【ネタバレ有り】キケン のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:有川浩 平成25年7月1日に株式会社 新潮社から出版
キケンの主要登場人物
元山高彦(もとやま たかひこ)
成南大の新入生。「キケン」に入部する。自宅が喫茶店を営むため、通称「お店の子」。眼鏡をかけており、自宅からは自転車で通学している。常識的で気配りのできるタイプだが、「キケン」になじんでいる。学祭では中心的存在となり、活躍する。
池谷悟(いけたに さとる)
元山とともに「キケン」に入部した新入生。元山と共に「キケン」一回生の中心的存在となる。自然あふれる田舎から出てきて一人暮らしをしている。おおらかかつ肝の据わった性格だが、意外に情報通。
上野直也(うえの なおや)
二回生で「キケン」の部長。学内トップの危険人物で、火薬と爆弾好き、通称「成南のユナ・ボマー」。構内でオフロードバイクを乗り回す。小3にして爆薬実験で自宅を崩壊させかけたため、自宅庭のプレハブ小屋に住んでいる。勝気で喧嘩っ早いが、仲間想い。
大神宏明(おおがみ ひろあき)
二回生で「キケン」の副部長。強面で通称「大魔神」。上野を制することができる貴重な人物。
キケン の簡単なあらすじ
成南電気工科大学には『機械制御研究部』という部活がある。略称「機研(きけん)」。部長上野の元で黄金期を迎えた部は「キケン(危険)」と呼ばれていた。
新入生の元山と池谷は上野と副部長大神の勧誘に入部を決めた。過剰な新入部員をふるい落とすため、元山と池谷を巻き込んだ上野は画策する。
上野はキャンプファイヤーという名目の爆破実験を行った。毎度のことらしく、上野はなじみの曽我部教授から逃げ回る。上級生二人の洗礼に戦々恐々としつつ残った新入部員は9名。ある日、大神が女子大生からラブレターを貰う。上野を筆頭に、茶化しつつ応援する「キケン」部員。しかし考え方の違いから破局する。部員達は恐怖の的だった大神を慰め、「キケン」になじむのだった。
学祭が近づく。「キケン」は例年通りラーメン店を出すが、「PC研」にライバル視され妨害される。元手を三倍に増やせという上野の命令に、自宅が喫茶店の元山を中心とし「奇跡の味」が研究される。学祭当日、上野と大神が事務局、一年生が出店担当として、完成したラーメンを売りさばく。出店では元山の指揮下、不眠不休で仕込みと調理、接客が行われた。
無事目標金額を上回ったものの、途中、元山は「PC研」に拉致される。上野は元山を救出するが、オフロードバイクで相手を追いたて、さらに学内で恐れられることになった。曽我部教授の脅しで、「キケン」は町おこしのために開催されるロボット相撲大会に出場することになる。「キケン」の総力をつぎ込んだロボットはファンを増やしつつ勝ち進むが決勝で苦戦。
上野の指示で自爆し引き分けとなる。数年後元山は妻に請われて母校の学祭を訪れる。青春時代を思い出し切なくなる元山は、現役部員から卒業生が集まっていることを知らさせれる。訪れた教室の黒板には、卒業した仲間達の近況や、懇親会の予定が書き込まれていた。
キケン の起承転結
【起】キケン のあらすじ①
成南電気工科大には略称「キケン」という部活がある。
新入生の元山は、同級生の池谷とともに「キケン」に入部。
優秀なOBのおかげで充実した部室に惹かれたことと、上級生二人の勧誘が理由だった。
「キケン」には「危険」の意味があるという。
【承】キケン のあらすじ②
「キケン」の上級生は実質、2年生の二人だけ。
他の1年生に先駆けて入部した元山と池谷は、部長上野の新入生獲得・精選作戦に動員される。
上野は「成南のユナ・ボマー」と呼ばれる火薬狂だった。
小学生時分に既に自宅で爆発物を作成していた上野は作戦のため元山達に火薬の威力を見せつける。
新入生向けの部活説明会の日、「キケン」はキャンプファイアー点火実験と称した爆破実験を行った。
怒った曽我部教授から上野は逃げ回るが、それはいつものことだった。
爆破実験を経て残った新入部員は元山達を含めて9名。
迫力のある副部長「大魔神」大神の逆鱗に触れないように気をつけている。
ある日大神が女子大生からラブレターをもらう。
女子大の学祭に行ったことがきっかけだ。
冷やかす上野とともに大神の恋を応援する「キケン」の面々だが、恋愛に対するスタンスの違いから破局する。
自棄酒に付き合いながら1年生は、危険な上野と強面大神と仲良くなっていくのだった。
【転】キケン のあらすじ③
学祭が迫る中、「キケン」は例年通りラーメン店を出すことになった。
学祭終了間際にのみ辿りつける「奇跡の味」に固定客がいる。
上野の命令で、1年生は元手30万円を3倍に増やさなければならない。
自宅が喫茶店である元山はラーメンスープの研究を始めた。
苦戦しながらも完成したラーメンは、上野のお墨付きを得る。
前倒し気味で営業を始めた「ラーメンキケン」は、好評を得る。
「キケン」を目の仇に妨害するPC研も敵ではなく、元山指揮下で目標額を達成する。
しかし、元山がPC研に拉致されてしまう。
上野は愛車のバイクでPC研を追い回し、元山を救うのだった。
曽我部教授から上野へ、町おこしのための「ロボット相撲大会」に出るよう指示が下りる。
これまでの行動を盾に取られ、「キケン」の華やかな実績とは合わない小さな大会に出場する。
ロボットの操縦は池谷、ハード面もソフト面も1年生が担当する。
当日、他のチームの偵察に出た上野と大神。
決勝まで順調に進んだ「キケン」の相手は、予算のふんだんな壮年チームだ。
予想通り苦戦する「キケン」1年生に上野が出した指示は自爆。
相手も倒れ、引き分けで決着した。
上野は結局、曽我部教授に追いかけられる。
【結】キケン のあらすじ④
元山は思い出話を聞かされた妻は、成南の学祭に行ってみたいとねだる。
青春時代との距離を感じて渋るが、結局二人は学祭に訪れていた。
「キケン」のラーメン店は行列のできる店になっていた。
妻が現役部員に声をかけると、OBが集まる教室があると教えてくれた。
訪れた教室は無人だったが、黒板が連絡版として使われていた。
結婚して落ち着いた上野を中心に、懐かしい面々のメッセージや会合予定日時が書かれていた。
そこには自分の話題もあり、元山は、あの頃とは違う自分達に戸惑うような懐かしいような想いで、会合への参加を決めるのだった。
キケン を読んだ読書感想
元山が妻に請われるまま青春の思い出を語るという形で、物語は進みます。
破天荒な過去の出来事を懐かしむ元山からは、郷愁のようなものが感じられ、二度と戻らない日々の大切さが伝わってきました。
青春時代を舞台としていることや、挿絵が漫画形式で描かれていることから、ライトノベルのような取り付きやすさがあります。
身近にいたら困るけれどフィクションで見る分には愛される、個性の強いキャラクターが多い点も、読みやすいポイントでした。
青春物というと恋愛やスポ根のイメージが強いものですが、「キケン」は理系の地味な大学生達が工具をいじりながら、危険なことの線引きを覚えていく文化系の物語です。
本来なら派手なところのないありふれた日常が、見事に青春を表現しています。
「爽やか」ではないのに熱い展開に、自分にとっての青春を考えさせられました。
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