「昨日がなければ明日もない」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|宮部みゆき

宮部みゆき「昨日がなければ明日もない」

【ネタバレ有り】昨日がなければ明日もない のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:宮部みゆき 2018年11月に文藝春秋から出版

昨日がなければ明日もないの主要登場人物

杉村三郎(すぎむらさぶろう)
杉村三郎シリーズの主人公。私立探偵を営んでいる。個別の依頼の他に調査会社オフィス蛎殻からの下請け仕事もこなす。

竹中松子(たけなかまつこ)
杉村の自宅兼事務所の大家である竹中家の奥様。五人の子供がおり、密かに「ビッグ・マム」と呼ばれている。

佐々優美(ささゆうび)
親からは甘やかされてお姫様のように育てられた。結婚して2年ほどだが、突如自殺未遂をして連絡が取れなくなる。

宮前靜香(みやさきしずか)
竹中家の近所に住む小崎加奈の従姉妹で近々結婚する予定。竹中夫人と小崎加奈の付き添いとして杉村も結婚式に参加することとなる。

朽田美姫(くちだみき)
本名は三紀。トラブルメーカー。結婚と離婚を繰り返し、2人の子供がいるがまともに子育てはしていない。

昨日がなければ明日もない の簡単なあらすじ

私立探偵を営む杉村三郎は、金持ちの竹中家の一角を間借りして自宅兼事務所としています。依頼は人づての紹介か広告を見て尋ねてくるというパターンがほとんどですが、それだけでは収入が足りない為、オフィス蛎殻という調査会社からの下請け仕事もこなしています。本作では、ちょっと困った女たちに関する依頼が舞い込みます。

昨日がなければ明日もない の起承転結

【起】昨日がなければ明日もない のあらすじ①

行方不明のお姫様

私立探偵・杉村三郎の事務所を1人の上品な婦人が尋ねてきます。

知人の紹介で杉村のことを知ったという婦人は、筥崎静子と名乗ります。

依頼内容は、娘の優美が1か月前に自殺未遂をして精神病院に入院したのだが、夫の知貴が娘に会わせてくれないので何とかして欲しいと言うものでした。

詳細な事情を聞くと、筥崎夫人と娘の仲は非常に良く、こんな事になるまでは頻繁に連絡を取り何でも相談してくれていたそうです。

知貴の言い分では母親が自殺の原因だと言うことですが、それは有り得ないので何かトラブルに巻き込まれたり監禁されたりしているのではないかと心配だそうです。

杉村は優美の弟の毅にも電話で話を聞くと、筥崎夫人が1人で騒いでいるわけでは無いことが確認出来ます。

毅は落ち着いた青年で、客観的に見ても母と姉の仲は良くて自殺の原因になどなる訳が無いと断言します。

毅の友達から姉はお姫様と呼ばれているくらいに甘やかされて育っており、圧迫されたり母が怖いと言っているなど真っ赤な嘘だと言います。

また、毅はそもそも結婚する前から知貴のいわゆる俺様な性格が嫌いだったと言います。

ただ、仕事が忙しくてなかなか母の助けになれないので、杉村に代わりに問題を解決して欲しいと毅からも依頼されます。

本格的に調査を始めるにあたり、知貴夫妻の写真を見せてもらうと美男美女のカップルで、知貴はホッケーをやっていて日焼けしており今でも大学時代の仲間と集まっているとの事でした。

