【ネタバレ有り】ライ麦畑でつかまえて The Catcher in the Rye のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:原作:サリンジャー 訳:野崎孝 1985年9月に白水社から出版
ライ麦畑でつかまえて The Catcher in the Ryeの主要登場人物
ホールデン・コールフィールド
本作の主人公。16歳の高校生。成績不振のため学校を退学処分になり、家出を決意する。頭髪の真半分が白髪。
フィービー
ホールデンの幼い妹。無邪気な性格。ホールデンが唯一心を許せる相手。
二人の修道女
ホールデンが家出先で出会った人物。ホールデンが、自分の中に存在する「無垢で無力な者たちへの愛情」を自覚するきっかけとなった。
ライ麦畑でつかまえて The Catcher in the Rye の見どころ!
・思春期の青年の心の揺れ
・美しいきょうだいの愛情
・読み手の共感を呼ぶ、主人公の社会の偽りに対する思い
ライ麦畑でつかまえて The Catcher in the Rye の簡単なあらすじ
16歳のホールデンは通っていた名門高校を、成績不振による放校処分となります。
はじめは、お世話になった先生のもとに行ったり、寮の仲間との時間を楽しもうとしたりしますが、周囲の人間の理不尽さにうんざりして、追い出される前にとっとと寮から出ていきます。
そして、ホールデンは自宅のあるニューヨークに戻ることになります。
しかし、せっかくホールデンを名門学校まで入れてくれた両親にあわせる顔がなく、家には戻らずにホテルを転々とする放浪生活を始めます。
ニューヨークは「インチキで汚い世界」でした。
その汚さと孤独に絶望しながらも、ホールデンはなお、「人が好き」という気持ちを捨てることができず、退廃した生活を送りながらも、心の中では他者を求め続けていました。
ライ麦畑でつかまえて The Catcher in the Rye の起承転結
【起】ライ麦畑でつかまえて The Catcher in the Rye のあらすじ①
アメリカの名門私立高校に通う16歳のホールデン・コールフィールドは、かねてからの成績不振により、学校を放校処分になることが決まります。
在学中、ホールデンが盛んに反発していたもの、それは、名門私立の学校教育にはびこる、友人同士の弱肉強食の雰囲気や先生たちの欺瞞、無神経、虚偽、虚飾…そういった卑俗なものたちでした。
ホールデンは、純粋無垢なものを好む少年です。
周りの同級生のように、他人を自分の都合の良いように利用したり、教師に取り入る努力をすることは「汚い」と考えており、これを徹底的に拒絶して生きてきました。
ホールデンを学校に適応できなくさせたものは、勉強の難しさではなく、「学校」が与える価値観そのものだったのです。
放校を告げられたホールデンは最後にお世話になった先生に別れの挨拶をしに行きますが、そこで先生は、ホールデンのひどい内容の答案用紙を読み上げます。
うんざりしたホールデンは挨拶もそこそこに、寮に戻ります。
寮にはたくさんのルームメイトが住んでいました。
ホールデンはこれも最後の機会だと、ルームメイトと会話し、頼まれた作文の代筆に取り組みます。
作文には、白血病で死んだ弟のアリーの野球ミットについての思い出を書きました。
すると、デートから戻ってきたルームメイトのストラドレイターがその内容に文句をつけます。
ストラドレイターとデートした女の子は、ホールデンが一昨年ごろ親しくしていたということもあり、ホールデンは一気に頭に血が上り、ストラドレイターと殴り合いの喧嘩になります。
そのまま寮も追い出されたホールデンは、いったんは家に帰る決意をしますが、すぐに、両親にあわせる顔がないと思い直し、家には帰らないことを決意します。
そのまま、ホールデンは一人、ニューヨークの街へと繰り出します。
学校ではない場所なら、自分の求める「無垢な世界」に出会えるはずと信じてーーー
【承】ライ麦畑でつかまえて The Catcher in the Rye のあらすじ②
ニューヨークの街をさまようホールデンは、孤独のあまり、さまざまな人と親しくなろうとします。
ホールデンは、嘘やずるいことが嫌いなだけで、本心では人が好きなので、人を求め続けていたのです。
ですが、彼が近づいた人物は、ことごとくホールデンの期待を裏切ります。
ホールデンが生活の拠点に決めたホテルのロビーで出会った人々は、誰もが俗世的でした。
シアトルから旅行に来たミーハーな女の子たちとダンスをしたり、ナイトクラブでピアノの演奏を聴いたりと、はたから見れば充実した生活を送りますが、ホールデンの心は落ち込んだままでした。
ホテルに戻ると、エレベーター係の男がホールデンに娼婦を買わないかと持ち掛けます。
興味を持ったホールデンは5ドルで女を買いました。
さっそくサニーという女の子がホールデンの部屋にやってきますが、どうしてもホールデンの気持ちは晴れませんでした。
ホールデンとサニーは少しの会話を交わし、すぐにサニーは部屋から出ていきました。
すると、エレベーター係の男がホールデンの部屋にやってきて、女は10ドルのはずだったと言いがかりをつけます。
その言い分に反抗したホールデンは男に殴られてしまいます。
