【ネタバレ有り】図書館戦争をネタバレ解説!シリーズ全6作のあらすじ&結末までのネタバレを感想付きで徹底解説!
著者:有川浩 H23.4.25〜に株式会社 角川書店から出版
図書館戦争シリーズ1「図書館戦争」のネタバレ&あらすじ
図書館戦争 の主要登場人物
笠原 郁(かさはら いく)
図書隊の新入隊員で一等図書士。女子隊員初の図書特殊部隊(ライブラリー・タスクフォース)に配属される。図書特殊部隊堂上班。直情的な性格で、細身の長身。座学はからきしだが運動神経が良く体力もある。足の速さは群を抜く。高校生の時に地元で図書隊員に助けられ、その隊員「王子様」に憧れて図書隊を志した。人の顔を覚えるのがとても苦手で、「王子様」の顔も覚えていない。堂上とは何かにつけてぶつかり合う。
柴崎 麻子(しばさき あさこ)
郁の同期の図書館員で一等図書士。女子寮では郁と同室。小柄な美人で頭も良いが、実は猫かぶりの毒舌家。恐ろしいほどの情報通。愚直な郁をからかいつつも大切な友人だと思っている。
堂上 篤(どうじょう あつし)
図書特殊部隊所属の二等図書正。郁達新入隊員の指導教官であり、その後郁の直属の上司となる。熱血漢かつ真面目な性格で、理不尽なほど郁を叱咤するが、実は郁の探す「王子様」。郁が危険な目に遭わないよう厳しく指導している。身長が低いことを気にしているが、知識も身体能力も高い。同期の小牧と郁、手塚を部下に堂上班を新たに編成することとなった。
手塚 光(てづか ひかる)
郁の同期で同僚の一等図書士。図書館界のエリート一家の次男で、優秀な努力家。長身で女子の人気も高い。郁と一緒に図書特殊部隊に抜擢されるが、不勉強な郁の態度が気に食わず、何かにつけて対抗意識を燃やす。班長として堂上を尊敬している。郁と和解するきっかけを探り、突然交際を申し出る朴念仁。
玄田 竜助(げんだ りゅうすけ)
図書特殊部隊の隊長で三等図書監。無茶と無謀を平気で通す型破りな性格。堂上、小牧とともに郁達の指導教官を務めた。郁の身体能力を買い図書特殊部隊に強く推した張本人だが、「王子様」の事情を知っているため、おもしろ半分で堂上の元につけた感も否めない。
図書館戦争 の簡単なあらすじ
「メディア良化法」によってメディアが検閲される日本。
対抗できるのは「図書館の自由法」を持つ図書隊だけ。良化機関と図書隊は度々武力衝突を起こしていた。
図書隊の新入隊員・笠原郁は、直情的な行動で次々と問題を起こす。郁は高校生の頃に良化隊から助けてくれた図書隊の「王子様」に憧れ、入隊した。指導教官は手を焼きつつも、彼女の意気と身体能力を買い、図書特殊部隊員に推薦する。教官でもあった特殊部隊隊長玄田のもと、女子初の特殊部隊員となった郁は、同期の手塚、教官小牧とともに、鬼教官堂上の指揮する堂上班に配属された。
堂上から日々雷を落とされ、堂上を尊敬する優等生手塚に敵視されながら、郁は特殊部隊の仕事を覚えていく。良化隊襲撃時の防衛戦で郁を見直した手塚は、郁に交際を提案する。
戸惑う郁だが、図書隊を取り巻く世間の逆風の中、自分には憧れる姿があると、交際を断る。集会を警備していた郁は、花火を打ち込んだ中学生二人を確保した。中学生にフォーラムを主催させることになり、郁は彼らに肩入れしていく。
フォーラム当日、大人の不当な発言に対して反射的に少年達を擁護した郁を、堂上は高く評価した。私設図書館に特殊部隊総出動という異例の作戦が行われる。貴重な資料を巡り、良化隊と図書隊の激しい戦闘が繰り広げられる。しかし、郁は一人だけ外されていた。
いつの間にか、堂上に認められたいという気持ちが膨らんでいた郁は落ち込み気持ちの切り替えに苦労する。関東図書基地司令稲嶺に同行していた郁は、良化法賛同団体によって共に拉致監禁されてしまった。作戦を終えて帰還した特殊部隊が二人の解放のため尽力する。
郁の家庭の事情を慮って戦闘から彼女を外した堂上は、実は郁の探す「王子様」だった。入隊試験の面接時から気付いていた堂上は、この世界で郁が無事に生きていけるよう、きつく接していたのだった。郁を心底心配していた堂上と救出された郁の間には確かな信頼関係が芽生えていた。郁は堂上を前に、目標を新たにするのだった。
【起】図書館戦争 のあらすじ①
大学を卒業し、笠原郁は図書隊に入隊した。
「メディア良化法」で厳しく検閲される世の中で、図書隊は「図書館の自由法」を根拠に表現の自由を守るため戦っている。
郁は高3の時に書店で良化機関と遭遇し、窮していたところを図書隊員に救われていた。
その隊員を「王子様」と慕い入隊、恵まれた身体能力と長身を活かし防衛員を希望している。
教育期間中の郁は鬼教官・堂上にしごかれ負けん気強く反発する。
しかし「王子様」を目指し直情的に突っ走る郁は、ことあるごとに堂上に庇われる形となる。
教育期間終了後、郁は防衛員の中のエリート集団である図書特殊部隊(ライブラリー・タスクフォース)に抜擢された。
女性初の特殊部隊員として、教官の堂上・小牧・玄田が推薦してくれていた。
玄田隊長の下、堂上を班長として郁は小牧や同期の手塚とともに堂上班を組むことになる。
【承】図書館戦争 のあらすじ②
防衛員と異なり、図書特殊部隊は戦闘に特化すると同時に図書館員としての業務もこなせなくてはならない。
射撃に苦戦しつつも戦闘訓練を次々こなす郁だが、図書館業務はからきしだった。
同期の手塚は、努力家の優等生で、郁を目の仇にしてくる。
手塚は堂上を尊敬しており、盾突く郁の愚かさと、そんな郁が気に入られているように見える現状が許せなかった。
堂上は手塚の優秀さと郁の未熟さを認めながらも、お互いに学ぶべきものがあると指導する。
良化法に阿る形で館長代理が数冊の図書を隠蔽しているのではないかという疑惑が持ち上がった。
折りしも、良化隊の襲撃が起こる。
郁と寮の同室で同期、優秀な図書館員の柴崎は良化隊の目的がそれらの本であると気付く。
柴崎の助言を取り入れた郁は持ち場を離れ良化隊員を追跡。
同行した手塚と連携し、無茶をして堂上を心配させつつも、無事に図書を守った。
郁を見直した手塚は、お互いを知るため交際することを郁に提案する。
少年犯罪者の読書傾向が取りざたされ、図書隊に逆風が吹く。
「王子様」のように正義を貫きたい郁は、図書隊のあり方が綺麗なだけではないと知り複雑な心境になる。
しかも時折堂上の行いが「王子様」と重なってしまう。
「王子様」のようになりたい郁は手塚との交際を断り、まずは一緒に「堂上越え」を目指すのだった。
【転】図書館戦争 のあらすじ③
集会を警備していた郁は花火を打ち込んだ男子中学生二人を確保する。
玄田の指示の下、堂上と郁は少年達がフォーラムを主催する手伝いをすることになる。
