監督:クリストフ・ガンズ 2006年7月日本公開に松竹から配給
サイレントヒルの主要登場人物
ローズ・ダ・シルバ(ラダ・ミッチェル)
主人公でシャロンの母。サイレントヒルでいなくなった娘を探し町を探索することに。
シャロン・ダ・シルバ(ジョデル・フェルランド)
クリストファーとローズの養女。夢遊病を患い母と原因究明のために訪れたサイレントヒルで失踪する。
アレッサ・ギレスピー(ジョデル・フェルランド)
クリスタベラの妹・ダリアの娘。魔女と呼ばれ、火炙りにされた少女。
クリストファー・ダ・シルバ(ショーン・ビーン)
ローズの夫でシャロンの養父。失踪した妻と娘を探し、警察とともにサイレントヒルを訪れる。
クリスタベラ(アリス・クリーグ)
サイレントヒルで信仰されている宗教のトップ。アレッサを火炙りに処し、人々を恐怖と教義で統括する。ダリアの姉でアレッサの叔母にあたる。
サイレントヒル の簡単なあらすじ
9年前に養女として迎えたシャロンが夢遊病のような症状で向かおうとする町・サイレントヒル。
母のローズは意を決してシャロンを連れてサイレントヒルに向かうが、町の入り口で事故を起こし、気付いたらシャロンは消えていた。
霧と灰で薄暗いゴーストタウンを彷徨う内、ローズはグロテスクな異形に襲われる。
警官のシビルと共に必死に手がかりを追いながらアレッサという少女がこの出来事に深くかかわっていることを知ったローズたちは、サイレントヒルに秘められた地獄のような過去を探っていく。
サイレントヒル の起承転結
【起】サイレントヒル のあらすじ①
ローズとクリストファーの娘のシャロンは夢遊病を患い、夜な夜なサイレントヒルという町に行かないと繰り返します。
ローズは意を決してシャロンを連れサイレンヒルに訪れますが、不審に思った女性警官・シビルに追われ、事故を起こし気絶してしまいます。
気付くとシャロンがいなくなっており、霧が立ち込め灰の降るゴーストタウンを捜索します。
途中で出会った老婆・ダリアにシャロンの写真を見せると「私の娘、アレッサだ!」と迫られます。
なんとか逃げ、走り去る少女の影を追いかけていた時大きなサイレンが鳴り響き、周囲がボロボロと汚く崩れて異形の者があらわれ、ローズに襲い掛かってきます。
車に戻ったローズはシャロンが描いたらしき「SCHOOL」と書かれた絵を見つけます。
追いかけてきたシビルがローズを連行しようとした時異形の者が襲い掛かり、その隙を突きローズは逃げ出します。
学校を探索する内に防護服とマスクをつけた謎の集団を見かけ、ローズは慌てて教室へ逃げます。
机の一つに「魔女」と落書きされたアレッサ・ギレスピーという少女のものを見つけますが、走り去る少女の影に気付き、ローズはトイレへ追います。
中には有刺鉄線で巻かれた男の死体があり、その口には「HOTEL」と次の手がかりが入っていました。
トイレから出たところを防護服たちに見つかったその時サイレンが鳴り響き、防護服たちは慌てて逃げ出します。
周囲がボロボロに変化し、無数の虫たちが這い回る中ローズは必死に逃げますが、大きな三角形の頭を持つ異形に追われ絶望します。
その時ローズをシビルが助けだします。
同じころ、夫・クリストファーはサイレントヒル出身の刑事・グッチと共にサイレントヒルを訪れ、同じ学校で妻と娘の捜索をしていました。
しかしまるで違う場所にいるかのように、ローズとクリストファーはお互いの姿が見えないのでした。
グッチに不信を持ったクリストファーは自分で捜査を始めます。
【承】サイレントヒル のあらすじ②
ホテルを目指すローズとシビルは途中でダリアに「魔女!」石を投げるアンナに出会います。
町の人々はクリスタベラという宗教家の女性がいる教会に身を寄せていると言います。
アンナを連れてホテルを捜索し、111号室のキーの場所にシャロンの絵が置いてあり、3人は111号室に向かいますが、ドアは見つかりません。
しかしローズが、火炙りにされる女性の大きな絵をナイフで切り破ると、その後ろに隠された111号室が現れました。
部屋の壁に大きな穴が開いており、隣のビルに飛び移ったローズは火事で焼けたようなその工場跡のような場所で泣いている少女を見つけます。
宥めながらこちらを向かせると、シャロンとそっくりのその少女の体が急に発火しました。
驚くローズにアンナが、闇につかまるから早く逃げようと叫びます。
途端にサイレンがなり、3人は教会へ走ります。
シャロンが描いた絵とそっくりの教会に驚くローズの後から沢山の人が教会へ逃げ込んできます。
一人それを止めるダリアに、ローズはアレッサがシャロンを呼んだのかと問います。
ダリアは「復讐は悪を呼び覚ます、気をつけろ」と忠告します。
ダリアに投石しようとして逃げ遅れたアンナは三角頭につかまり殺されてしまいます。
教会に入ると沢山の人が2人を魔女だと非難しますが、クリスタベラが止めます。
ローズはシャロンの行方を尋ねますが、それは悪魔だけが知る事で、行くならばその場所に案内すると言われます。
ローズはシビルにシャロンが養女である事を告げ、シビルは幸せな子だ、子供にとって母親は神だと答えます。
その頃公文書館に侵入したクリストファーは過去のグッチの資料からシャロンそっくりの写真をみつけ、彼女を引き取った養護施設へと向かいます。
そしてそこでグッチに捕まり、グッチは両手の火傷の痕を見せて30年前の火災の際に狂信者たちがアレッサに酷いことをした事、過去を探るのをやめるよう告げました。
【転】サイレントヒル のあらすじ③
