「パレートの誤算」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|柚月裕子

パレートの誤算 柚月裕子

著者:柚月裕子 平成26年10月に祥伝社から出版

パレートの誤算の主要登場人物

牧野聡美(まきのさとみ)
本作の主人公。津川市役所の臨時職員。新人のケースワーカー。

小野寺淳一(おのでらじゅんいち)
市役所勤務8年目。異動してきたばかりで、社会福祉課は1年目。聡美と共にケースワーカーとしてデビューする。

山川亨(やまかわとおる)
聡美の上司で主任。ベテランのケースワーカー。高級時計のコレクションが趣味。

猪又孝雄(いのまたたかお)
福祉保健部社会福祉課の課長。

パレートの誤算 の簡単なあらすじ

主人公の牧野聡美は、新人のケースワーカーとして仕事に取り組んでいた。

そんなある日、尊敬していたベテランケースワーカーの山川が事件に巻き込まれ、何者かに殺害されてしまった。

一体、彼の身に何が起きたのだろうか。

パレートの誤算 の起承転結

【起】パレートの誤算 のあらすじ①

尊敬出来る先輩・山川

主人公の牧野聡美は、この春、津川市役所に臨時職員として就職したばかりでした。

担当は社会福祉課です。

しかし、聡美は毎月、大量の税金を生活保護受給者に渡すことに、なんとも言えない気持ちを持っていました。

なぜなら、もらったお金をそのままギャンブルに使ってしまう受給者もいたからです。

そんなニュースや実際の話を聞く度に、聡美はやるせない気持ちになってしまったのでした。

そんなある日、猪又課長からケースワーカーとしてのデビューを、小野寺と共に命じられます。

小野寺がついているとはいえ、ケースワーカーとして初めて生活保護者宅に訪問することに、聡美は緊張をしていました。

それを知っていた上司の山川は、わざわざお昼に聡美に話しかけ、緊張をほどいてくれます。

山川はケースワーカーという仕事に責任とプライドを持っていて、自分の担当区域の生活保護受給者をクライアントと呼ぶほどでした。

聡美は、そんな山川を素敵に思い、尊敬するほどだったのです。

【承】パレートの誤算 のあらすじ②

ケースワーカーとしての仕事と、事件の真相

さっそく聡美は、小野寺と共に担当区域を訪問しました。

しかし、どの家も表向きとは違った姿が見え隠れしていて、聡美は気が滅入りそうなほどでした。

そして、巡回を終えて会社に戻ると、山川が戻ってきていないことに気づきます。

何かトラブルに巻き込まれたのかと心配した聡美は、山川に電話をかけましたが繋がりませんでした。

すると、山川がケースワーカーとして訪問した先で、火事に巻き込まれてしまったことが判明します。

しかも、山川が遺体となって発見されてしまったのです。

放火殺人でした。

その後、聡美と小野寺は2人で、山川が受け持っていた生活保護受給者たちを受け持つことになります。

すると、事件に関する意外な事実が見えてきました。

2人は事件について、ケースワーカーとして調べることにしましたが、猪又課長は、これ以上騒ぎが起こることを恐れ、2人に注意をします。

もうすぐで定年を迎える猪又課長は、自分のいる時に起こる面倒を避けたかったのです。

そこで仕方なく、聡美と小野寺は、仕事の時間外で、ケースワーカーとして個人的に、山川の事件について調べることにしました。

【転】パレートの誤算 のあらすじ③

ヤクザとの関わり

聡美と小野寺が不思議に思っていたのは、山川が亡くなったアパートでは、ヤクザの目撃情報が頻繁にあったことでした。

仕事に真面目な山川なら、このことをちゃんと報告するはずなのですが、どこにもこの情報が書かれていないのです。

山川は普段から高級な腕時計を付けていたため、もしかして山川がヤクザと関わりがあるのではないかと疑うようになっていきます。

最近は、生活保護受給者のお金をヤクザが搾取する手口も増えており、これに山川が加担しているのではないかと睨んだのです。

そのため、山川を殺したのは、もしかしたらヤクザの仕業じゃないかと考えるようになりました。

そんなある日、聡美は山川が残していたデータを見つけます。

それはロックがかかっていましたが、事件の手がかりになると思いUSBに保存しました。

そして、それを警察に届けに行こうとします。

しかし、届けに行こうとした矢先、聡美は何者かに襲われ、気を失ってしまいます。

そして、やっと気づいた時には、聡美はヤクザに囲まれ、絶体絶命のピンチを迎えてしまいました。

【結】パレートの誤算 のあらすじ④

事件の真犯人

その頃、小野寺は警察に向かったはずの聡美と連絡が取れなくなったことに危機を感じていました。

そして、警察に助けを求め、ヤクザの話を基に、聡美の居場所を突き止めます。

危機一髪で助け出された聡美でしたが、聡美は小野寺が犯人だと思い、怯えていました。

なぜなら、USBを警察に持っていくことを教えたのは小野寺ともう1人の同僚だけだったからです。

しかし、警察のおかげで小野寺が犯人ではないことが分かります。

なんと、本当の真犯人は猪又課長だったのです。

猪又課長はもう1人の同僚からUSBの話を聞き、急いで聡美を始末するようにヤクザにお願いしていたのでした。

また、山川を殺したのも同じ理由です。

自分がヤクザと繋がっていることが山川にばれてしまったため、彼を殺していたのでした。

つまり、山川は直属である猪又課長がヤクザと関わりがあることを知っていたため、ヤクザの目撃情報を報告出来なかったのです。

彼が身につけていた高級時計も、オークションなどで安値でコレクションしていたものだと判明しました。

こうして、ようやく事件は幕を閉じたのでした。

パレートの誤算 を読んだ読書感想

生活保護受給者たちの苦悩や、それに目をつけていくヤクザたちの関係が怖くて、とても面白かったです。

なかなか見られない世界の話ですが、1歩間違えれば、誰もが同じような目に遭ってしまう危険性もあって、ゾッとしてしまいました。

また、ミステリーとしても充分に面白かったです。

犯人が分かってから読むと、最初の方に伏線が張られている場面も分かってくるので、余計に面白く感じられます。

社会派ミステリーが好きだという人には、特にハマれる作品なのではないでしょうか。

日本の生活保護の制度のあり方についても、いろいろと考えさせられるのでオススメです。

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