玄田の知り合いの女性記者の取材も入れ、良識を振りかざす大人と自由な読書を求める中学生達の意見がぶつかり合う。
フォーラムの警備をしていた郁は中学生の側に立って発言し、流れを優位に変えた。
根は郁そっくりの熱い性格だと評される堂上も郁の活躍を認める。
図書隊結成のきっかけともなった「日野の悪夢」を含む良化法に関するあらゆる情報が収蔵された私設図書館が閉館することになった。
図書特殊部隊総動員で蔵書を移管することが決まり、激しい戦闘が予想される。
一人だけ作戦から外された郁は、戦力と認められなかったことに落ち込む。
郁が負傷することを危惧した堂上の杞憂のせいだった。
自分の持ち場で頑張ることを決意した郁は、車椅子に乗る関東図書隊司令・稲嶺の外出に警護として同行する。
良化法賛同団体の手により、稲嶺と郁が拉致される。
警察は信用できず、激しい戦闘を終え帰還した特殊部隊が救出にあたる。
堂上は後悔するとともに郁のことを心底心配していた。
実は、堂上こそが郁の「王子様」だった。
顔覚えの悪い郁とは違い一目で気付いていた堂上は、郁を危険から遠ざけたくて厳しく接していたのだ。
【結】図書館戦争 のあらすじ④
仲間を信じて待っていた郁は、窓から合図する手だけで堂上だとわかった。
「王子様」を否定することばかり言う彼はそのくせ正義の味方のようなのだ。
救出された郁は堂上との会話で、隊内に自分の存在価値を確認する。
そして堂上に向かって「超える」と宣言した。
郁は寮の自室で情報通の柴崎から拉致事件の顛末を聞く。
過保護な両親に配属を言えないまま悩み続けていた郁だが、ついに「やりがいのある仕事だ」「上官も怖くて性格の悪い人だが尊敬できる」と手紙に記して投函した。
図書館戦争 を読んだ読書感想
映画化もされた大人気シリーズの一作目。
文庫版では巻末に、アニメ化された際に書き下ろされた短編が一編ついています。
短編「ジュエル・ボックス」で描かれているのは一作目の本編を読み終わった後だからこそ気持ちがほっこりする、物語の時系列に違和感のない、日常の一コマです。
主軸となる郁と堂上には、部下と上官、高身長男性と低身長男性、夢見がち乙女とリアリスト、無謀と慎重……と相反する要素が多く見受けられます。
けれど、読み進むにつれ、二人の根っこの部分が似ているという事実が違和感なく理解できます。
二人の周りを固めるキャラクターも非常に個性的で爽快です。
キャラクターの強烈さが、物語のテンポを軽快にし、速い展開で進んでいく印象でした。
実際に図書館に掲示されている「図書館の自由に関する宣言」というものに着想を得て執筆されたというこのシリーズは、表現の自由の保障に対する問題提起であり、恋愛物語であり、バトル小説です。
図書隊は、通常の図書館業務を行う図書館員と防衛を担う戦闘員に分かれ、階級制を重用する組織として描かれています。
そのため、図書の分類などと同様に図書特殊部隊の戦闘も丁寧に描写されています。
情報量の多い作品ですが、構成の妙でスピーディーな総合エンターテイメント小説になっており、非常に読みやすく感じました。
図書館戦争 の実写化作品
映画『図書館戦争 ブック・オブ・メモリーズ』予告
映画「図書館戦争 THE LAST MISSION」予告動画
図書館戦争シリーズ2「図書館内乱」のネタバレ&あらすじ
図書館内乱 の主要登場人物
笠原 郁(かさはら いく)
図書特殊部隊堂上班所属の一等図書士。女性初の特殊部隊員。高3の秋に図書隊員の「王子様」に助けられ、彼に憧れて入隊した。純情乙女な思考回路を持ち、長身で運動神経抜群の猪突猛進型熱血女子。過保護な親に内緒で戦闘職に就いている。上官である堂上に噛みつくことが多かったが、尊敬するようになり信頼している。「王子様」に憧れつつ、まずは堂上を超えると宣言する。
堂上 篤(どうじょう あつし)
図書特殊部隊堂上班班長で二等図書正。実は郁の探す「王子様」だが、その事件での行動が規則違反にあたったため、それ以降、沈着冷静であるよう努力している。根は郁と似た熱血漢。「王子様」であることは周囲への緘口令でもって秘密にしている。高校生ながら意志を通そうとした郁を特別に感じている。責任感が過剰で、部下である郁に対し過保護になることもある。
小牧 幹久(こまき みきひさ)
図書特殊部隊堂上班副班長の二等図書正で堂上の同期。笑い上戸。人当たりは良いが正論を信条としており、融通はきかない。なかなか自分の心のうちを見せない冷静な性格。近所に住む中澤毬江を妹のように大切にする。中途失聴した毬江を案じ、慕われる自分はいつでも正しくあるべきだと努めている。
柴崎 麻子(しばさき あさこ)
郁の同期で寮の同室。非戦闘員の図書館員で一等図書士。有能な情報通のため、「未来企画」からマークされる。際立った美人のため人間関係に苦労して育ち、郁を貴重な友人として大切に思っている。
手塚 慧(てづか さとし)
郁の同期の同僚で堂上班に所属する手塚光の兄。図書隊員の一等図書正だが研究会「未来企画」を立ち上げ、敵である良化隊の上位組織・法務省との連携強化を狙っている。自分の信念に従って家を出たため光から恨まれ、疎遠になっていた。弟を自分の味方に引き入れようと画策し、郁に近づく。頭が切れ、我が道を行く性格。
図書館内乱 の簡単なあらすじ
「メディア良化法」によって検閲される世の中。図書特殊部隊に入隊し堂上班に所属する郁は親に所属を言えないでいた。
戦闘職種であることを知られれば、過保護な母に連れ戻されてしまうからだ。上官や同僚と馴染んだ頃、その両親が郁の職場に訪れる。
郁は尊敬する上官堂上に助けを求め、なんとか両親の職場見学を乗り切った。郁の父は帰り際、堂上に娘を託して行く。郁は勤務する図書館で補聴器をつけた美少女と出会う。上官小牧の近所に住む毬江という高校生で、中途失聴者だ。
小牧に恋する毬江に、小牧はある本を勧める。しかしその本がきっかけで彼は良化委員会に連行されてしまう。郁の同僚手塚は、小牧の居場所を探るため絶縁していた兄慧に連絡する。慧は図書隊で研究会を主催し、法務省に独自のパイプを持っていた。
特殊部隊は毬江を連れて小牧の救出に向かう。毬江を守るため自身を省みない小牧の姿に郁は自然と堂上を重ね、不安になるのだった。郁の友人柴崎は図書館利用者の朝比奈に言い寄られていた。折りしも図書館長が代わる。手塚の同室砂川を中心に焚書騒動が起こる。砂川は郁を共犯者に仕立て上げ、郁は査問会に呼び出される。犯人と決め付ける査問委員と針の筵と化した日常で、郁が頼れるのは仲間だけ。
