その日、朱音は空を飛んだ(武田綾乃)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

その日、朱音は空を飛んだ(武田綾乃)

【ネタバレ有り】その日、朱音は空を飛んだ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:武田綾乃 2018年11月に幻冬舎から出版

その日、朱音は空を飛んだの主要登場人物

川崎朱音(かわさき あかね)
高校2年生 本作品の主人公、校舎から飛び降りて自殺してしまう。

一ノ瀬祐介(いちのせ ゆうすけ)
高校2年生 サッカー部に所属し朱音とは面識がなく、川崎朱音が飛び降りた現場に居合わせる。

細江愛(ほそえ あい)
高校2年生 優等生タイプばかりの生徒の中で、少し不良っぽい少女で、クラスでは嫌われている。

夏川莉苑(なつかわ りおん)
高校2年生 成績は高校入学以来学年1位を譲ったことがない。誰とでも話せる。

高野純佳(たかの すみか)
高校2年生 朱音の幼馴染み。面倒見がよく、小さいときから朱音の世話を見てきた。

その日、朱音は空を飛んだ の簡単なあらすじ

まず、このお話は高校2年生の川崎朱音が校舎から飛び降りて自殺するお話です。朱音は飛び降りる直前にクラスの女子全員に手紙を書き、飛び降りる現場に呼び出していました。しかし、現場に行ったのは高野純佳一人だけ、その純佳の顔を見ながら朱音は飛び降りていきました。朱音は様々な友達関係の中で悩み、苦しみ死んでいったのです。

