キョウコに声をかけます。マインド-アイで確認できる図上の数値は-21です。アツシは大学でイベントを企画していると話し、キョウコに”街の可愛い子”として参加しないか相談を持ち掛けます。
キョウコはアツシと目も合わせず、スマートフォンの操作をしながら『ナンパだろ』と一蹴しました。しかしアツシは臆さず続けます。キョウコのスマホカバーが山手線29デザインである事に触れ、自分も同じアイドルグループが好きだと微笑みかけました。それに対しキョウコは、好きなものを揃える事はよくあるナンパのテクニックだと言って苛立ちの表情を見せます。
アツシはキョウコの指摘を受け流し山手線29が本当に好きだと話しを続けます。キョウコはアツシの胸ぐらに掴みかかり、他の女みたいにナンパできると思うなと言い捨て睨みつけました。
それでもアツシは食い下がり、メンバーの担当駅名を順に挙げます。”浜松町”とるるなの担当を口にした途端、キョウコの苛立ちはピークに達しました。受付に手のひらを強く叩きつけ、『なに笑ってんだよ』とアツシを怒鳴りつけます。キョウコは派手な見た目の自分が可愛いアイドルグループのファンである事を、バカにされている気がして感情的になっていました。
アツシの予想通りキョウコが山手線29好きで、加えて浜松町が1番の推しだと分かりほくそ笑みます。感情を荒げるキョウコにアツシは、俺の話は忘れてくれていい、けれど今から起こる事は誰にも言うなと、威圧的な態度で言い聞かせます。アツシの急な変化にキョウコがたじろいでいると、エントランスの自動ドアが開きました。
現れたのは山手線29浜松町担当 小岩るるなとマネージャーの米村でした。まさかの光景に、キョウコは唖然とします。るるなを見るキョウコの図上の数値は93を示していました。
るるなを使いキョウコを買収
米村はアツシの元へ来て、るるなに直接声を掛けた大学イベント事務である事を確認します。それから上を通さずるるなを大学に呼ぼうとした事を批難し、厳しい態度で接しました。
アツシはたまたまアイドルに知り合えたからダメ元でお願いしただけなのだと、にこやかに許しを請います。また、企画の目玉である、津吹キョウコを山手線29に紹介するツテを作る事が1番の目的だったと明かしました。
米村はマネージャーである自分に言われても困ると答え、オーディションを受けに来るよう促します。アツシはいかにも残念そうに振る舞った後、折角の機会だからと言ってるるなにキョウコと握手させます。
『オーディション来るの?がんばってね!』と憧れのるるなに手を握られたキョウコは、興奮で赤面しなされるがままです。
米村は何故こんな人目に付く場所で待ち合わせするのかと、騒ぎになる事を心配します。すかさずアツシはキョウコがマンションオーナーの娘だから心配無用だと答えました。監視カメラを指差したアツシは、後で部屋に”あれのデータ”を持ってくるようキョウコに指示します。るるなを間近に感じられた喜びで混乱しているキョウコは素直に了承しました。アツシはるるなの存在を餌に、エントランス以外にある監視カメラのデータもキョウコから奪取する考えでいました。
アツシが非常階段を利用して部屋へ戻る途中、るるなから電話が入ります。アツシが大学イベント事務としてマネージャーとコンタクトを取る事で、彼氏疑惑を払拭できたと感謝の電話でした。るるなはマネージャーのアツシに対する評価が落ちた事に心を痛めますが、アツシがるるなの評価の方が大事だと言うので嬉しくなりました。アツシにまたあのコンシェルジュに会ってやってくれと言われ、快く承諾します。
キョウコの身体に憑依するサクラの捕獲
アツシはるるなとの電話を切り、裏から自分の部屋に戻りました。暫くしてインターホンが3度鳴ります。アツシは静かにその時を待ちます。次の瞬間、施錠していた扉は開けられ、キョウコの身体を借りたサクラが現れました。アツシはやっとサクラを捕まえました。