堂上は郁を周囲から庇ってくれた。郁は自分を信じてくれる彼に恥じないよう、毅然と臨む。手塚は焚書騒動の裏で慧が糸をひいていると勘付く。郁のもとには慧から呼び出しの電話が入っていた。慧と直接話し合った郁は、堂上の部下であることを誇りに、慧の根本的な考えを否定する。
慧は弟を手に入れるため画策していた。迎えに来た堂上と席を立った郁は、その後唐突に査問を打ち切られる。後日慧から郁の元へ封書が届けられた。同封された便箋には、堂上こそが郁に図書隊入隊のきっかけを作った憧れの「王子様」だと記されていた。
混乱し発熱しながら、郁は自分が堂上をどう思っているのか考える。一方柴崎は朝比奈と決別していた。彼もまた、手塚の周辺から絡めとろうとする「未来企画」の一員だった。
【起】図書館内乱 のあらすじ①
「メディア良化法」により検閲される日本。
郁は自分を助けてくれた「王子様」に近づくべく、「図書館の自由法」を盾に戦う図書隊に入隊し、特殊部隊に配属された。
図書館業務と戦闘どちらもこなす特殊部隊員であることを家族に告げられずにいる郁の元を、両親が訪れる。
保守的で過保護な母親は郁の図書隊入隊すら反対している。
郁は直属の上官堂上に助けを求め、何とか両親の滞在と職場訪問を乗り切った。
郁の父は娘の職種に気付いている様子だが、何も言わず、堂上に娘への想いを託して帰った。
【承】図書館内乱 図書館戦争シリーズ② のあらすじ②
郁は図書館で補聴器をつけた美少女と知り合う。
毬江という、上官小牧の知り合いだった。
小牧に恋して図書館に通う彼女に、小牧は『レインツリーの国』という本を勧める。
しかし小牧は後日、その本が聴覚障害者を扱ったものであったため、人権への配慮に欠けるとして良化委員会に連行されてしまう。
毬江に知らせたくない小牧とその願いを守る堂上をよそに、毬江の恋心を慮った郁は友人柴崎と共に知らせに走る。
一方郁の同僚の手塚は、小牧の所在を探るため絶縁していた兄慧に連絡をとる。
慧は図書隊員でありながら「未来企画」という研究会を主催し、良化委員会の上位組織である法務省と独自のパイプを築いていた。
手塚の得た情報を元に、毬江を伴った特殊部隊は小牧救出に向かう。
毬江を守るために信念を曲げず屈しなかった小牧の姿が、ふいに堂上と重なって見え、郁は不安に駆られるのだった。
柴崎は図書館利用者の朝比奈に言い寄られていた。
くっつけようとする友人にうまく対処できず困ったところを郁に救われる。
折りしも館長が代わり、新館長は独自のバランス論を唱えていた。
図書館を巡る意見交換のため、柴崎は頻繁に朝比奈と会うことになる。
郁達の同期の砂川が、館長の許可を得て図書館のサイトに辛辣な書評を載せるようになった。
砂川は手塚と寮の同室で、慧に心酔している。
【転】図書館内乱 図書館戦争シリーズ② のあらすじ③
サイトが頓挫した砂川は、次に蔵書隠蔽の焚書騒動を起こす。
そして彼は郁が共犯だと自白するのだった。
身に覚えのない郁は、自分を信じてくれる堂上から勇気を得て、厳しい査問会に臨む。
被疑者として扱われる郁はあっという間に孤立する。
味方は図書特殊部隊の仲間と柴崎だけ。
それでも、郁は堂上の部下であることを誇りに日々を乗り切る。
手塚は、焚書騒動と付随する郁の冤罪が慧の仕業ではないかと睨む。
郁の元に慧から呼び出しの電話が入る。
「未来企画」への勧誘とのことで、郁はレストランで会う約束をする。
外出した郁の書置きを見つけた柴崎は特殊部隊長と堂上班を招集する。
「未来企画」が仕掛けて来たことは確か。
しかし、会議では郁の帰還を待つと決まった。
郁は慧の話術に嵌るが、慧の理想が受け入れられず勧誘を蹴る。
郁の心の中には堂上の影があった。
慧は正直に、弟を手に入れるために砂川や郁に魔手を伸ばしていたことを認める。
窮している郁の元に堂上が駆けつけ、有無を言わさず慧の前から連れ帰った。
その後、査問は数回後に突如打ち切られる。
【結】図書館内乱 のあらすじ④
後日、郁の元に慧からの封書が届く。
堂上がレストランで支払った代金の返却だった。
添えられた慧の手紙には、郁の憧れる「王子様」が郁の上官であると書かれていた。
慧は嫌がらせに「王子様」の正体が堂上であるとばらしたのだ。
柴崎は朝比奈との交友を断つと決めた。
朝比奈は法務省官僚であり、「未来企画」の一員だった。
大切な友人である郁を罠に嵌めた「未来企画」は柴崎にとっても許しがたく、手塚と手を結んで内情を探っていた。
衝撃の事実を知った郁は熱を出して寝込んでしまう。
本人に向かって「王子様」を語ってしまった現実にいたたまれなくなるが、これを機に、自分が堂上をどう思っているのか考え始めるのだった。
図書館内乱 を読んだ読書感想
図書館戦争シリーズの二巻であるこの巻は、シリーズ全体の「承」にあたります。
主要な登場人物がこの巻までで出揃い、各々のバックボーンや重大な事実が明かされて行きます。
戦闘シーンは少ないものの、図書隊という封建的な組織の実情が詳しく描かれており、登場人物の置かれた立ち位置が明確にされます。
また、恋愛パートはこの巻で大きな転機を迎えました。
難しい内容も、恋愛を軸にサクサクと読み進められます。
文庫版巻末にはシリーズがアニメ化された際に書き下ろされた短編が一編ついています。
短編「ロマンシング・エイジ」は、この巻で重要な立ち位置にある小牧と毬江のラブストーリーです。
小牧が良化委員会から開放された直後が舞台であり、二巻での出来事の後日談にあたります。
作中に登場し、二人がしっかりと向き合うきっかけとなった小説『レインツリーの国』は聴覚障害者の恋を描く作品で、実際に刊行されています。
しかし作者によると、図書館戦争がアニメ化された際、二巻の中の小牧と毬江の話は意図的にカットされてしまったそうです。
障害を扱う難しさは確かにあるのでしょうが、作中の良化法ほどではなくとも実際に製作側の自主的な検閲が為されているという事実が衝撃的です。
ストーリーの軽快さに楽しんで読書できるシリーズですが、この巻では楽しみつつも、フィクションを現実に引きつけて考える必要性に気付かされました。
図書館戦争シリーズ3「図書館危機」のネタバレ&あらすじ
図書館危機 の主要登場人物
笠原 郁(かさはら いく)
関東図書隊図書特殊部隊堂上班所属。女性初の特殊隊員。入隊のきっかけとなった憧れの「王子様」が実は尊敬する堂上だったと暴露され、混乱する。直情的な性格で、身体能力が高く行動力がある。長身細身のモデル体型だが、女の子らしくすることに抵抗がある。
堂上 篤(どうじょう あつし)
