著者:東野圭吾 2016年4月に例)集英社から出版
夢幻花の主要登場人物
蒲生 蒼太(がもう そうた)
主人公 出来の良い兄に劣等感をいだく大学生。昔、秋山周治に万引冤罪から救ってもらっている。
伊庭 孝美(いば たかみ)
主人公の初恋の人。
秋山 周治(あきやま しゅうじ)
花を愛でながら余生を送る老人。
秋山 梨乃(あきやま りの)
周治の孫。
鳥井 尚人(とりい なおと)
梨乃の従兄弟。バンドマンとして活躍していたが突然自殺しこの世を去ってしまった。
夢幻花 の簡単なあらすじ
花を生業とし、余生でも花を愛でながら一人暮らしを送っていた老人・秋山周治が殺された。
第一発見者の孫・莉乃は、祖父が大事にしていた花の一つが紛失していることに気づきブログにアップする。
出来のいい兄と比較されていた蒲生蒼太。
兄の言動を追ううちに莉乃と知り合い、なぜ花がなくなったのか、周治はなぜ殺されたのか、兄がどう関与しているのか、理由を追う。
夢幻花 の起承転結
【起】夢幻花 のあらすじ①
秋山莉乃の血縁が立て続けに2人も亡くなってしまいます。
1人は従兄弟の尚人。
何をやらせても人並み以上にこなし、学校の成績は抜群、絵の才能もありスポーツも万能でした。
そんな彼が職業として選んだバンドマンとしての道。
代表曲が人気となり、プロを目指す決断を下した直後に自殺してしまいます。
理由は誰にも分からないままでした。
もう一人は祖父の周治。
水泳選手として活躍していた莉乃を陰ながら応援し、挫折した時も静かに見守ってくれていた周治。
新種の花を作る研究を生業とし、定年後も花を愛でながら暮らしていました。
莉乃はそれをブログにアップしていましたが、ある日、黄色く咲いた花をアップしようとしたところ周治に強く止められてしまいます。
その理由もわからぬまま、周治はある日死んでしまったのです。
葬儀も終わり、しばらく花に水をやれていない事を思い出した莉乃は周治の家へ向かい、そこで、黄色い花の鉢植えが消えている事に気づきます。
周治の死に何か関係があるのでは、と疑う莉乃は手がかりを掴むため、止められていた黄色い花をブログにアップしてしまいます。
そこから大きく進展していくのです。
【承】夢幻花 のあらすじ②
毎年家族で参加している、朝顔市に参加した蒲生蒼太。
14歳の彼は家族で参加するという事に面倒臭さを感じ、また父と兄だけに流れる空気が嫌になり一人別行動をします。
そんな時に出会った、伊庭孝美に一目惚れしパソコンでのやりとりから、定期的に会い仲を深めていました。
しかし、その日々は唐突に終わりを告げることになります。
蒼太の父親に孝美の存在を知られ、関係を終わらせるよう一方的に告げられてしまうのです。
納得の行かない蒼太は孝美に連絡をするがいつまでたっても返信はきません。
焦った蒼太が電話をかけると、今まで親しく名前を呼んでくれていた孝美は、蒼太を苗字で呼ぶようになり、もう蒼太との全てを終わりにすると告げるのです。
親への反抗心を抱えたまま年月を重ね、父は亡くなり蒼太は実家から遠く離れた大学へ進学します。
そして父の三回忌を機に、地元へ帰省してきます。
そこで出会うのが、秋山莉乃です。
なぜか、蒼太の兄・要介は身分を偽って莉乃に接触していました。
【転】夢幻花 のあらすじ③
毎年、朝顔市に顔を出していた蒼太は、黄色い花を朝顔ではないかと推測します。
しかし黄色い朝顔は絶滅したはずの花種でした。
調べを進めると、黄色い朝顔は「ムゲンバナ」夢幻の花。
追い求めると身を滅ぼすとと呼ばれ、復活させてはいけないと言われていることがわかりました。
そんな中、莉乃に付き合ってライブを蒼太はライブを見に行きます。
自殺した莉乃の従兄弟、尚人が所属していたバンドが新メンバーを追加し活動を再開していたのです。
しかし、そこにいた新メンバーはかつての初恋の相手。
伊庭孝美でした。
蒼太に気づいた伊庭孝美は、行方をくらましてしまいます。
不審に思った蒼太が彼女が加入した経緯を探っていくとなんと黄色い朝顔が絡んでいることがわかってきました。
夢幻花とは、幻覚作用をもたらす植物の総称でした。
黄色い朝顔の種には強力な幻覚作用があったのです。
その作用により代表曲を作ることができた尚人は、より良い曲を作るためによりたくさんの種が必要でした。
そのため、メンバーの雅哉と共に、花の研究をしていた周治に黄色い朝顔を復活させるよう依頼していました。
しかし復活する前に尚人は、その幻覚作用により自殺をしてしまったのです。
不審に思った周治は種の秘密に気づき警察に通報しようとします。
焦った雅哉が周治を殺害してしまったのです。
【結】夢幻花 のあらすじ④
雅哉の逮捕後、蒼太は兄・要介に呼び出されます。
そこで、蒲生家と黄色い朝顔についての繋がりを聞きます。
代々警察一家の蒲生家。
蒼太たちの祖父が捜査一課長だった頃、薬物中毒によるものと思われる惨殺事件が発生しました。
一課長だった祖父は、自宅捜索の果てに黄色い朝顔を発見します。
より詳しく捜査しようとしましたが上からの圧力により関与を許されませんでした。
実は、江戸時代から黄色い朝顔の幻覚作用は知られており、幕府は裏ビジネスが生まれないように種を回収し回っていました。
ただ絶滅させるために回収していたのではなく、秘密裏に栽培をしその幻覚作用を有効活用させようとしていたのです。
しかし幕府は頓挫しその種は現在の警察が預かることになりました。
そこで、警察は自白剤として活用しようと考えます。
ある医学者に依頼しましたがあまりの危険性の高さに断念し、種は厳重に保管されることとなりました。
しかし、物事には完全などなく種がどこかしらから漏れ、惨殺事件が発生してしまったのです。
警察は隠蔽のため、蒼太の祖父に捜査をさせないよう圧力をかけたのでした。
しかし、今後もこのような事件が怒る可能性があると考えた祖父は自分の息子にも引き継ぎ、黄色い朝顔を監視するようにしていました。
その息子(蒼太たちの父)も自らの息子、要介に引き継ぎ、毎年朝顔市へ出向いていたのです。
伊庭孝美は、医学者の子孫でした。
孝美は幻覚作用について科学的に解明したいという思いから、バンドにも忍び込んでいたのでした。
今まで不審に思っていた家族間の謎もとけた蒼太は自身の将来を明るく考えることができるようになるのでした。
夢幻花 を読んだ読書感想
様々なエピソードが並行して進んでいきます。
こんがらがりそうになったところで、黄色い朝顔というものがキーワードになっていることに気づくと、そこからは読むペースもどんどん早くなり、あっという間に物語に引き込まれてしまいました。
誰もが持つ二面性があり、他人から見ると羨ましく見える才能も本人にとってはこれだけしかないと思う部分があり、人間臭さにも共感しながら読み進めることができます。
推理で解決していく蒼太と行動で解決していく莉乃。
読みながら、自分だったらどちらのタイプかなと当てはめていくとより楽しく物語を読み進められます。
紹介では書ききれなかった伏線がまだまだ出てきます。
最後はそれが全て解け、爽快感があるのでぜひ読んでみていただきたいです。
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