【ネタバレ有り】天と地の守り人 第三部 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:上橋菜穂子 2007年3月に偕成社から出版
天と地の守り人 第三部の主要登場人物
バルサ(ばるさ)
守り人シリーズの主人公。短槍使いのバルサとして有名な女用心棒。
チャグム(ちゃぐむ)
新ヨゴ皇国の皇太子。死んだと思われていたが、ロタ王国、カンバル王国との同盟を成立させ援軍を率いて新ヨゴ皇国を救う為に戻ってくる。
タンダ(たんだ)
薬草師で呪術師トロガイの弟子。新ヨゴ皇国の草兵となり戦場に出る。
トロガイ(とろがい)
当代随一と言われる呪術師の老婆。
シュガ(しゅが)
星読博士でチャグムの教育係。トロガイに弟子入りして呪術も学んでいた。
天と地の守り人 第三部 の簡単なあらすじ
バルサは山から迫り来る自然の驚異について警告する為に新ヨゴへと戻ってきましたが、トロガイは既に危険を察知しており山の村人達に準備をさせていました。
しかし、都の人を動かすのは難しい為、何とかシュガに連絡を取ろうとします。
また、新ヨゴ皇国にタルシュ帝国が侵攻してきていよいよ戦争が始まろうとしていました。
草兵となったタンダは怯えながらも戦いに巻き込まれてしまいます。
バルサ、チャグム、タンダ達の冒険の結末はどうなってしまうのでしょうか。
天と地の守り人 第三部 の起承転結
【起】天と地の守り人 第三部 のあらすじ①
タルシュ帝国では皇帝が亡くなり、ハザール王子の宰相が1つの計略を仕掛けます。
ラウル王子の密偵ヒュウゴは反乱分子が出て来ていると警告しますが、報告が遅れたことに対してラウルは怒りヒュウゴを投獄します。
実はヒュウゴこそが反乱分子のリーダーでしたが、ラウルの目を逃れる為に反乱が起きるタイミングでは牢の中にいようと決めていたのでした。
ヒュウゴは自身の計画通りに事が進み、チャグムがロタとカンバルの同盟を成立させたことから賭けに出たのでした。
新ヨゴ皇国へと戻ったバルサはタンダの家へ行きますが、不在で近くに住む老夫婦に話を聞こうとします。
しかし、そこにトロガイが現れタンダが草兵となり今はタルシュ帝国との緒戦が行われるタラノ平野にいると聞かされます。
新ヨゴに迫る自然災害については既にトロガイも気づいて対策を進めていました。
バルサはタンダの身を案じてタラノ平野へと向かおうとしますが、所々道が閉鎖されている為に四路街の近くに出てしまい寄り道をすることにします。
四路街の門には護衛士たちが集まって警備しており、そこで知り合いの商人トウノと出会います。
トウノから新ヨゴとタルシュの緒戦の情報を聞くと、新ヨゴは惨敗し生き残りは撤退し怪我人はタラノ平野に置き去りにされたということでした。
四路街ではタルシュが街に攻めてきた場合の対策会議が開かれますが、街程度が軍に勝てる訳もなく良い案が出ません。
バルサは荷物と食糧を持ってロタへ逃げた方が良いと提案し、街の護衛士全員で協力して国境越えに挑むこととなります。
タラノ平野での戦闘で勝利したタルシュ軍は既に四路街近くに侵攻してきており、街の住民達は急いで逃げますが、タルシュに攻められる前に新ヨゴ皇国軍によって食糧を強奪され火を放たれます。
【承】天と地の守り人 第三部 のあらすじ②
四路街から逃げ延びた一団は国境を越えてロタ王国へと入りしばらく進むと大勢の兵士と出会います。
兵士はロタとカンバルの混成軍でしたが、その軍を率いていたのは驚く事に死んだはずの新ヨゴ皇国の皇太子チャグムでした。
チャグムは新ヨゴの現状を確認すると兵を率いて新ヨゴへと行進していきました。
ロタ王国の密偵カシャルが協力して空から偵察を行ってくれ、タルシュ帝国軍の動きが手に取るように分かります。
チャグムは新ヨゴの砦を攻めているタルシュ軍に背後から奇襲をかけ、新ヨゴ軍と挟み撃ちにします。
タルシュ帝国も奇襲に対して対応しようとしますが、敵の陣形の変化を確認したチャグムは先頭に立って敵軍に突撃をかけていきます。
タラノ平野へと向かったバルサは、盗賊に襲われていた地元民を助けると負傷兵を匿っている場所を尋ねます。
負傷兵はほとんど死んで数が少なくなったものの、近くの洞窟に二百人ほどいると言われます。
バルサは洞窟の中で一人一人顔を確認していくと、傷ついて意識を失ったタンダを発見します。
しかし、薬草師の老人によると左腕の傷が酷くて腐ってきており、あと一日か二日しかもたないだろうと言うことです。
腕を切り落とせば助かるかもしれないと聞くと、バルサは自らタンダの腕を切り落として治療することにします。
トロガイは仲間の呪術師と集まり大水への対策について話し合い、いざと言う時には秘術を使うと宣言します。
トロガイの師匠が使って命を落とした術は、新ヨゴの全ての村に危険を知らせることの出来る大技ですが、いかにトロガイであっても生き残れる保証はありません。
また、都のシュガには夢を使って危険を知らせます。