その日、朱音は空を飛んだ の起承転結

【起】その日、朱音は空を飛んだ のあらすじ①

朱音は空を飛んだ

朱音は進学校に通う高校生2年生です。

ある金曜日、その日欠席していた朱音は学校の屋上から飛び降りてしまいます。

遺書はありませんでした。

ただ、朱音はその日「放課後北校舎の屋上に来て欲しい。」と書いた手紙を、花が描かれた絵を添えてクラスの女子全員の机の中にそっと入れていたのです。

しかし、屋上へ行ったのは幼馴染みだった純佳だけでした。

屋上に駆けつけた純佳を見た瞬間、朱音は飛び降りてしまいます。

その時、下に同じクラスの莉苑と近藤理央が居合わせ、自殺を目撃してしまいました。

そして、偶然近くに来ていた朱音とは関わりのない他クラスの祐介も目撃し、屋上から落ちてくる朱音を動画で撮影し、ネットにあげてしまいます。

その動画は瞬く間に拡散されました。

クラスメイトたちは土曜日に学校へ臨時に集められアンケートに答えました。

しかし、女子はみな手紙のことを隠していました。

そして、月曜日からまた学校が始まります。

自殺を目撃した理央と純佳は学校へ出てくることは出来ませんでしたが、莉苑は普通に学校生活を送っています。

動画を撮影した祐介も学校に登校し、動画が拡散され評価されたことに優越感を味わっていました。

【承】その日、朱音は空を飛んだ のあらすじ②

歪んだ無二の友達

朱音は幼い頃から引っ込み思案で、人との関わりを持たない少女でした。

唯一本音で話せるのは純佳だけです。

二人が小さな時から純佳は朱音の面倒をみて、仲の良い友達でした。

二人が成長して来るに従い、朱音は純佳を独占したいという欲望に駆られていきます。

朱音は純佳が離れていくことを恐れ、純佳が離れていくと感じると、自傷行為に走ったり死にたいと言ったりして、純佳の注意を朱音に向けさせたりするようになります。

純佳はその度に朱音の所に駆けつけ「いつも側にいるよ。」と声を掛け安心させて来ました。

しかし、純佳も高校生になったことをきっかけに他の友達との関わりが欲しくなり、サッカー部のマネージャーをしたり、クラスの女子と話したりするようになっていきました。

朱音は高校生になっても人付き合いは苦手で純佳を介しての友達しか作れません。

その友達が莉苑であり、細江愛や愛と仲の良い桐ヶ谷美月です。

そんないびつな人間関係を続ける中で、朱音の愛や美月に対する思いは歪んだものとなっていきます。

【転】その日、朱音は空を飛んだ のあらすじ③

細江愛と川崎朱音との関係

細江愛は進学校には珍しく、制服の着こなしが乱れていたり、マニュキュアを塗ったりしていて、周りの生徒から怖がられている女生徒です。

また、思ったり感じたりしたことを素直に口や態度に出してしまう性格でもありました。

そんな愛は2年生で同じクラスになった純佳と仲良くなります。

愛には中学から付き合っている中沢博という彼氏がいました。

中沢は成績が万年2位(いつも1位は莉苑)で、顔は良いのですが成績にこだわっている、打算的な男です。

中学生の時に愛から告白し付き合うようになり、高校1年生の時に中沢から別れを告げられ、悲しくみつつも別れることになりました。

その後、朱音は中沢に告白し付き合うようになります。

制服の着こなしもしっかりしていた朱音ですが、中沢と付き合う前後から着こなしも乱れ、マニュキュアを塗ったり髪を染めたり悪ぶったような容姿に変化していきます。

朱音は中沢と付き合う事になったことを愉悦の表情で愛に告げます。

しかし、愛にはもう中沢への未練もないので、それを面と向かって言われるのはただただ腹立たしいだけです。

朱音は「友達だから伝えた。」と言うのですが、愛は「友達と思ったことない。」と応じ不穏な空気に、、、

そのやりとりを聞いていたクラスメイトたちは愛が朱音をいじめていると勘違いします。

愛は自分の思ったことをそのまま声にしただけだったにも関わらずです。

【結】その日、朱音は空を飛んだ のあらすじ④

破かれた遺書

純佳は頼り切りになる朱音と少し距離を置こうと考えるようになっていました。

愛や莉苑や桐ヶ谷と仲良くなったのもその一つです。

だから純佳は朱音が中沢と付き合うことに少し安堵を覚えていたのです。いつも一緒だった放課後の帰宅も朱音を中沢に任せ、純佳は他の友達と帰ることが増えました。

しかし、朱音が中沢と付き合ったり身なりを乱したりする理由は純佳を愛にとられたくなかっただったのです。

愛を振った中沢と今私は付き合っている。

愛と同じファッションだってしている。

愛より私の方が上だ、だから私の方を見て!と言う朱音からの純佳に対するメッセージだったのです。

しかし、純佳は少しも理解してくれませんでした。

朱音はみんなに認めてもらいたかったのですが。

しかし、それは彼女の感性の足りなさで、認めてもらえているのにそれを感じ取ることができなかったのです。

飛び降り現場から遺書は見つかりませんでした。



しかし実は遺書はあったのです。

その中には細江愛と桐ヶ谷美月にいじめられていると書かれていました。

その遺書を手にしていたのは莉苑でした。
そして、遺書は莉苑以外誰にも読まれる事なく、朱音が飛び降りた時に、粉々に破り捨てられ空に舞っていったのでした。

その日、朱音は空を飛んだ を読んだ読書感想

この小説は一つの時間軸でも1人称でも進められていません。

冒頭に朱音の自殺が提示され、自殺アンケート回答者六人が一人ずつ主人公となり、最後に自殺した川崎朱音が主人公となる七つの章からなっています。

自殺に至るまでの一人一人の主人公の言動やその周りにいる生徒たちの言動から川崎朱音がどうして自殺に至ったかを解き明かしていく物語です。

その中でこの年代の少女たちの危うさ、人と人との関わりの空しさ、集団の中で個でいることの難しさを妬み・憎悪・嫉妬を絡め、まさに大人になる直前の子どもたちの群像から、様々なことを考えさせてくれます。

莉苑は遺書を亡き物にしてしまいます。

しかし、それは事を荒立てたくないと言う事ではなく、朱音の尊厳を守るためでもあったのだと思います。

この小説が全て終わった後に「その日、朱音は空を飛んだ」と活字で書かれ、その後に手書きで「だから何?」と書かれて全てが終わっています。

これもこの物語が冷酷ととれる一方、冷静な言葉なのではないでしょうか。

もう一度読んで考えてみようと思わせてくれるそんな作品でした。

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