病院にやってきたローズたちは、壁の地図を覚えるよう言われます。
そしてB151という部屋に悪魔がいると教えられます。
しかしクリスタベラがローズのロケットの写真を見てしまい、ローズの娘がアレッサに瓜二つであるとバレてしまいます。
ローズは魔女だ、悪魔の元に行かせるなと部下に捕らえさせようとしますが、シビルが銃を構え、ローズをエレベーターに乗せました。
「必ず見つけるのよ」と言い残しエレベーターの扉を閉め、そのままローズ一人を乗せたエレベーターは落下し始めます。
シビルは部下に叩きのめされ、捕まってしまいます。
記憶を頼りに地下を進むローズの目の前に、ナースの格好の異形が無数に立ちふさがります。
しかし光に反応する性質を利用してなんとか潜り抜けます。
廊下の奥の部屋を開けた途端まぶしい光と共に少女の声がします。
「おめでとうローズ、ゴールよ」という声はそのままアレッサにまつわる真実を語り始めます。
父親がいないことで疎まれ魔女扱いされるアレッサを、叔母のクリスタベラも嫌悪していました。
妹のダリアに父親は誰か問いますがダリアは言わず、クリスタベラは「娘は魔女だ、穢れを祓え」と迫り、疲れ果てたダリアはホテルで行われた悪魔祓いにアレッサを連れて行ってしまいました。
火炙りの儀式の最中、事故が起こり、辺りが火に包まれ火災が起こりました。
火傷を負いながら救助したグッチによって病院に運ばれたアレッサは痛みと恐怖に苦しみ、それが憎悪に膨れ上がった時、悪魔・ダークアレッサがうまれたのです。
善の部分に分かれたアレッサは養護施設に預けられ、シャロンとして生きてきたのです。
何が望みかと問われ、アレッサは復讐するために真実を広めてほしいと頼み、ローズの体に溶け込みます。
傍らにはベッドに横たわる焼け爛れた大人のアレッサの姿がありました。
その頃、ダリアの家に匿われていたシャロンは、クリスタベラたちに捕まってしまいます。
【結】サイレントヒル のあらすじ④
釈放されたクリストファーは、グッチからシビルが過去に身を挺して子供を救った事件の話を聞き、捜索は任せろと言います。
その頃教会では嫌がるシャロンの傍らで火炙りの準備が進められ、ダリアが必死に止めるよう嘆願していました。
しかしクリスタベラはアレッサに瓜二つのシャロンを悪魔だと決め付けます。
恐怖するシャロンを宥め励ますシビルのことも悪魔の仲間と言い、シビルは火炙りにされてしまいます。
笑い囃し立てる人々の声の中で、シビルは「母さんそばにいて」と言い残し息絶えます。
次はシャロンの番という瞬間ローズが教会に現れます。
ローズは信者たちに殴られながらも真実を語れ、罪に塗れているのはお前だとクリスタベラに迫り、ついにナイフで刺され倒れます。
しかしその切っ先から血が滴り落ちると辺りがボロボロに剥がれだし、床が抜け落ちていきます。
立ち上がったローズの後ろから蠢く有刺鉄線に持ち上げられたベッドが現れ、焼け爛れたアレッサが姿を現します。
クリスタベラが有刺鉄線に捕まり、悲鳴を上げながら真っ二つにされます。
その血を浴びながらアレッサが嬉しそうに踊ります。
次々に信者が殺されていく中、ローズに助け出されたシャロンは、目の前に現れ顔を覗き込むアレッサの姿に驚き気絶します。
全てが終わり、ダリアだけが残されていました。
何故自分だけが残ったのかと呟く彼女にローズは「母だから」「子供にとっては神と同じ」と答えます。
車に乗り込み家路に着くローズは家の留守電にメッセージを入れます。
家にいたクリストファーは急いで電話を取りますが、電話からはノイズしか聞こえませんでした。
行きとは違いどこまでも薄暗く霧が続く中、ローズとシャロンが帰り着いた家は誰もいませんでした。
そこは、落胆するクリストファーが横たわる晴天の家とは違う異次元のものになっていたのです。
サイレントヒル を観た感想
※文体は「です・ます」調に統一して下さい。
====================ホラーゲームの名作であるサイレントヒル。
本作はその1と2を混ぜたような設定ですので、ゲームとはシナリオが違います。
アレッサにまつわる大筋は同じですが主人公は母親となっており、それがアレッサとダリアとの対比ともなっています。
クリーチャーたちの気持ち悪さ、三角頭(レッド・ピラミッド)に対する恐怖感などとてもうまく表現されており、映画を観ているとずっと悪夢の中を彷徨っているような感覚に陥ります。
凄惨で悲劇的なアレッサの過去シーンは、いつのまにか自分がアレッサの中に入り込んでいくような錯覚さえ覚えます。
固く封をされた過去をこじ開け、復讐を果たすためアレッサがシャロンを呼んだことはわかりますが、来てくれるような良い養父母に迎えられるよう、善の部分だけを切り離して施設に預けたのだとしたら…。
アレッサの怨嗟の深さ、その周到さに思わず身震いしてしまいます。
私一押しだったシビルが悲しい最期を迎えた時口にした母への言葉は、思わず胸に来ました。
本作のテーマの大きな要素であろう「母」という存在の大きさは、思わず縋りたくなると言う意味において、正に神と同義なのだろうとしんみり感じます。
最後の救いが明瞭でない点も、このサイレントヒルという作品においては美点と感じました。
常に暗く鬱蒼と霧がかかる画面。
美しく物悲しい音楽。
全てが素晴らしくマッチしていて完成度の高い作品だと思います。
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