シュガは初代聖導師ナナイが残した石版を読み、天を見ることで天災を防げると気づきます。
【転】天と地の守り人 第三部 のあらすじ③
シュガはタルシュと通じている副将カリョウと相談し、帝を早めに殺して民に天災を警告する事にします。
既に敗戦の色が濃厚な宮廷内は沈みきっており、帝が神の力で国を救ってくれることだけを願っていました。
帝が朝の儀礼で祝詞を述べた後、伝令が入り帝はヤズノ砦の戦いで新ヨゴ軍がチャグムの援軍により勝利したと告げます。
シュガは夢を見ているのではないかと疑う程に驚き、重臣達は複雑な表情になります。
チャグムはロタとカンバルの騎兵を率いて都に戻り、群集の歓喜の声に包まれながら宮廷へとやって来ます。
苦難を乗り越えてきたチャグムの顔つきは殺伐としたものになっており、穢れを知らない帝とは似ても似つかぬものでした。
チャグムは戦いで汚れた姿のまま謁見の間へと進み、帝に国を救うよう進言します。
また、都には大水が迫っているため民を高台に逃がすようにと話すと、帝はシュガに本当に天災の予兆があるのか尋ねます。
シュガはこれまで天災の予兆を見逃していたことを申し出て、星読博士の間では川の水位が上がってきていることも確認出来ていると報告します。
帝は穢れなき国の象徴として都に残ると決め、チャグムには民を高台に逃したければ勝手にしろと告げます。
もし本当に大水で都が流されてしまうのならばそれも天が成したことととして帝は受け入れる覚悟を決め、生き残った民達を救い導いていく役割をチャグムに託したのでした。
チャグムは戦いで怪我をしておりシュガが話を聞きながら手当をしていると、陸軍大将ラドウが拝謁を願ってきます。
ラドウは軍総帥のしるしである金色の剣を渡すふりをしてチャグムに襲い掛かります。
チャグムはすんでのところで身をかわし、カリョウがラドウを切り捨てます。
シュガはロタ、カンバルの将とカリョウを集め作戦会議をします。
【結】天と地の守り人 第三部 のあらすじ④
トロガイは山に籠り秘術の準備を進め、仲間からの警告が届くと無数の光の鳥を作り出して国中に飛ばします。
国中の者に危険を伝えた後、僅かに精気が残りトロガイは師匠と違い何とか生き残ることが出来ました。
チャグムは暗殺未遂以来寝込んでいましたが、夢の中で異世界に迷い込むと大水が流れて来て都が流されるのを見ます。
目が覚めると既にタルシュとの最後の戦が始まっていました。
シュガはトロガイの術と思しき光の鳥を見ると兵士に退却命令を出し、北国連合軍が引いた所で大水が流れて来てタルシュ軍を飲み込みます。
惨敗したタルシュ軍は降伏し、戦争は終わりました。
タルシュ帝国では次期皇帝の条件として枝国の支配状況を報告する事になりますが、ラウル王子の支配国では反乱が起きており重要な書類が焼かれていました。
また北国の侵攻も失敗しかけており、ラウルは怒り狂ってヒュウゴを牢から呼び出します。
ヒュウゴは枝国は不満を抱えており、北国を攻めるのをやめて枝国から徴兵した兵士を国に戻せば解決すると進言します。
こうしてタルシュ帝国の北方侵略は終わりを迎えました。
タンダは未だ生死の境を彷徨っていましたが、バルサが付きっきりで看病した結果、目を覚まして洞窟の外へと出ることができるようになります。
戦後、チャグムは帝になる事が決定し新たな都を安全な場所に建造する事を決めます。
チャグムはいつか帝を無くす為に、これまでの新ヨゴのやり方を少しづつ変えていく事にします。
これまで帝位争いの為に仲良くすることもままならなかった妹や弟とも分け隔てなく過ごすことが出来るようになり、チャグムは新しい形の帝として国を治めていくこととなります。
天と地の守り人 第三部 を読んだ読書感想
本作は守り人・旅人シリーズの第7作目であり、シリーズ完結編となる作品です。
長大な物語であるため、三部構成となっておりこの第三部では新ヨゴ皇国でいよいよタルシュ帝国との戦争に突入し、全ての物語が完結します。
タルシュ帝国から国と大水という大災害の大きな2つの問題から新ヨゴ皇国を守るため、バルサ、タンダ、チャグム、トロガイ、シュガ達が奮闘します。
最後は一市民であるバルサやタンダには出来ることは少なくなり、最も活躍するのは皇太子であるチャグムとなりますが、それぞれがそれぞれにできることを成し遂げ、何とか国が守られます。
タイトルの天と地の守り人の役割を果たすのはトロガイとシュガではありますが、シリーズを通して活躍してきたバルサやチャグムの物語の終わりでもありますのでとても読み応えのある作品でした。
また、タルシュ帝国ではヒュウゴが自身の計画を成し遂げ、母国のヨゴを含む枝国の民の暮らしを改善するようにラウルが治世を改めていくこととなります。
最後は丸く収まったように思えますし、タルシュ帝国もこれから変わっていくような印象を受け、この後の世界は良くなっていくのではないかなと思える終わり方でした。
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