監督:マーティン・スコセッシ 日本公開1984年5月に松竹富士から配給
キング・オブ・コメディの主要登場人物
ルパート・パプキン(ロバート・デ・ニーロ)
コメディアン志望で妄想癖が顕著な男。人気コメディアンのジェリーにしつこく付き纏う。
ジェリー・ラングフォード(ジェリー・ルイス)
全米中で人気のコメディアン。忙しすぎる毎日に疲弊している。
リタ・キーン(ダイアン・アボット)
ルパートの学生時代の同級生。彼女もまたルパートの妄想に振り回される。
マーシャ(サンドラ・バーンハード)
ジェリーの熱狂的ファン。ルパートと共に彼の誘拐を実行。
キャシー・ロング(シェリー・ハック)
ジェリーの秘書。ルパートにジェリーとの面会をしつこく迫られる。
キング・オブ・コメディ の簡単なあらすじ
マーティン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロのコンビによる、妄信的で留まることの無い自己肯定に溺れた一人の男の顛末を描いた作品です。
コメディ志望のルパートは、憧れの的である人気司会者ジェリーに、自身の才能を認めてもらおうと彼に接触します。
妄想と現実が交差する中、なかなかコメディアンとしての道が拓かれない彼は、自身の才能を世に知らしめるために、手段を選ばず誘拐事件を起こします。
キング・オブ・コメディ の起承転結
【起】キング・オブ・コメディ のあらすじ①
コメディアン志望のルパート・パプキンはある日、TV収録終わりのジェリー・ラングフォードとの接触を試みます。
有名司会者で、全米に名が知れ渡っている彼の協力があれば、自分にもチャンスが巡ってくると考えたからです。
ジェリーは、出待ちの熱狂的なファンから揉みくちゃにされ、TV局前に停めた車に乗り込むのも困難なほど人気者で、警備員の護衛の下、ようやく車内に乗り込んでもファンによる狂信的とも言えるアプローチに、笑顔で応対しつつも内心疲弊していました。
ルパートは、そんなファン達を捌き、ジェリーの安全面を確保しますが自身も車に乗り込み、その場で売り込みを開始します。
芸風やトーク力に自信のあった彼は、意気揚々と売り込みますが、ジェリーは困惑した様子でした。
自宅のマンションに到着するまでの間、ルパートの空回りとも言えるアプローチが続き、ジェリーが所属する事務所に改めて来るようにと、伝えます。
しかし、それは社交辞令でルパートの売り込みを回避するための嘘でしたが、ルパートは遂に自分にもチャンスが到来したと有頂天になります。
【承】キング・オブ・コメディ のあらすじ②
その後のルパートは、ジェリーを越えるスターになった自分を妄想したり、バーを経営するかつての高校時代の同級生リタに自慢したりするなど、気分はかなりハイになり、自宅でのコメディ番組の収録を想定した練習にも熱心に取り組む日々を送っていました。
そして、ジェリーが所属する事務所に押し掛けますが、受付で「アポ無しのため、会わせることが出来ない。」
と伝えられ、それならばとジェリーが事務所に帰ってくるのを待ち続けようとします。
しつこくジェリーとコンタクトを取ろうとするルパートを見かねた受付の係員は、ジェリーの秘書であるキャシーを寄越し、彼の代わりにルパートの用件を聞き付けます。
ルパートは、「ジェリーの代役でTV出演を頼まれた。」
と言いますが、これは彼の妄想での話で、実際にした約束ではありません。
キャシーは、そんな得体の知れない彼の主張を真に受けることもなく、自身の芸を吹き込んだテープを持って、改めて事務所に来るように伝えます。
その言葉を聞いてようやく気が済んだルパートは、事務所を後にするのでした。
【転】キング・オブ・コメディ のあらすじ③
事務所から出たルパートは、ジェリーに手紙を渡そうと張り込んでいたマーシャと遭遇します。
もうすぐ人気者になると確信していたルパートは、マーシャがただの異常な追っかけに過ぎないと主張し、二人は街中であるにも関わらず激しく口論します。
しかし、ルパートの方も妄信的であるだけで、夢が叶いそうだと確信しているのも勝手な思い込みでした。
それからルパートは、キャシーに言われた通りに、有名スターの等身大のパネルやスタジオを模した自宅の部屋で熱心にテープに芸を吹き込み、妄想を更に加速させます。
そして、事務所に来訪し、テープをキャシーに渡します。
結果を聞く前からルパートは既に有頂天になっており、ジェリーがルパートの才能を大絶賛する姿や、リタと結婚し挙式の場で学生時代の校長に才能を高く評価されるなどの妄想を膨らまし、一方的で病的とまで言える思い込みの世界に浸ります。
全ては想像内だけの話で、ルパートは妄想と現実の境目が見えなくなっている状態です。
【結】キング・オブ・コメディ のあらすじ④
テープの感想を聞きに事務所を訪れた彼は、「才能はあるけど地道に努力するべき。」
とキャシーに伝えられます。
納得のいかないルパートは、ジェリーの口から感想を聞くべく、ロビーで待ち続けようとしますが、警備員によって追い出されます。
外で会ったマーシャに、「ジェリーは、オフィスにいるはず。」
と聞かされ、今度はオフィス内に強引に入っていきますが、再び追い出されます。
それでもルパートの妄想は留まらず、リタを連れてジェリーの別荘に訪れるなど、徹底的に彼に自身の売り込みをします。
いい加減に堪忍袋の緒が切れたジェリーは、「最初の車内での連絡の約束もただの口約束で、追い払うために言ったことだ。」
と感情的に言い放ちます。
この言葉に吹っ切れたルパートは、後日マーシャと共謀し、ジェリー誘拐を企てます。
実行に移し、ジェリーを誘拐してTV局や事務所のスタッフなどに電話で、ジェリーの看板番組にルパートを起用するように伝えさせます。
スタジオ入りしたルパートは収録を終え、リタが経営するバーを訪れ、店内のTVで自身が出演した姿を見せると、予め張り込んでいたFBIに逮捕され、一方のマーシャは、ジェリーに求愛するもののアッサリ逃げられるなど、自由で身勝手な妄想とは違い覆ることの無い現実に直面していました。
しかし、その後この誘拐事件はマスコミでも大きく取り上げられ、各種新聞の一面を飾り、自伝がベストセラーになるなど、数年の懲役を終えたルパートは、それまでとは打って変わって、全米中が注目する大スターになるのでした。
キング・オブ・コメディ を観た感想
狂気的とも言えるほど自己主張を押し通し、最終的に自身の夢を叶えてしまうルパートに、捻くれた純粋性を感じました。
ラストで彼の悲願は達成されますが、もしかするとそれも彼の妄想の話で、ただ強烈に思い込みが強いだけの人物だけだったのかも知れませんが、サーシャも含めて自身の願望に対してここまで正直に、一切妥協せずに成し遂げる姿は、ある意味羨ましいとも思いました。
ロバート・デ・ニーロの演技力も素晴らしく、妄想と現実の境目が破綻した人物を見事に演じ切っています。
やはり、スコセッシ監督とのコンビで発表される作品は最高です。
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