監督:デヴィット・フランケル 日本公開2017年2月25日にワーナー・ブラザースから配給
素晴らしきかな、人生の主要登場人物
ハワード(ウィル・スミス)
広告代理店の敏腕社長。娘が死亡して以来、人生に対して悲観している。
ホイット(エドワード・ノートン)
ハワードと共同経営で、「ヤードシャム・インフレット社」を設立。ハワードの身を案じ、彼に探偵による監視を依頼する。
エイミー(キーラ・ナイトレイ)
劇団員の女性。高い演技力に加え、人を想いやる優しい心を兼ね備えた人物。
素晴らしきかな、人生 の簡単なあらすじ
ニューヨークの広告代理店の経営者ハワードは、家族に囲まれ仕事も順調な絵に描いたような幸せな人生を歩んでいましたが、娘が病死したことで自堕落な生活に突入します。
共同経営者であるホイットと、会社幹部であるクレアとサイモンは彼を心配し、完全に自身の殻に閉じこもったハワードに再び蘇生させるため、ある奇策を実行します。
素晴らしきかな、人生 の起承転結
【起】素晴らしきかな、人生 のあらすじ①
ニューヨークの広告代理店「ヤードシャム・インフレット」社は、過去最高の売上を記録し、正に順風満帆な状態でした。
経営者のハワードは、「死」・「時間」・「愛」、この3つの抽象的な存在を経営理念とし、人生に置いても仕事に置いても重要だと社員一同に力説します。
しかし、それから3年後、最愛の娘を亡くしたハワードは自暴自棄になり、世捨て人のように脱け殻の状態で自堕落な生活を送っているのでした。
彼の右腕、ホイットはそんな彼に色々話しかけますが全く返事もなく、経営状態が悪化した報告すらまともに取り合ってくれません。
ハワードのコネで大口の取引先となったクライアント達は、そんなハワードを見かねて、取引から手を引く姿勢を見せ始め、会社を倒産させないために買収の話まで出始めます。
ホイット・クレア・サイモン達、ハワードの直属の部下達は、買収の話を進めるのと平行して、ハワードが取締役会の議決権を行使することが困難な状態である証拠を押さえるため、探偵を雇い彼を監視させます。
ハワードは犬も飼っていないのにドッグパークに何時間も居座ったり、自転車で車道を逆走するなど、行動面でも苛立ちが目立ち始め、一人娘を亡くした哀しみから立ち直れる様子がありません。
彼を監視していた探偵いわく、彼はこうした奇行以外にも、郵便ポストに「死」・「時間」・「愛」の、かつて自分が信じていたこれらの抽象概念宛に怒りと哀しみをつづった手紙を出しているとのことでした。
【承】素晴らしきかな、人生 のあらすじ②
ある日、ホイットは社内で出会ったエイミーに、船旅会社のキャッチコピーを提案され、「殻を脱いで人生を変えよう。」
というその響きに感銘を受け、そのアイデアを採用します。
彼女ともっと会話を交わそうとするホイットでしたが、エイミーはその後足早に会社を去っていきます。
彼女を追いかけ、着いた先は古ぼけた劇場で、エイミーはそこの劇団員でした。
劇場では、ブリジットとラフィの2人の劇団員が台本の読み上げをしており、遅れてきたエイミーがそこに加わります。
その芝居をしばらく静聴していたホイットは、彼らの演技力を高く評価し、ハワードを立ち直らせるあるアイデアを思い付きます。
エイミー達に今ハワードを苦しめている「死」・「時間」・「愛」を演じてもらい、抽象的な存在と直接コミュニケーションを取らせて「殻を脱いで人生を変えよう。」
というアイデアで、成功報酬としてそれぞれに2万ドルを支払う取引を行います。
ホイットの母親は、脳卒中による影響から幻覚が見えるようになっており、ホイットとも会話も成立しない毎日でした。
しかし、友人から「自分のではなく、彼女のリアルに合わせれば上手くいく。」
とアドバイスされ、実行した結果母親もホイットもストレスから解放され、お互いのすれ違いが発生することもありません。
現実逃避を繰り返す現在のハワードに、「リアル」と向き合わせるため、ホイットはクレアとサイモンにこのアイデアを提案します。
そして、「ハワードにしか見えない存在という設定」を条件とし、劇団員達に直接依頼しますが、エイミーはかえって彼を傷付けてしまうのではと、難色を示します。
しかし、現状を変えたいホイット達の熱心な説得もあり結果的に了承します。
【転】素晴らしきかな、人生 のあらすじ③
それぞれの配役も決まり、まずは「死」担当のブリジットがハワードに接触を試みます。
