【ネタバレ有り】武道館 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:朝井リョウ 2018年3月に文藝春秋から出版
武道館の主要登場人物
日高愛子(ひだかあいこ)
アイドルグループ“NEXT YOU”のメンバー。本作の主人公。高校二年生。
安達真由(あだちまゆ)
アイドルグループ“NEXT YOU”のメンバー。高校一年生。
堂垣内碧(どうがきあおい)
アイドルグループ“NEXT YOU”のメンバー。高校二年生。
坂本波奈(さかもとはな)
アイドルグループ“NEXT YOU”のメンバー。高校四年生。
鶴井るりか(つるいるりか)
アイドルグループ“NEXT YOU”のメンバー。中学二年生。
武道館 の簡単なあらすじ
物語は“NEXT YOU”というアイドルグループを中心に語られます。
グループの結成一周年記念イベントを終えてこれからという時、メンバーたちは中心核の杏佳がグループを卒業すると告げられます。ショックを受けながらも五人体制となった“NEXT YOU”はアイドルの憧れである武道館に向かい全力で走って行きます。そしてもうすぐ辿り着くというとき、女の子らしい感情がグループを危うくするのでした。
武道館 の起承転結
【起】武道館 のあらすじ①
結成して一周年が経つ女性アイドルグループ“NEXT YOU”のメンバーは事務所に集められ、グループの中心核でもあった杏佳がグループから卒業することが伝えられる。
メンバーの誰一人、杏佳本人から卒業のことを聞かされていなかった。
「武道館に行こう」グループの目標を決めた杏佳の突然の卒業に戸惑うメンバー。
帰宅した愛子は杏佳卒業の動画を見ていた。
メンバーの心境と杏佳のオーディションから今までの軌跡が綴られた動画が公開されていた。
杏佳が卒業し、五人体制となった“NEXT YOU”の活動はそれでも続いていた。
杏佳の抜けた穴を埋めるために、一年間続けてきたダンスのフォーメーション変更に精を出していた。
それまで杏佳と碧が中心だったダンスも、碧を中心に左右に二人ずつ並ぶ配置に固まっていた。
戦国時代最終軍の第二弾と銘打った企画で、愛子たち”NEXT YOU”は水着のプロモーション撮影を行った。
水着写真の載った雑誌の評判をインターネットで検索すると、心無い言葉があった。
【承】武道館 のあらすじ②
女性アイドルグループ“NEXT YOU”のメンバーは、メンバーの中で唯一一人暮らしをする波奈の部屋に集まっていた。
それぞれが持ち寄った具でたこ焼きパーティー。
十一月に出したシングルがデイリーシングルランキングで初めてトップテン入りしたことを祝うために集まったのだ。
テレビでは波奈が出演したバラエティー番組が放送されていた。
準備をしない真由とるりかは、波奈の登場に盛り上がっている。
握手券を付けて発売したシングル曲は次の週にはトップ50を下回っていた。
『席替えをした日の放課後』をテーマにした握手会は盛況だった。
短い時間の中で愛子は「ホントですか」を言わないように気を付けていた。
愛子を応援してくれる“サムライ”の姿もあった。
「ブレイクの予兆があるよ」サムライさんは愛子にそっと教えてくれると同時に波奈のことを心配する。
それは、波奈が出演したバラエティー番組で流れた波奈のパソコン画面に、違法アップロードサイトが映っていた。
そこだけを切り取った画像は、一夜にして拡散され批判された。
【転】武道館 のあらすじ③
バレンタインに出したシングルの握手会とミニライブを名古屋で行うと知らされたとき、愛子たち五人は「最後の車移動がしたい」とマネジャーに頼んだ。
移動中に立ち寄ったサービスエリアで愛子は幼馴染みの大地とメッセージのやり取りをしていた。
握手会とミニライブを行う愛子と剣道の全国大会に出場する大地は、偶然に二人とも同じ名古屋が会場だった。
他のアイドルグループの握手会でアイドルが襲われ、ケガをした事件があった。
それにより多くのグループは握手会やライブを中止にした。
“NEXT YOU”も握手会を中止にした。
その代わりに、ミニライブは会場を増えして行われた。
キャンセルされた会場を抑え、握手券をチケット代わりにした純粋なライブに変更した。
世間からの批判はあったが、ファンの間では評価が高かった。
名古屋の帰りに寄った銭湯で愛子は碧と一緒に涼んでいた。
ライブの話やメンバーの変化など他愛もない会話を交わしていた。
「夏にさ、行かない? 一緒に。武道館に」
【結】武道館 のあらすじ④
東名阪ワンマンツワーが決まった。
それと同時に、リーダーの波奈から新メンバーを募集することも発表された。
新メンバー募集のことは波奈以外のメンバーには知らされていなかった。
「この先も”NEXT YOU”がずっと続いていくように」新メンバーの最終候補生のお披露目がワンマンツアーの最終日に行われた。
“NEXT YOU”に関する情報や些細な出来事を愛子は、幼馴染みの大地と離れて暮らす母の二人にメールで知らせていた。
大地の返事はゆっくりと、母からはすぐに返ってきていた。
愛子たちの地道な活動は、確実に知名度を上げて、ファンを獲得していた。
「これどういうこと?」しかし順調にみえた最中、マネジャーは一枚の写真を碧に見せる荒い写真には、帽子を被りマスクをした碧がケータイを触っていた。
写真は、“NEXT YOU”のファンが名古屋で撮影してSNSに投稿したものだった。
撮影されたその日、碧は体調不良を理由に練習を休んでいた。
順調にみえた“NEXT YOU”に陰が射し、人気とは裏腹にゆっくりと崩れていく。
武道館 を読んだ読書感想
朝井リョウが紡ぐアイドルの物語。
多感な思春期の真っ只中で、少女たちの心情を変化と苦悩が繊細に描かれている。
一周年でグループを去っていった杏佳は仕事が少なくなり、それに反してグループの知名度と人気は上がっていく。
たった一つの出来事が多感な少女を変化させていく。
些細なことがいずれは取り返しのことにもなる。
誰かを愛することは素晴らしく美しいはずなのに、世間はアイドルにそれを求めない。
眩し過ぎるライトの中で活動する少女たちも、一人の女の子で誰とでも同じ多感な思春期の中にいる。
変化するのは体格だけではなく、心すらも変化する。
アイドルにスポットを当てながら、思春期の変化を紡ぐ物語。
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