コンシェルジュが管理する緊急用の鍵の存在にもっと早く気づくべきだったと、アツシは後悔しました。キョウコの頭上にはやはり、100000096の数値が映されています。サクラは考えなしに、アツシが自分を待っていたという事実に激しく喜びを示します。
サクラが関与していない第四の事件
アツシはサクラがキョウコの体でハグを求めてくるのをあしらって、強盗を繰り返す理由を問います。サクラは”強盗”と聞いても自分の行為と結びつかない様子で、おうむ返しで聞き返します。『あ!お金のこと!? どう?アツシくん借金返し終わったかな!?』と辛うじてお金の話しだと理解しますが、質問には答えません。
アツシは借金があるという話は嘘だったとサクラに明かし、嘘をついた事について全面的に自分の非を認めます。その上で、本当に借金があったとしても強盗をする理由にはならないと、サクラの行為を否定しました。
アツシは第四の事件を思い返し、怒りが込み上げます。サクラが憑依するキョウコの身体を壁に押し倒しました。『金を奪って人を殺して、そんなの俺が望むと思ってたのか!? 答えろ、サクラ!』と凄まじい剣幕でサクラに感情をぶつけます。
サクラはアツシの形相に狼狽えながら、小さな声で訴えます。何と言ったか分からずアツシが聞き返すと、サクラはキョウコの身体で堰を切ったように泣き出しました。やってない、人なんて殺してないと、声を上げて泣き続けます。
思い掛けない訴えにアツシは当惑し、ひとまずサクラにキョウコの身体で泣く事をやめさせます。ややあってサクラが泣き止むと、アツシは順を追って確認しました。現金輸送車から盗んだお金をアツシの部屋に運んだ事、犯行の最中に鼻歌を歌った事、サクラはどちらも素直に自分のした事だと認めます。次にアツシが人を轢いて車ごと燃やした事を確認すると、やはりサクラは泣き喚きながら強く否定しました。
アツシは混乱しました。そこで初めてさっきサクラが手に持っていたのものが、第四の事件で盗まれたはずのお金でなくディスクである事に気がつきます。今日の昼、るるなを利用して、キョウコに持ってくるよう指示した監視カメラのデータでした。
サクラの挽回
アツシはサクラの行為を振り返り、アツシの言葉通りに動こうとしていたのかもしれないと思い始めます。サクラが泣きながら謝ります。アツシはサクラに暴走して欲しくない一心で、俺の為に頑張る必要は無いと伝えます。けれどサクラの耳には届かず、挽回すると宣言しキョウコの身体を離れました。アツシの努力も虚しく、サクラはまた一人で暴走を始めてしまいます。
アツシは気を失った状態のキョウコを抱き抱えながら、サクラの本質にもっと早く気付いてやるべきだったと悔やみます。インスタグラムを操作したり、お金を運んだりと悪知恵はあるけれど、サクラの精神面は基本的に6歳の頃と変わっていませんでした。挽回を宣言したサクラが次に何を起こすのか、全く想像できません。
サクラが第四の事件に関与していないとすれば、サクラの犯行に見せようとした別の犯人が”便乗”したのかもしれないとアツシは考えました。
港区3億円事件 特別捜査チームの発足
同じ頃、警視庁の会議室では、第四の事件で銀行員の女性が一人亡くなった事が重く受け止められていました。犯人の凶行を一刻も早く止めるべく、”港区3億円事件の特別捜査チーム”の発足が発表されます。
それから、今までの事件の手口について話し合われました。四件全てで手口は共通です。輸送車が規定コースを外れ暴走し、後には現金が消え『記憶がない』と主張する運転手だけが残りました。
真犯人は警察の捜査の目を潜り抜け、第四の事件を起こし殺人と放火の罪を重ねました。捜査チームは真犯人のその挑発的な態度に憤り、この国の殺人検挙率の高さを思い知らせてやると捜査に一層尽力します。第7話へと続きます。
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