関東図書隊図書特殊部隊堂上班班長。直情的な熱血漢だが、努力して冷静さを身に着けた。郁が「王子様」の正体を知っているとは気付いていない。高校生の郁の印象が抜けず、つい過保護になってしまう。身長が低いをこと気にしている。
稲嶺 和市(いなみね かずいち)
関東図書基地司令で、図書隊を創設した人物。実質図書隊のトップ。良化法賛同団体の襲撃により妻を亡くした。自身も大怪我を負い、車椅子生活を余儀なくされている。温和な老紳士だが、激しいものを秘めている。
玄田 竜介(げんだ りゅうすけ)
関東図書隊図書特殊部隊隊長。稲嶺の腹心。無茶を押し通す豪胆な性格で策士。良化法に対する立場の違いを感じ出版社勤務の恋人折口との同棲を解消したが、今でも信頼し合い、精神的に繋がっている。
図書館危機 の簡単なあらすじ
「メディア良化法」で武力行使の検閲が行われる中、唯一対抗できる組織図書隊。郁は憧れの「王子様」の正体が堂上だったと知る。
尊敬する堂上が「王子様」だったことに混乱するが、痴漢事件の捜査を通し、堂上が自分を嫌っていないこと、信頼されていることなどを感じる。郁は「王子様」への憧れから卒業し、堂上と向き合うことを決意した。
新入隊員にとって初めての昇進試験が迫る。図書特殊部隊からは堂上班の郁と手塚が受験する。友人柴崎と共に無事合格。郁は筆記の指導をしてくれた堂上にお礼として階級章に描かれたかみつれ(カモミール)のオイルを贈る。
特殊部隊長玄田のパートナー折口は、編集者として人気若手俳優の特集本の作成に携わる。しかし「床屋」という違反語を巡って俳優側と出版社側が対立する。玄田の策で折口は違反語を巡る裁判を提案。
床屋の組合も巻き込み進んだ訴訟で、見事望む結果を手に入れる。郁は民間人が検閲に対し真っ向対決したことに感動する。特殊部隊の半数が茨城県展の警護に出張することになった。
展示される「自由」は良化隊への痛烈な風刺であり、水戸本部だけでは検閲に抵抗できない。水戸本部では須賀原館長の下、武器使用の制限がなされ防衛員が差別対象となっていた。玄田は独自ルールの撤廃、特殊部隊全投入による武力強化を行う。
嫌がらせは郁にも及び、過保護な母親が基地に怒鳴り込む騒動が引き起こされる。郁は堂上に支えられながら乗り越えた。県展初日開館前、激しい検閲抗争が起こる。郁は堂上について前線を駆け巡った。
戦闘終了後、良化隊賛同団体が銃器を持って「自由」を襲撃。玄田が重傷を負う。一方資料を燃やそうとする須賀原を止めようとした横田準司令も大火傷を負った。横田、玄田は一命を取り留める。不完全ながら水戸基地の機能を取り戻し、特殊部隊は帰還する。
郁は今回の件で堂上への恋心を自覚していた。水戸基地の機能不全の責任を取って、関東図書隊トップの稲嶺が辞職する。図書隊創設者である稲嶺は後進に想いを託して行った。
【起】図書館危機 のあらすじ①
「メディア良化法」により厳しく検閲される社会。
図書隊は唯一対抗できる組織である。
図書隊を志すきっかけを作ってくれた「王子様」が上官堂上だったと知った郁は激しく混乱していた。
図書館で痴漢事件が起こった。
被害者は聴覚障害を持つ毬江。
郁の上官小牧の恋人だ。
郁は、普段とは異なる女らしい格好で囮捜査を行い見事犯人を捕まえる。
その中で、郁は堂上に嫌われてはいないこと、信頼されていることを実感し安堵する。
郁は事情を知った小牧の言葉に従い、「王子様」ではなく堂上自身と向き合おうと決意する。
そして堂上に、「王子様」からの卒業を宣言した。
【承】図書館危機 のあらすじ②
新入隊員にとって初めての昇任試験が近づく。
いずれ、かみつれの階級章を取れるよう、郁は一階級昇進を目指す。
堂上によればかみつれの花言葉は「苦難の中の力。」
図書隊設立の立役者である基地司令稲嶺の意向が反映されていた。
郁、同僚の手塚、友人柴崎は、無事に昇級する。
筆記の苦手な郁のためつききりで教えてくれた堂上に、郁はお礼のかみつれ(カモミール)オイルを渡す。
堂上からかみつれのハーブティーが飲める店への同行を頼まれ、郁は浮かれるのだった。
図書特殊部隊隊長玄田のパートナーである折口は、出版社に勤めている。
折口は社の一大プロジェクト、人気若手俳優香坂の特集本のインタビューを担当した。
しかし、香坂のこだわる「床屋」という単語が良化委員会の定める違反語であるため、作成が難航する。
香坂側と出版社側との会議が膠着する中、折口は玄田から授かった秘策を実行する。
香坂サイドは出版社を「契約を破り表現を曲げた」と提訴した。
社は「良化法に順ずる」と受け、双方この本に限り「床屋」の使用を認めるという裁判所判断が降りることを目指す。
横槍が入り訴訟は難航するが、香坂に触発され床屋の組合が良化委員会を提訴し風向きが変わる。
手塚の兄で「未来企画」会長慧から、「図書隊は意味がない」「みんな検閲に慣れてやり過ごす」と言われ傷ついていた郁は、彼らが声を上げたことの価値の大きさに感じ入る。
訴訟は玄田の思惑通りに決着した。
折口の背後に玄田との絆を見た香坂は特殊部隊を非公式に訪問する。
【転】図書館危機 のあらすじ③
茨城県立図書館と隣接する近代美術館の共同イベントである県展が行われる。
展示される「自由」は良化隊員の制服レプリカを切り裂いたコラージュ作品だった。
良化法賛同団体の猛抗議を受け図書隊での警備を行うが、水戸本部は実戦経験に乏しく、玄田の指揮のもと特殊部隊半数が出撃すると決定した。
堂上班も茨城県展の警護にあたると知り、班員である郁は激しく動揺する。
近くに郁の実家があり、過保護な親に戦闘職種についている事実を知られてしまう可能性があるからだ。
しかし堂上からの信頼に応えるため、大規模攻防戦への参戦を決意する。
図書隊水戸本部では行政出向してきた須賀原館長の意向で「無抵抗の会」という市民団体が幅を効かせ、隊員間でも防衛員が迫害される状況となっていた。
玄田は稲嶺に連絡を取り、防衛員の武器携帯を制限する水戸独自のルールを撤回させる。
そして急場を凌ぐため特殊部隊を全投入とし、水戸本部の防衛員の特訓を開始する。
郁は女子寮で防衛員と行動し、業務部からの嫌がらせを受ける。
密告で郁の仕事を知った母が怒鳴り込んでくる事態となる。
堂上の後押しを受け、郁は母親と真っ向対決。
郁は堂上を心の支えとして業務部に啖呵を切る。
県展初日の早朝、良化部隊の襲撃が開始された。
激しい戦闘の中、郁は堂上の伝令役として前線を駆け回る。
堂上は動転しながらも敵を撃退した郁を抱きしめた。
開館時刻となり、良化隊は怪我人を引きずって撤退して行く。
開館後、「自由」を狙い良化法賛同団体の構成員が銃器を手に襲来する。
襲撃者は確保されるが、「自由」を守った玄田が重傷を負った。