二人の会話の最中、リアリティーを出すためにサイモンが仕掛けた子供が「このおじさん、誰としゃべっているの?」とつぶやいたことで、ハワードはブリジットが自分にしか認識出来ていないと錯覚しますが、唐突の出来事に怒ったハワードは帰ってしまいます。
一方、グループセラピー「小さな翼の会」の会合に出席したハワードは、悲劇のショックから娘の名前すら未だに口にすることが難しい状態です。
主催者のマデリンは、ハワードに無理に会話させることもせず、自身にも多形性膠芽腫という脳腫瘍の一種で亡くした娘がいたことを打ち明けます。
次に会社のオフィスにて「時間」担当のラフィ、レストランにて「愛」担当のエイミーがハワードに接近し、そのかいもあって彼を徐々に「死」・「時間」・「愛」と対峙させます。
ホイット達は、ハワードとエイミー達のやり取りを録画するため、契約の延長を申し出ますが、エイミーは道徳的に間違っていると反発し、申し出を断ります。
動画編集でエイミー達の姿を消し、ハワードが一人でしゃべっている場面を記録すれば、議決権を行使することが困難な状態に、より信憑性が増すためです。
ハワードはマデリンの元へと出向き、「死」・「時間」・「愛」の姿が幻覚として見えることを話し、彼女はそれを否定せず聞き入れます。
次にマデリンが自分の娘が死亡した際に遭遇したある女性とのエピソードを語り始めます。
その女性は、マデリンに「幸せのオマケが訪れるから、娘の死を見逃さないで。
」と言いますが、マデリンはその時はその言葉の意味が理解出来ませんでした。
時が経った今では、友人達の支えやかけがえのない思い出など、数々の娘の「置き土産」こそが「幸せのオマケ」だと理解出来たとハワードに伝えますが、自分の娘の死を未だに受け入れられない彼にはその話は通用しませんでした。
【結】素晴らしきかな、人生 のあらすじ④
一方で、ホイット・クレア・サイモン達も悩みを抱えていました。
ホイットは自身の不倫が原因で娘から軽蔑され、クレアは家庭を築きたい一心がありながらもキャリアを優先させたため、出産が難しい年齢に差し掛かり、サイモンは子供が誕生する直前に難病が発症し、タイムリミットが迫っていました。
ホイットは、エイミーに依頼継続を提案し、娘と仲直りをすることを条件に提案を了承します。
ハワードに「死」・「時間」・「愛」と向き合うことを提案しますが、ハワードはそれを否定します。
そして、エイミー達はハワードの前に再び「死」・「時間」・「愛」の姿として現れ、ハワードは彼らに感情的に思いの丈をぶつけます。
動画編集により、エイミー達の姿が消されたその様子が取締役会で上映され、事情を知らない他の役員達は困惑するなか、ハワードは重たい口を開き、ホイット・クレア・サイモン達に日頃の感謝の気持ちを伝え、売却の書類と娘の死亡証明書にサインをして、その場から去ります。
クレアはラフィに報酬を渡す際、妊娠が難しくても里親になることで母親になれると励まし、ホイットは娘と仲直りが出来るチャンスを得、サイモンは病気のことを妻に打ち明けるも既に知っていた様子で、悲観に暮れず前向きに生きると決意するのでした。
そして、ハワードはマデリンに会いに行き、そこで再生されていた映像には、ハワードが写っていました。
実は二人は元夫婦で、娘の死後離婚していたのでした。
そこで初めて娘のオリビアの死を受け入れ、マデリンに病気によってわずか6歳でこの世から去ったことを伝えます。
マデリンは、そんなハワードを優しく抱きしめ夫婦として再スタートを切り、二人が公園を歩いている中、「死」・「時間」・「愛」の姿で現れたエイミー達に見守られながら、新たな人生へと歩み始めるのでした。
素晴らしきかな、人生 を観た感想
ストーリーの中心となる「死」・「時間」・「愛」は、当たり前のように現実世界に存在するものです。
誰にでも訪れる「死」は唐突に訪れ、時には無慈悲にも別の世界へと連れ去り、平等に与えられた「時間」によるタイムリミットは、漠然と消費では生きることの有り難みを実感することは出来ません。
ストーリーでも語られていた通り、「愛」は様々な形で人生に潜んでいますが、そのことを忘れがちです。
この作品はつい蔑ろにしがちな、生きていく上で大切なこれら概念の大切さを再認識してくれる作品で、感情移入せざるを得ません。
また、ウィル・スミスを筆頭に、脇を固めるエドワード・ノートンら実力派俳優達による演技も観るものの感情を揺さぶり、自然と自分自身と重ね合わせてしまいます。
人生で大切なことは何かを教えてくれる、優しい作品です。
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