杉村はオフィス蛎殻の木田に頼み、知貴夫妻のFacebookを閲覧できるようにしてもらいます。

知貴の周辺を調べると、会社の後輩の女性が尋ねてきたり、高級車に乗った大柄な男と出かけていったりしていました。

知貴自身は窶れており何かトラブルに巻き込まれているように見えました。

【承】昨日がなければ明日もない のあらすじ②

最低の同好会と最悪の結末

知貴やその友人関係を調べると、杉村は胸が悪くなるような話しか聞けませんでした。

優美はそもそも結婚前から知貴の友人には悩んでおり、先輩の言うことを何でも聞く所だけが欠点だと漏らしていました。

しかし杉村の調べでは知貴は顔以外に良い所は無く、稼ぎはイマイチ、プライドは高い、目下の者への態度は横柄という人間でした。

知貴の先輩高根沢はさらに最低な人間であり、実家が金持ちな為遊んで暮らせるようですが昔から周りの者に対して犯罪まがいの事ばかりしていました。

優美を匿っているのも高根沢の別荘だと分かりますが、乗り込むまでもなく筥崎夫人に知貴から連絡があり、これ以上調査しないならと条件をつけて優美が帰ってきます。

これで依頼は達成ですが、杉村はさらに調査を続けます。

まずは高根沢らのホッケー同好会の後輩田巻にメールを送り、何とか連絡を取ろうとします。

しかし杉村の願いは届かず、高根沢が遺体で発見され、杉村の元へ田巻が訪ねてきます。

田巻は杉村からのメールが気になって警察へ行く前に来てみたそうで、事件の詳細について話します。

田巻は優美に騙されて家に高根沢や知貴達を入れてしまい、何とか妻を逃がそうとしたものの優美に邪魔され、揉み合いになった所で頭を殴られて田巻は気絶しました。

その後、田巻は拘束され目の前で妻を輪姦され動画を撮影されて脅されました。

その後、田巻の妻は自殺し、田巻は復讐で高根沢ともう1人を殺したそうです。

杉村は田巻に同情し警察署へと付き添っていきました。

知貴は指名手配され、優美も参考人として事情聴取されます。

後日、立科という継続捜査担当の刑事が杉村を訪ね、高根沢は大学時代に強姦事件の容疑者になったが証拠不十分で逮捕出来なかったと言います。

ようやく逮捕できる証拠が揃ったと思ったら殺されてしまったのですが、杉村はそもそも警察がその時に捕まえていれば今回の事件は起きなかったと指摘しました。

【転】昨日がなければ明日もない のあらすじ③

2つの結婚式での騒動

杉村は自宅兼事務所の大家である竹中夫人から相談を受けます。

近所に住む小崎佐貴子は昔のいざこざから親族と縁を切っており、娘の加奈には親族はいないと言って育ててきたそうです。

しかし、加奈が入学した中高一貫の私立中学の事務員に加奈そっくりな人物がおり、加奈が会いに行ってみると従姉妹の宮前靜香だと判明します。

靜香は佐貴子の妹の娘で、近々結婚するそうです。

これを聞いて加奈は靜香の結婚式に出たいと言い、佐貴子は絶対に行きたくないため竹中夫人が代わりに共に行くことになったそうです。

しかし、竹中夫人は足が悪く付き添いが欲しいので杉村にも共に来て欲しいという依頼でした。

当日、会場のホテルへ行くと受付は人が溢れ返り大混乱でした。

1フロアに2つの会場がありますが、両方で何か問題が起きたようです。

杉村達は部屋を確保し少し落ち着きます。

竹中夫人によると、靜香の母佐江子がかつて佐貴子の結婚式で新郎を寝取って駆け落ちしたらしく、親のした事が娘に返ってきたのかもしれないと思ってしまいます。

杉村が様子を見に部屋を出ると、そこで花嫁を見つけます。

花嫁は菅野と名乗り、親の借金が原因で80近い老人と結婚させられそうになり逃げてきたそうです。

杉村達は菅野の逃亡を手助けし、宮前家の方の様子を見に行くと披露宴は中止になっていました。

靜香の友人に話を聞くと、新郎が二股をかけていて元カノが控え室に押し入り控え室でセックスしていたことが原因でした。

靜香と母の佐江子に会うと、佐江子は因果応報だと笑えば良いと喚き散らして去っていきました。

後日、靜香が謝罪に訪ねてきて事情を聞くと、杉村はある事に気づきます。