須賀原は県展こそが自分の経歴を傷つけると考え保管していたパンフレットを燃やそうとする。
水戸基地準司令横田は須賀原を止めようとして大火傷を負ってしまった。
須賀原は拘束され、横田は玄田共々病院に搬送される。
【結】図書館危機 のあらすじ④
横田は一命を取り留めた。
数日遅れて玄田も意識を取り戻す。
水戸本部はわだかまりを残しつつ、平常に戻った。
水戸から帰還した郁は、柴崎相手に今回自覚した堂上への恋心を告白する。
「無抵抗の会」は良化法賛同団体だった。
水戸本部の思想の偏向の責任を取って稲嶺は退任を決意する。
稲嶺直属の極秘組織である情報部に属する柴崎や、郁達特殊部隊をはじめとする多くの隊員に慰留され、見送られながら、稲嶺は図書隊を勇退した。
図書館危機 図書館戦争シリーズ③ を読んだ読書感想
一巻から少しずつ育って来た郁の恋がようやく形になります。
郁と堂上の恋だけでなく、小牧と毬江、玄田と折口、稲嶺と亡き妻、手塚と柴崎それぞれの愛の形が描かれており、シリーズの中でも恋愛パートが大いに盛り上がっている印象でした。
茨城県展関連がこの巻の半分ほどを占めているため、戦闘シーンも迫力があります。
稲嶺というカリスマの勇退で締めくくられ更なる混迷が予想できるため、恋愛の観点だけでなく図書隊という武装組織の物語としても、次巻への期待が高まりました。
文庫版巻末には1・2巻同様短編がついています。
「ドッグ・ラン」という物語で、郁と堂上の絆が感じられます。
キャンキャン吠えながらも懐いている郁は、足の速さがなくとも確かに犬のように感じられ、微笑ましく思えました。
この巻で作者は禁止語を強く意識しています。
香坂の話は、作者の手元にあった放送禁止用語一覧で実際に「床屋」が軽度の指定語であったことがきっかけで書かれたそうです。
「盲撃ち」など自主規制されがちな単語が作中に登場しているのも印象的で、近い将来表現の自由は自主規制という名の下に検閲されていくのではないかと不安になりました。
また、信念を持つことは大切だけれど、信念をふりかざし過ぎれば差別のきっかけになるのかもしれないと気付かされました。
図書館戦争シリーズ4「図書館革命」のネタバレ&あらすじ
図書館革命 主要登場人物
笠原 郁(かさはら いく)
関東図書隊図書特殊部隊堂上班所属の女性隊員。憧れの「王子様」の正体が堂上であると知り、恋心に変わった。細身の長身で身体能力に優れている。直情的な性格。
堂上 篤(どうじょう あつし)
関東図書隊図書特殊部隊堂上班班長。郁が「王子様」の正体を知っているとは気付いていない。冷静であろうと努める熱血漢で責任感が強い。身長の低さを気にしている。
当麻 蔵人(とうま くらと)
作家。著書がテロリストの手本になったと考えられ、良化委員会の魔手が伸びたため図書特殊部隊に匿われる。自由な創作のため、亡命を希望している。
手塚 慧(てづか さとし)
図書隊内勉強会「未来企画」を主催する。堂上班員手塚の兄でカリスマ性がある。
図書館革命 の簡単なあらすじ
「メディア良化法」により検閲される社会。対抗組織である図書隊の特殊部隊に所属する郁は、休日に班長堂上と外出する。
郁は堂上に恋心を抱いている。二人の元に緊急呼び出しの電話が入る。未明に原発襲撃テロが発生していた。テロリスト達は小説を教本に作戦を立てたと考えられ、その作者当麻が特殊部隊に匿われることになったのだ。
当麻のファン堂上ははりきり、郁も気合が入る。郁の同僚手塚と柴崎は、手塚の兄慧と連絡を取る。柴崎は慧の主催する研究会「未来企画」との敵対関係を解消し、連携することを提案した。慧はこれまでの主張を覆し、協力することを約束する。
当麻は居場所を変えながら良化隊の襲撃を逃れ匿われ続ける。退院した特殊部隊長玄田の策でテレビ局を含めメディアが団結した。テレビでは良化隊による当麻襲撃の様子を放送、次々に放送禁止処分を受け、一気に世論を味方につけた。
解説役としては連日慧が登場していた。郁の提案した当麻亡命案が採用される。表現の自由の侵害だと行政裁判を起こす傍ら、海外への亡命が打診された。敗訴確定後に大使館への亡命を図った当麻と警護は、良化隊に襲撃され散り散りになる。
慧わ恨む図書隊員が情報を流出させたのだ。当麻、郁、堂上は別の大使館への駆け込みを狙うが失敗。堂上が撃たれ、当麻主導で書店に匿われる。緊急搬送される堂上に心を託された郁は、当麻とともに大阪の総領事館へと車で向かう。
当麻の行方を捜す特殊部隊の元には緊急病院から堂上重体の一報が入り、郁からは行き先を暗示する電報が入った。玄田から連絡を受けた関西図書隊の支援を受け、当麻は無事総領事館に保護される。テロリストに屈し作家を弾圧する日本政府に対し海外から激しい非難が巻き起こり、結果、当麻は無事作家として復帰する。東京に戻った郁は一命を取り留めた堂上の病室を訪れ、告白した。
三正になった郁は苗字を堂上と変え、手塚と共に新入隊員の教育に当たっていた。慧の尽力もあり、検閲抗争には銃器使用不可の時代が訪れたのだ。
【起】図書館革命 のあらすじ①
未明に敦賀原発をテロリストが襲撃した日、郁は約束通り上官堂上と外出する。
デート気分の二人の元に所属する関東図書隊図書特殊部隊から緊急の呼び出しがかかる。
テロリストが参考にしたと思われる小説の作者当麻が特殊部隊に保護されたのだ。
「メディア良化法」により厳しい検閲を行う良化委員会はこれを機に言論者狩りをしようとしていた。
保護された当麻を堂上班が中心となって警護する。
当麻のファンである堂上ははりきっていた。
警護作戦で堂上と部下である郁の距離は必然的に縮まっていく。
【承】図書館革命 のあらすじ②
郁の同僚手塚と友人柴崎は、手塚の兄慧との交渉を始めた。
慧は図書隊員でありながら良化委員会の上位組織法務省と繋がっている。
検閲廃止の志を同じくしながらも手段が異なるため敵対してきた慧を、柴崎は見事に懐柔した。
図書隊内の内通者を炙り出すため転々と拠点を変え、時に良化隊に襲撃されながら、郁達は当麻を守る。
柴崎や手塚はうまく慧から情報を引き出していた。
大怪我で入院していた特殊部隊隊長玄田が復帰した。
玄田はパートナーである出版社勤務の折口に働きかけ、各種メディアで徒党を組ませることに成功する。
玄田の作戦通りテレビ局各局が良化委員会による当麻拉致疑惑と襲撃の様子を連日放送し、次々と放送禁止処分を受ける異例の事態となった。
解説役として慧が連日テレビに登場、世論を巻き込むことに成功した図書隊は、次の手を模索する。
特殊部隊の会議では郁が零した案が採用された。
儘ならない日本から自由な執筆活動が可能な海外に移住するといいうものだ。
