監督:マイク・ミルズ 2017年6月にロングライドから配給
20センチュリー・ウーマンの主要登場人物
ドロシー・フィールズ(アネット・ベニング)
ヒロイン。本業はデザイナーでアパート経営もする。子育てではプライバシーと自主性を重んじる。
ジェイミー・フィールズ(ルーカス・ジェイド・ズマン)
ドロシーの息子。1964年生まれで高校生。趣味はスケボー。
アビー・ポーター(グレタ・ガーウィグ)
ドロシーの店子。24歳の写真家。デヴィッドボウイに憧れて髪の毛を真っ赤に染めている。
ジュリー・ハムリン(エル・ファニング)
ジェイミーの2歳上の幼なじみ。性衝動を抑えられない。ショッピングモールでアルバイト中。
ウィリアム(ビリー・クラダップ)
ドロシーの店子。木材の知識が豊富で家具の修復が得意。
20センチュリー・ウーマン の簡単なあらすじ
ドロシー・フィールズは夫と離婚した後に、シングルマザーとしてカリフォルニアでジェイミーを育てていきます。
思春期を迎えたひとり息子との関係に悩んでいたドロシーに、親身になってアドバイスをしてくれたのはシェアハウスのメンバーです。
ようやく信頼できる親子関係を築き上げた頃、ドロシーは病によってこの世を去っていくのでした。
20センチュリー・ウーマン の起承転結
【起】20センチュリー・ウーマン のあらすじ①
大手製缶メーカーの製図室で働いていたドロシー・フィールズは、同僚の男性とのあいだにジェイミーを授かりました。
カリフォルニア州サンタバーバラでの新婚生活は短く、夫が愛車のフォード・ギャラクシーを残して東海岸へと去っていった後は女手ひとつでジェイミーを育てていきます。
長らく乗り回していたフォードが電気系統の故障でスーパーマーケットの駐車場炎上してしまったのは、1979年のことです。
買い物を終えて帰宅すると、2階に間借りしているアビー・ポーターとウィリアムがドロシーの誕生日を祝うために集まっていました。
ウィリアムは家賃の代わりとして、ドロシーのために新しい車を安く見つけてきてくれます。
フォトグラファーをしているアビーは子宮がんの経過観察中で、検査の結果は1週間しないと分かりません。
15歳になって「失神ゲーム」という危険な遊びに熱中しているジェイミーのことを、ドロシーは女親として理解できなくなっています。
反抗期に突入しつつある我が子と打ち解けるために、ドロシーはアビーやウィリアムに助けてもらうことにしました。
【承】20センチュリー・ウーマン のあらすじ②
ジェイミーは友人たちと車でロサンゼルスまで出掛けて、ライブハウス「スターウッド」でお気に入りのバンドの演奏を見に行きました。
ライブが終わって家に帰って自分の部屋に戻ると、ジュリー・ハムリンが勝手にベッドに潜り込んで寝ているのはいつものことです。
ジェイミーは幼い頃から一緒に遊んでいたジュリーのことをこの頃では異性として意識し始めますが、一線をこえることはありません。
不得意多数のボーイフレンドと交際している彼女は、妊娠したのではないかと不安になっています。
アビーの検査結果が判明する日、仕事に行かなければならないドロシーの代わりにジェイミーが産婦人科まで一緒に行くことになりました。
生体検査では悪性の細胞は見つからずに良性だと判断されましたが、子宮の管に不全があり出産には耐えきれません。
子供を持つことは難しいと医師に言われてショックを受けたアビーに対して、検査薬で妊娠していないと分かったジュリーはひと安心です。
【転】20センチュリー・ウーマン のあらすじ③
病院まで付き添ってくれたお礼に、アビーは自身の生い立ちをジェイミーに打ち明けました。
故郷のいなか町が退屈だったこと、18歳で単身ニューヨークへと向かいアートスクールで写真にのめり込んだこと。
病気が見つかってからは地元に戻って就職しましたが、母親とはうまくいっていません。
実の母と娘以上に強い絆で結ばれているドロシーとアビーに対して、ジェイミーは少し嫉妬してしまいます。
ジェイミーがフェミニズムに興味を持つようになったのは、アビーが学生時代に授業で使っていた本を借りて読んでみたり友人たちのパーティーに飛び入りで参加してからです。
ジェイミーは大人の世界を垣間見ましたが、ドロシーはアビーの進歩的で刺激が強すぎる教えに少しだけ歯止めを掛けておきました。
相変わらずジュリーはジェイミーと一緒の布団の中で寝ていますが、健全なお付き合いは変わりません。
ある日の夜遅くに海が見たくなったジュリーは車を借りて、助手席にジェイミーを乗せて出発します。
【結】20センチュリー・ウーマン のあらすじ④
ふたりの後を追ったドロシーは免許証と車両登録証を所持していなかったために、警察署に連れていかれます。
身元引受人になってくれたのはアビーとウィリアムで、5人が合流した場所は州南部のサン・ルイス・オビスポです。
みんなでモーテルに泊まってラジオから流れる曲を聴きながら躍り明かし、ジュリー、アビー、ウィリアムはひと足先に帰りました。
ドロシーとジェイミーは久しぶりに親子ふたりっきりで向き合い、今後はお互いに何でも話すと約束します。
ジュリーはニューヨーク大学へ進学したあとパリに移住してからはフィールズ親子とは疎遠に、アビーはサンタバーバラに残って地元ギャラリーで作品を展示、ウィリアムは南西部のセドナという町に引っ越して陶器の店を開店。
ドロシーは肉体的にも精神的にも不調を感じたために病院に行きますが、肺がんが全身に転移していて手の施しようがありません。
21世紀の目前で行われたドロシーの葬儀ではイルカをモチーフにした風船が飛ばされて、彼女が愛したルイ・アームストロングの曲が流れるのでした。
20センチュリー・ウーマン を観た感想
青春時代を世界恐慌と戦争の真っただ中で過ごした主人公のドロシー・フィールズと、1960年代生まれのジェイミーやジュリーとのジェネレーションギャップがうまく表現されています。
陽光がきらめくカリフォルニアが舞台となっていて、ジェイミーとジュリーが夜明けの海岸をドライブするシーンが美しいです。
この町を出ていき大物になる方法、「いい男」になるための方法、女性を満足させる方法。
世間知らずなジェイミーにちょっぴり刺激的な教育を施してしまう、年上女性のアビーも魅力的なキャラクターです。
ジェイミーにとっては精神的な「父」とも言える、ウィリアム役のビリー・クラダップの存在感はこの映画に欠かせません。
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