靜香は実は結婚準備中に菅野と出会い互いの結婚式をぶち壊す手助けをしたのでした。

靜香は新郎の二股に気づいており、これを利用して母に過去の呪縛から解放され佐貴子に謝罪して欲しいと願っていました。

【結】昨日がなければ明日もない のあらすじ④

昨日がなければ明日もない

竹中夫人の長女の娘有紗のクラスに朽田漣という問題児がいたそうです。

親の美姫もトラブルメーカーで有名で、今は元夫家族と揉め事を起こしているそうです。

広告を見て美姫が杉村の元を訪ねてきそうなので注意するようにとのアドバイスでした。

GWに入り竹中家の人々が旅行に出かけると、杉村の元へ美姫が漣を連れてやってきます。

美姫は支離滅裂なことばかりを言い精神年齢も幼いような女でした。

多額の借金を作って離婚したり、誰彼構わずに金をせびって生活していました。

杉村はこの人の行いを正す為にあえて依頼を受けることとし、元夫の鵜野一哉に連絡を取ります。

鵜野はまともな人物で、美姫と結婚したのも不幸な生い立ちの美姫や漣を自分が救えないかと考えたからだと話します。

しかし、元々親からの反対を押し切って結婚したものの多額の借金を作った美姫に見かねて別れさせられたそうです。

鵜野は美姫の妹三恵も呼び3人で相談して美姫の妄言を止める為の証拠作りをすることとなります。

三恵は美姫と顔は似ていても性格は違っており大人しい真面目な人物でした。

調査報告書がまとまり美姫に渡そうとすると、美姫は実家に帰っていました。

実家に報告書を送りこれで美姫も落ち着くかなと思っていた矢先、漣と三恵を近くで見たと情報を聞いて嫌な予感がし、美姫とは連絡が取れなくなります。

杉村が意を決して朽田家を訪ねようとした朝、立科刑事と出会います。

そこで立科に同行を求め朽田家へ行くと三恵が迎えてくれ、杉村が問い詰めると美姫は突発的に三恵が殺してしまったと白状します。

三恵は生まれた時から姉の行いが元で常に周囲から蔑まれ、占い師に相談しても昨日がなければ明日もないから過去を受け入れて前向きに生きていくよう助言されたそうです。

しかし、いつまでも自分勝手な事ばかり言う姉に三恵の我慢は限界を迎えてしまったのでした。

昨日がなければ明日もない を読んだ読書感想

本作は杉村三郎シリーズの第5作目であり、3つの話に共通して最低な女が出てきます。

1つ目の話では、お姫様育ちの優美は周りの意見も聞かずに顔だけの男と結婚した挙句に親切にしてくれた田巻夫妻に対して取り返しのつかない犯罪行為を行います。

高根沢や知貴も最低なのですが、親友からもそんな男とは別れた方が良いとアドバイスされながらも別れることが出来なかった優美が完全に悪いと思います。

さらには、夫の知貴は指名手配されている中で愛人を作って逃げ回るなど何も良い所が無く見えますが、優美はそれでもトモ君は悪くないなどとアホなことを言い続けており、杉村にとっては本当にムカムカするような事件でした。

2つ目の話では、姉への対抗意識からなのか姉の結婚式を台無しにして駆け落ちした宮前佐江子とその娘靜香の話ですが、個人的には靜香の結婚しようとしていた新郎の行動が一番有り得ないと思いました。

結婚式に元カノが押しかけてくるまでは靜香の策略通りでしたが、まさか結婚式当日に押しかけてきた元カノとセックスを始め親族に見られるとは靜香も想定外だったと思います。

その為、想定以上の大混乱となり、菅野の逃亡が失敗しかけて杉村達が助けることとなりました。

3つ目の話では、少女時代から精神面での成長が止まってしまったような美姫とその娘漣が登場します。

美姫は典型的なバカ女で、中学から不良グループに属し高校生で漣を父親不明のまま出産、その後何人かと交際や結婚離婚を何度か経験しながら今に至ります。

漣の子育ては実家の両親や妹の三恵が行ない、また2度目の結婚で男の子も授かりますが育児はほぼしなかったようです。

最近はこんな女性も多く、育児放棄で子供を殺すというニュースも見ますが、美姫は周りの人には恵まれて子供を殺すまでいかなかっただけマシなのかなと思います。

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