玄田が幹部に提案し、言論の自由の侵害を理由にした行政裁判を起こすと同時に、亡命申請をすると決定。
秘密裏に亡命を打診していく。
【転】図書館革命 のあらすじ③
裁判は最高裁までもつれ込み、敗訴に近い結果となった。
直後、良化委員会の手から逃れるため亡命作戦が敢行されるが、内通者の存在により阻まれる。
当麻を守るため散り散りとなった特殊部隊。
当麻と同行する郁と堂上は予定していたものとは違う大使館への駆け込みを狙うが、良化隊員に見つかり堂上が撃たれてしまう。
当麻主導で本屋に逃げ込むが、堂上の容態は深刻だった。
亡命が諦めきれない当麻と郁は嵐の中レンタカーで大阪の総領事館を目指すことになる。
郁と堂上はお互いの無事を願い想いを託し合う。
当麻達の行方を探していた特殊部隊の下に救急病院から堂上重体の連絡が入る。
内通者が確保されたことを知らない郁からは、知恵を絞って行き先を暗示した電報が届けられた。
郁と当麻は無事大阪入りする。
変装した当麻が総領事館に駆け込めるよう、郁は良化隊の前で囮となる。
間一髪のところを、玄田から連絡を受けた関西図書隊に救われた。
当麻も無事、図書隊員に警護されて総領事館に入っていた。
【結】図書館革命 のあらすじ④
当麻の正式な亡命申請を受け国際世論は日本政府を厳しく批判。
「メディア良化法」が白日の元に晒された。
郁は帰還し、堂上の入院先を訪れる。
想いを告白する郁を堂上は受け止めた。
数年後、図書隊新入隊員に恐れられる「堂上教官」とは郁のことであった。
結婚した郁は手塚共々教官を務めるまでに成長していた。
慧の尽力もあり、検閲抗争に銃器をし使用することが禁止され、少しずつ、日本は検閲のない社会に戻ろうとしている。
図書館革命 を読んだ読書感想
大人気シリーズの最終巻です。
前三冊は5章程度に分かれ各章読みきりタイプのストーリーでしたが、この巻は一冊で一つのストーリーを追っています。
検閲のある社会の未来に向けた動きが描かれる痛快なストーリーでした。
主人公郁の恋もようやく幸せな結末を迎えました。
要所要所に恋愛色を強く出しつつ、全体としては社会への問題提起であり、アクションが盛りだくさんです。
「エンターテイメント小説の女王」と呼ばれる作者の真骨頂を感じました。
文庫版につく巻末短編「プリティー・ドランカー」は、柴崎と手塚の話です。
割り切った人間関係を送る柴崎にとって唯一無二に友人郁が堂上に取られてしまうのではないかと、酔っ払って管を巻きます。
この巻よりも時系列的には前ですが、不器用な柴崎と手塚の恋が暗示され、より本編への理解が深まります。
図書館戦争シリーズ5「別冊図書館戦争Ⅰ」のネタバレ&あらすじ
別冊図書館戦争Ⅰ の主要登場人物
笠原 郁(かさはら いく)
関東図書隊図書特殊部隊堂上班所属。長身で足が速い。「王子様」を追って図書隊に入隊し、紆余曲折の末、上官堂上が「王子様」だったと知る。猪突猛進型だが、純情乙女で、付き合い始めの堂上との接し方に戸惑っている。
堂上 篤(どうじょう あつし)
関東図書隊図書特殊部隊堂上班班長。懲罰を受けた経験から、沈着冷静であろうとする熱血漢。責任感が強く、郁を厳しく指導してきた。身長が低いことを気にしている。
柴崎 麻子(しばさき あさこ)
関東図書隊員で図書館員。郁の同期で寮は同室の親友。優秀で、正体定かではない情報部の一員。美人であるがために苦労してきた。
手塚 光(てづか ひかる)
関東図書隊図書特殊部隊堂上班所属。郁の同期で友人。最初は郁と反目しあっていた。柴崎とは友達以上恋人未満の関係。
別冊図書館戦争Ⅰ の簡単なあらすじ
郁と堂上は交際を始めた。退院した堂上と郁は公私混同を避けつつ任務にあたる。そんな折、図書館蔵書の窃盗事件が発生する。張り込みを続ける堂上班。郁は逃げ出した犯人を追跡し捕まえ返り血を浴びる。
恋人として自信をなくす郁だが、堂上の想いに救われた。正月を向かえ休暇が訪れる。寮に残った郁は、都内の実家に戻っていた堂上に招かれる。
好意的な家族と食事し、酒量オーバーで倒れた郁は無意識で、今一番欲しいものを呟く。休暇明け、図書館にリストラされた酔っ払いが居座るようになる。つい優しく接してしまった郁は酔っ払いに抱きつかれ、堂上に救出される。その夜、郁は堂上に呼び出された。そして、以前郁が呟いた今一番欲しいものであるキスを交わす。二人が付き合い始めて半年が経った。
バレンタインのチョコを手作りしつつ、婚前交渉に抵抗がある郁は、手が触れるだけで怯えてしまうようになっていた。お互いに距離感がわからなくなっている勤務中、図書館に催涙ガスが蔓延する事件が起こる。避難し遅れた子どもを探して館内に飛び込む郁。決死の堂上がフォローした。触れることを躊躇う堂上へ郁は触れて欲しいと懇願する。
春先、初めての外泊で堂上の肩に噛み付いて歯型を残すという失敗をしてしまった郁。それでも二人の蜜月ぶりは揺るがない。近隣の図書館で人質を取って男が立て篭もる事件が起きた。娘を守ろうとした母親が人質となっているらしい。
郁達図書特殊部隊の活躍で無事犯人は捕まえられる。後日、勤務する図書館で男児が連日館内に紛れ込む騒動が起きる。菓子を隠したり立ち入り禁止区画に隠れる男児は、実は母親から虐待を受け逃げ出そうとしていたのだ。
ショックを受けた郁に、堂上は肩を貸す。郁と堂上は同棲するかどうかで喧嘩していた。仕事中の気まずい雰囲気中、巡回中の郁が中学生を補導する。木島という作家の作品に影響された中学生だった。
木島の作品を狙って図書館に良化隊の検閲が入る。切り抜けた郁は周囲の心配もあり、堂上との仲直りを考える。後日二人は思い出のカフェにいた。堂上は郁に同棲ではなく、婚約指輪を贈りたいとプロポーズする。
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【起】別冊図書館戦争Ⅰ のあらすじ①
「メディア良化法」による検閲に立ち向かう図書隊の図書特殊部隊に所属する郁は様々な事件を経て、上官の班長である堂上と交際を始めた。
怪我を負い入院が続く堂上を毎日見舞う郁だが、彼女としての自分の気配りの甘さに自信を失いかけている。
退院した堂上を祝う特殊部隊では、二人の交際の開始が知れ渡っていた。
図書館の蔵書を窃盗する事件が発生した。
図書館に張り込む郁達堂上班。
犯行現場を見つかった犯人は逃走する。
追いかけて確保した郁だが抵抗されたため殴打し返り血を浴びた。
拭ってくれる堂上に対し、女子力の低さを感じた郁は意気消沈するが、堂上の言葉と想いに救われる。
【承】別冊図書館戦争Ⅰ のあらすじ②
正月休みを迎えた堂上班。
実母とそりが合わず寮に残った郁は堂上に呼び出される。
