監督:山下敦弘 2013年11月にビターズ・エンドから配給
もらとりあむタマ子の主要登場人物
坂井タマ子(前田敦子)
ヒロイン。行動範囲が狭く友人も少ない。趣味はマンガを読むこと。
坂井善次(康すおん)
タマ子の父。スポーツ用品店を経営。働き者で家事全般も得意。
仁(伊東清矢)
地元の中学に通う1年生。部活にも恋にも一生懸命。
坂井よし子(中村久美)
タマ子のおば。うわさ話や他人のお節介を焼くのが好き。
曜子(富田靖子)
自作のアクセサリーを販売しつつカルチャースクールの講師もしている。バツイチでマンションで独り暮らし。
もらとりあむタマ子 の簡単なあらすじ
大学卒業後も進路が未定な坂井タマ子が、実家に戻って父親の善次と一緒に暮らし始めたのは秋口のことです。
家業を手伝うこともなく就職活動にも消極的な我が子にあきれながらも、善次は何くれとなく世話を焼いています。
季節がひと回りして1年間をダラダラと浪費した末に、タマ子はようやく親元を離れることを決心するのでした。
もらとりあむタマ子 の起承転結
【起】もらとりあむタマ子 のあらすじ①
2012年に城南大学を卒業して山梨県甲府市大和田に帰ってきた坂井タマ子ですが、秋になった今でも就職先は決まっていません。
お昼前に起きてきて父親の善次が作り置している朝ご飯を食べ、食器の後片づけもせずにテレビゲームに熱中。
近所のスーパーまで買い物に出かける他は外出もせずに、マンガを片手にお菓子を食べているだけ。
善次がひとりで切り盛りしてきた「甲府スポーツ」の店番をすることもなく、洗濯や夕飯の準備をする訳でもありません。
無為な日々を送る娘に怒りを爆発させた善次がいつになったら動き出すのか問い詰めると、少なくとも今ではないと意味が不明な口答えをしてきました。
善次が留守にしている時に来店してきたのは中学生の仁で、タマ子は部活動で使用するバッシュをカタログの中から選んであげます。
地元の友人たちとも連絡を取ることもなく疎遠になっていたタマ子ですが、不思議と仁とは気が合い仲良しです。
間もなく仁はバドミントン部の女の子とお付き合いを始めたようですが、タマ子には彼氏が出来る気配はありません。
【承】もらとりあむタマ子 のあらすじ②
冬になるとタマ子は食品の買い出しや、年末の大掃除くらいは言われなくても自分から進んでやるようになりました。
善次はずいぶん前に離婚していますが、元妻の姉に当たるよし子とはいまだに交流が続いています。
大みそかになるとよし子はおせち料理を作って届けに来てくれて、善次とたま子は除夜の鐘を聞きながら手打ちそばをすするのが毎年の恒例です。
独り身の善次を心配しているよし子は、商店街のビルの中でアクセサリーショップ「赤川」を開いている曜子を紹介しました。
5年ほど前に夫と別れて子供もいないという曜子と、善次は今度の休みの日に食事をしてみるようです。
たま子は今でも時おり母親とは会っていて、お互いの近況を報告し合っています。
父に新しい恋人ができそうなこと、かなりの美人でショップと平行して3年前から始めたアクセサリー教室も繁盛していること、再婚にまで発展するかもしれないこと。
それとなく母に電話をしてみましたが、本人たちの好きにすればいいとまるで関心を示しません。
【転】もらとりあむタマ子 のあらすじ③
2013年の4月、タマ子はファッション雑誌を参考にして美容院でヘアスタイルをきっちりとセットしてもらいました。
食事も野菜を中心にしたヘルシーなメニューで、善次の幼なじみが跡を継いだお寺にお参りに行って験担のためにお守りを購入します。
面接用の写真を撮影するために訪れたのは、仁の父親が店主をしている「SASAMOTO STUDIO」です。
今の自分に納得していないこと、生きてる以上は何かを演じていること、他の何者かになっている時が1番に自然に感じること。
志望動機を記載した履歴書を内緒で芸能プロダクションに送るつもりが、善次に見つかってしまいました。
就職祝いとして高級腕時計をプレゼントされたり、「応援する」などと言われた途端にタマ子はへそを曲げてしまいます。
応募書類をゴミ箱に捨てて甘いものをやけ食いしているタマ子は仏頂面ですが、SASAMOTO Studioのショーケースに飾られている写真だけは咲き誇るような笑顔です。
【結】もらとりあむタマ子 のあらすじ④
甲子園が開幕すると善次は仕事が手につかないほどテレビに夢中ですが、タマ子には暑い中でわざわざ野球をする人たちの気持ちが理解できません。
いろんな人間がいるからそのままでいいという善次は、この頃では無職でパラサイト・シングルの娘に対してもうるさいことを言うのを止めました。
タマ子の方も開店時間を迎えるとお店の看板を表通りに引っ張り出したり、洗濯ものをベランダに干したり当たり前のようにしています。
曜子とは一度だけ喫茶店でデートをしてみたという善次でしたが、今さら他人と一緒に暮らすつもりはありません。
ようやく善次がタマ子に面と向かって「家を出ていけ」と言えたのは、夏の終わりが近づいてきたある日の夕食の時です。
彼女とはいつの間にか自然消滅したという仁が久しぶりに顔を見せたために、店の前のベンチに腰かけてふたりでアイスキャンディーを食べます。
「自然消滅」という懐かしい響きにほほえみを浮かべつつ、タマ子はこの町を旅立ってどこか別の場所へ行くことを仁に告げるのでした。
もらとりあむタマ子 を観た感想
撮影当時は国民的アイドルグループを卒業したばかりだった前田敦子が、無気力なくせに口だけは達者なダメダメ女子を演じていて笑わされます。
女優として本格的なステップを踏み出していた彼女と、物語の中のタマ子が小さな一歩を踏み出していく後ろ姿を重ねてみてしまうでしょう。
ふわふわのロールキャベツから絶妙な焼き加減のサンマ、具だくさんの炊き込みご飯に揚げたての山菜の天ぷらまで。
季節の食材を生かして栄養バランスにもこだわり抜いた、善次役の康すおんが腕によりをかけて食卓に並べる家庭料理の数々が実に美味しそうです。
時には憎まれ口をたたき合いながらも、何気ない会話の端々から親子の愛情が伝わってきました。
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