ホールデンの社会に対する不信感はつのる一方です。
ホールデンは、ウソを憎み真実を愛する性格であると言っても、ただの正直者ではありませんでした。
大人から子供への不安定な時期にさしかかった感性は、自分でもコントロールできないくらい、矛盾をはらんだものでした。
それは、ヘビースモーカーで、年齢をごまかして酒を飲み、大人のポーズを取るかたわら、雑誌を買いに行くのに「オペラを見に行く途中なんだ」と体裁をつくる幼さもあわせ持つ、という、バランスを欠いた言動として表れます。
他人に対して見栄を張りたい気持ちと、虚偽を憎み真実を愛する気持ち。
二つの気持ちの間でホールデンの心は揺れ続けています。
【転】ライ麦畑でつかまえて The Catcher in the Rye のあらすじ③
放浪中、ホールデンには、自分のことがだんだんと分かってきます。
それは、人間の、特に大人の虚偽や欺瞞、利益追求主義にうんざりしているということ、それからまったくかけはなれた存在、すなわち、放浪先で出会った修道女や、凍った池のアヒル。
幼い妹フィービー、亡くしてしまった弟のアリーといった、無垢で無力な存在に、どうしようもなく愛情を感じるということです。
特に、この旅先で出会った二人の修道女には心を救われました。
ホールデンと彼女たちとの出会いは、ある日の朝食での席でした。
三人は「ロミオとジュリエット」について話し、感銘を受けたホールデンは彼女たちに10ドルを寄付します。
そのあと、偶然道で出会った子どもが「ライ麦畑で誰かが誰かをつかまえたら」という歌を歌っているのを見て、さらに気分が晴れます。
ホールデンは、目先の利益と無関係に生きている者たちの世界に希望を見出し、自分もそこの住人になりたいと考えます。
その反面、ホールデンは目先の利益しか考えない人々の多さに辟易してしまい、生きづらさを感じてしまうのでした。
“そもそも人間不信の原因は何であったか”。
“人間が人間に働く悪事の元凶は何だろうか”。
突き詰めて考えるうち、ホールデンには答えが見えてきました。
それは、「言葉」です。
言葉があるせいで、人は人を利用し、無垢に生きることができないのだ、という結論に、ホールデンは達します。
そうして、ホールデンは、己の憧れる純粋無垢な世界で生きるために、人里を離れ、口がきけない、耳も聞こえない聾唖者のふりをして一生暮らして行こうと決意します。
【結】ライ麦畑でつかまえて The Catcher in the Rye のあらすじ④
ホールデンは、完全に家を捨てて一人で生きて行く決意が固まりました。
ホールデンはこれから聾唖者として、誰とも関わらずに生きて行くつもりです。
しかし、最後に愛する妹のフィービーにだけはお別れを言っておこうと、ホールデンは小学校で彼女を待ち伏せます。
10歳のフィービーは、以前に、ホールデンの厭世的な態度に気づいて、こう尋ねたことがあります。
「好きなもの、ある?」、「何かになりたいって思ったこと、ある?」と。
この問いに対し、ホールデンは、少し悩んで、「ぼくはライ麦畑でつかまえる人になりたい」と答えます。
ライ麦畑で遊びに夢中になっている子供たちが崖から落ちそうになったら、それを捕まえる役の人でありたいのだ、と話しました。
フィービーは、ホールデンが家出して一生戻って来ない決意であることを知り、どうか行かないでほしいと泣いて頼みます。
もし、ホールデンが家を出るなら、フィービーも一緒についていく、と。
妹のその申し出は嬉しくもありましたが、最愛の妹を家から連れ出すなんて、危険な真似はとてもできません。
しかし、家を出るというホールデンの気持ちも揺らぐことはありませんでした。
ホールデンは、フィービーを泣き止ませるために、動物園に連れて行きました。
そのうちに雨が降り出し、雨の中、回転木馬に乗る彼女を見ていたホールデンは、彼女の姿に救いと強い幸福感を見出します。
この幸せをみすみす逃す必要があるのかとホールデンは自問します。
そして、彼は家を出ることを思いとどまるのでした。
ライ麦畑でつかまえて The Catcher in the Rye を読んだ読書感想
物語内の出来事としては、小さなことを描いているにもかかわらず、ホールデンのユニークな語りにぐいぐい引き込まれ、読むものを飽きさせません。
ホールデンはいわゆる”中二病”なのかもしれませんが、単に”大人の世界への憎しみ”を表明して満足する浅い中二ではなくて、心の底では真実を愛しながら、日常生活ではつい嘘をついてしまう自分を、きちんとわかっています。
そんな自分をばかだなあと思いながら、”まあ、ぼくってこういうやつだからさ”と、からっと認める素直さも持っています。
扱っているテーマのわりに、この作品がドロドロしておらず、むしろ全体の空気感が透明で軽やかなのは、まちがいなく、ホールデンのキャラクターが持つ力のおかげです。
原作は、1951年という昔に書かれた作品ですが、周りや環境に流されない、かといって過度に悲劇的にもならない、ホールデンという人物は、とても現代的なキャラクターだと思います。
たくさんの人に読んでほしいです。
コメント
「ライ麦畑でつかまえて」について、続きが読みたかったです。あらすじ③からおかしなことに・・・残念。
大変申し訳ありませんでした。別のものと入れ替わっておりましたので反映させました!