都内の実家に帰宅していた堂上は家族から郁を招待して欲しいと頼まれたらしい。
堂上宅で郁は苦手な酒を過剰摂取し倒れてしまう。
堂上の部屋へ運ばれた郁は、寝言のように今一番欲しいものを呟く。
それは二人で撮る写真であり、堂上の退院以降なかなかチャンスのないキスだった。
寮の一室で、帰省から戻った柴崎の土産話を聞きながら、郁は堂上に買ってもらったデジカメで撮った写真を見せる。
郁はなぜ堂上にデジカメをプレゼントされたのかわからないものの、前々から欲しかったと喜んでいた。
正月休みを終えた図書館の児童室に酔っ払った中年男性が居座るようになる。
優しく接した郁は男性に唐突に抱きつかれてしまい、堂上に助けられた。
リストラされたという男性に温情をかける郁に対し堂上は不満を禁じえないが、惚れた弱みで我慢する。
夜間郁を外へと呼び出した堂上は、自分も郁と同じ気持ちだと告げキスをした。
【転】別冊図書館戦争Ⅰ のあらすじ③
バレンタインの季節。
付き合って半年が経過した郁達だが、婚前交渉に抵抗があり怯えてしまって以降、堂上の手が触れるだけで体が竦んでしまう。
堂上もそんな郁との距離を計りかねていた。
郁が同僚手塚と図書館を巡視していた時、カウンターの荷物から発生した催涙ガスが館内に蔓延し始めた。
緊急非難の誘導を行うが、聴覚障害のある児童が一人取り残されているとわかる。
反射的に救出に向かう郁を慌てて追う堂上。
二人で無事児童を救出するが、堂上は郁を口頭でだけ誉め、触れ合いを恐れるように去って行く。
周りに背中を押され堂上と向き合った郁は、気にせず触れて欲しいと懇願するのだった。
初めての外泊を終えた郁と堂上だが、堂上の肩には行為の際に動転した郁のつけた歯型がくっきり残っていた。
失敗ばかりで恐縮しきりの郁だが、二人の蜜月ぶりは変わらない。
近隣の図書館で男が人質を盾に立て篭もる事件が発生した。
娘を逃がそうとした若い母親が人質となっている。
特殊部隊が現場に急行し、郁も活躍する。
事件を受け警戒しているところに「子どもがいなくなった」と母親から捜索依頼が入り、柴崎ら図書館員と郁達防衛方総出で探すことになった。
見つけ出すが、その後連日のようにその男児は図書館内で行方をくらまし捜索されるようになる。
見つけた郁の声に過剰反応を返したことから、母親による男児への虐待が発覚。
堂上は男児を保護し児童相談所に任せた上で、ショック状態の郁を抱きしめた。
【結】別冊図書館戦争Ⅰ のあらすじ④
寮を出て同棲したいと言った郁は、堂上に反対され拗ねていた。
初めての痴話喧嘩に周りも振り回され、仕事中もギスギスした雰囲気になってしまう。
図書館を巡回していた郁と手塚、同行していた柴崎は庭でゴミを散らかす中学生を注意する。
しかし、反抗されたため補導するに至る。
どうやら中学生は作家木島の作品に強く影響されているようだった。
後日、木島の作品を狙って良化隊が検閲の襲撃をかけてくる。
激しい攻防戦の末蔵書を守りきった図書隊。
郁は休む前に堂上に歩み寄りのメールを送り、返信を受ける。
完全な和解をしないままデートに出た郁達。
堂上は、同棲する予算で婚約指輪を買いたかったことを郁に告げる。
動転と舞い上がる郁を連れて堂上は指輪の下見に向かうのだった。
別冊図書館戦争Ⅰ を読んだ読書感想
シリーズの五巻という扱いですが、全巻までで本編は終了しています。
アニメ化に併せ、番外編として刊行された二冊の内、郁と堂上の恋愛に焦点を当てたのがこの一冊です。
これまで通り図書特殊部隊としての戦闘シーンも描かれていますが、本編よりもずっと甘やかな恋愛重視の作品でした。
文庫版では四巻までの本編と同様に短編が一作ついています。
「マイ・レディー」という作品で、二巻以降進展してきた小牧と毬江のラブストーリーです。
図書隊という枠を離れた物語なので、本編ではなく番外編の付録としての収録位置がちょうど良いように感じられました。
また、この短編の存在も含めて、この巻は恋愛が主体なのだと感じさせられます。
シリーズ本編のスリリングな展開に比べると小規模な事件ばかりですが、全体としての展開はとてもスピーディーに感じられました。
事件が、家族や子どもを扱ったものばかりのため、主人公の恋愛の進展を暗示しているように思えるせいかもしれません。
キャラクターの本編とは違うプライベートな顔を見られるので、更に世界観が深まりました。
図書館戦争シリーズ6「別冊図書館戦争Ⅱ」のネタバレ&あらすじ
別冊 図書館戦争Ⅱ の主要登場人物
堂上 郁(どうじょう いく)
図書特殊部隊の上官である堂上と結婚したばかり。旧姓笠原。長身で身体能力が高い。
堂上 篤(どうじょう あつし)
郁の夫で上官。冷静であろうと努めるが本来はかなりの熱血漢。
柴崎 麻子(しばさき あさこ)
郁の同期で友人。美人で優秀だが人付き合いは不器用。業務部員で、情報部員。
手塚 光(てづか ひかる)
郁の同期で同僚。エリートで優秀だが、不器用な性格。柴崎に惚れている。
別冊図書館戦争Ⅱ の簡単なあらすじ
図書特殊部隊堂上班は、「タイムマシンがあったら」という話題で盛り上がる。
郁は結婚式をもう一度したいと語り、同席していた副隊長緒形に話題を振る。
緒形は昔、図書隊と敵対する良化隊の隊員だった。
別れ際の彼女の言葉に良化隊を辞め、苦労を重ねながら図書隊員となったのだ。
心を残し独身を貫く緒形だが、実は相手も同じ。隊長玄田のパートナー折口が取材した作家が、緒形の相手だった。
そこで彼女も緒形を想い続け、現状を知り再会を望んでいると発覚する。郁は堂上に昔の話が聞きたいとせがむ。
堂上の話はどれも猪突猛進した結果の失敗談に近いものだった。
図書隊員としていつまでも追いつけないと思っていた郁は、話しを聞くうちに自分が報われていることや、堂上への想いを改めて感じた。結婚して女子寮を出た郁の代わりのルームメイトとして、柴崎の元に水島がやってくる。
しかし、水島は卑屈でうまく馴染めない。そんな中柴崎は図書館利用者のストーカーに付きまとわれ、同期で堂上班員の手塚の力を借りて撃退する。柴崎の卑猥なコラージュ写真がばら撒かれた。郁は特殊部隊や柴崎と協力して事態に当たる。協力関係にある警官と連携を取るが、アダルトサイトに柴崎の名前と携帯番号が晒されてしまう。
憔悴していく柴崎を、郁だけでなく手塚も支える。柴崎が郁の部屋で夕食を取っている間に堂上班の男性陣は会議を行い、内部犯で後方支援部隊の人間が怪しいと気付いた。しかしその夜、柴崎は図書基地内の屋外で何者かに拉致される。連絡を受け飛び出す手塚の前に、水島が現れ同行を願い出た。基地の記録から後方支援部隊の坂上という男が犯人だとわかる。しかし、警察が踏み込んだ坂上の住所はもぬけの殻。
手塚は道中で柴崎の悪口を言い続ける水島を切り捨て、柴崎にお守りとして持たせていた発信機の信号を追う。寮に戻った水島は逮捕される。郁と女性警官が女の共犯者の存在に気付き、寮の部屋を探ったところ水島の荷物から物証が出てきたのだ。
柴崎は坂上に犯される寸前だった。間一髪手塚が駆けつけ、救出される。坂上を警察に任せた手塚は柴崎に「付き合って欲しい」と告げる。恋愛に不器用に柴崎は、「大切にして」と涙を流すのだった。取調べの結果、水島が手塚のストーカーだったと判明する。そのため、手塚と親しい柴崎を逆恨みし、坂上を巻き込んで犯行計画を立てたのだ。柴崎と手塚の交際は順調に進み、結婚することになった。柴崎の功績で反目していた手塚の兄も呼ばれ和やかな結婚式を迎える。幸せそうな友人に、郁は精一杯のスピーチを送るのだった。
【起】別冊図書館戦争Ⅱ のあらすじ①
休憩中の図書特殊部隊堂上班は、「タイムマシンがあったら」という話題で盛り上がる。
郁は結婚式をもう一度したいと語り、同席していた副隊長の緒形に話題を振る。
しかし緒形の「大学時代」という応えを受け、堂上が不自然に話題を切り上げる。
緒形は昔、図書隊と敵対する良化隊の隊員だった。
公務員として採用され、配属先が良化隊だったのた。
しかし、大学時代からの恋人は作家志望。
緒形が検閲から彼女の本を守ろうとしたことを知り、それでも良化隊には賛同できないと別れを告げた。
緒形は彼女の言葉に「メディア良化法」についての勉強をはじめ、退職する。
そして苦労を重ねながら図書隊員となった。
心を残し独身を貫く緒形。
ある日隊長玄田のパートナーである折口が取材した作家が、緒形の相手だった。
話の中から、彼女も緒形を想い続け、現状を知っていること、そして再会を望んでいると発覚する。
【承】別冊図書館戦争Ⅱ のあらすじ②
新入隊員を指導する郁の姿に堂上は笑いをかみ殺していた。
自分ばかり過去の失敗を知られている郁は、堂上に昔の話が聞きたいとせがむ。
図書大学の話や同僚の小牧と出会った時の話など、堂上の話はどれも猪突猛進した結果の失談に近いものだった。
図書隊員としていつまでも追いつけないと思っていた郁は、話しを聞くうちに、堂上も努力してここまで辿り着いていることを実感する。
そしてそんな堂上への想いを改めてかみ締めた。
【転】別冊図書館戦争Ⅱ のあらすじ③
結婚して女子寮を出た郁の代わりのルームメイトとして、柴崎の元に水島がやってくる。
柴崎は良好な関係を気付こうとするが、卑屈な水島は、階級が上の柴崎と馴染もうとしない。
そんな中柴崎は図書館利用者のストーカーに付きまとわれ、同期で堂上班員の手塚の力を借りて撃退する。
手塚と柴崎は、以前キスを交わしたものの、はっきりとしない関係だ。
図書隊の下士官男子を中心に柴崎の卑猥なコラージュ写真がばら撒かれる。
部下の女性隊員から知らされた郁は特殊部隊や柴崎と協力して事態に当たる。
協力関係にある警官と連携を取るが犯人は特定できず、今度はアダルトサイトに柴崎の名前と携帯番号が晒されてしまう。
度重なる嫌がらせに憔悴していく柴崎を、郁や手塚が支える。
柴崎は水島にも神経を逆撫でされ、寮でもくつろげないでいた。
堂上が出かけるという理由で郁は自宅の夕食に柴崎を招く。
堂上達の男性陣は男子寮で会議を行い、内部犯で後方支援部隊の人間が怪しいと気付くに至る。
しかし食事を終えた柴崎が一人で図書基地内を歩き、寮に戻ろうとしたところ、何者かに拉致されてしまった。
郁からの連絡に飛び出す手塚。
その車の前に、突如水島が現れ同行を願い出た。
基地の出入り記録から後方支援部隊の坂上という男が犯人だと判明した。
しかし、警察が踏み込んだ坂上の自宅はもぬけの殻。
手塚は「柴崎が心配だ」と乗り込んだ水島が、道中で柴崎の悪口を言い続けることに苛立っていた。
自己弁護ばかりの水島を切り捨て、手塚は柴崎にお守りとして持たせていた発信機の信号を追う。
手塚から渡されたタクシー代を使い寮に戻った水島は、待ち構えていた郁と警察に逮捕される。
コラージュ写真に記載された柴崎のスリーサイズの表記から郁と女性警官が女の共犯者の存在に気付いたのだ。
下着ショップの店員の証言から寮の柴崎の部屋を探ったところ、水島の荷物から物証が出てきていた。
柴崎は坂上に犯される寸前だった。
間一髪、発信機を頼りに手塚が駆けつけ、柴崎は救出される。
坂上を警察に任せた手塚は柴崎を保護。
守れるための大義名分が欲しい、「付き合って欲しい」と告白する。
恋愛に不器用に柴崎は、ついに自分が主役になれる幸せな恋を見つけ、「大切にして」と涙を流すのだった。
【結】別冊図書館戦争Ⅱ のあらすじ④
取調べの結果、水島は手塚の悪質なストーカーだったと判明する。
そのため、手塚と親しい柴崎が、自分の恋路の邪魔をすると逆恨みし、坂上を巻き込んで犯行計画を立てたのだ。
水島の同級生である坂上もまた悪質なストーカーで、前科がついてでも柴崎を手篭めにしたいと思い協力していた。
二人は図書隊を解雇される。
柴崎と手塚の交際は順調に進み、結婚することになった。
柴崎の功績で反目していた手塚の兄も呼ばれた。
兄弟の仲直りをさせてくれた柴崎に、手塚の両親も満足している。
和やかな結婚式を迎え、幸せそうな友人に、郁は精一杯のスピーチを送るのだった。
別冊図書館戦争Ⅱ を読んだ読書感想
人気シリーズの番外編二弾です。
前巻同様シリーズのアニメ化に併せて刊行され、こちらも本編よりも恋愛に特化した印象の作品です。
番外編の一冊目は主人公である郁と堂上の恋がメインでしたが、こちらの巻では脇役達の恋愛模様が描かれています。
文庫版につく短編も「ウェイティング・ハピネス」という玄田の恋を話題にしたものです。
短編で描かれた、玄田と折口の長年に及ぶつかず離れずの関係。
一話目で描かれた緒形のストイックな気持ち。
そして郁の大切な友人である柴崎と手塚の不器用な恋。
どれも、もどかしくも素敵な恋の形でした。
恋愛がメインのせいか、大規模な戦闘シーンは前巻よりもさらに減っています。
描かれる図書隊の活動の背景から、検閲抗争での銃の規制など作品の世界の中での時間の経過が感じられるため、大規模な抗争がなくなったために恋愛が作品のメインになった考えることもできます。
検閲のある厳しい社会を題材にした「図書館戦争」が、「戦争」という時代を抜けたことを感じられるのは、最終巻として相応しいように感じました。
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