【ネタバレ有り】パンとスープとネコ日和 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:群ようこ 2013年7月に滑川春樹事務所から出版
パンとスープとネコ日和の主要登場人物
アキコ(あきこ)
大手出版会社を退職し、パンとスープを出すお店を開く。真面目で筋の通った性格。
シマちゃん(しまちゃん)
アキコのお店で働く女性。体育会系なので礼儀正しく頼りになる存在。
先生(せんせい)
料理専門学校の理事長先生。美しく優雅でアキコが目標にしている女性。
ママさん(ままさん)
アキコの店の向かいにある喫茶店の店主。口は悪いが、根は良い人でアキコの事を心配している。
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パンとスープとネコ日和 の簡単なあらすじ
出版社に勤める53歳のアキコは食堂を営む母と二人暮らしで、料理専門学校を経営している先生の料理本の出版に携わっています。そんなある日、母が突然倒れて亡くなってしまい、会社の人事異動では経理部への辞令が出るのでした。この二つの偶然が重なって、アキコは思いもよらなかったお店を開くという人生を選択します。猫のタロに癒されながら、相棒のシマちゃんと二人で始めるパンとスープ店の物語。
パンとスープとネコ日和 の起承転結
【起】パンとスープとネコ日和 のあらすじ①
店の後片付けを済ませ、3階の自室で猫のタロと癒しの時間を過ごしているアキコ。
タロはお店の開店直後、店の横にうずくまっていた猫です。
一時保護するだけのつもりだったのが、あまりの可愛さに手放せなくなり、招き猫としてアキコの家で飼うことになりました。
アキコには初めから父親はおらず、食堂を営む母親との二人暮らしでした。
幼い頃から食堂で朝から晩まで常連客と騒ぐ母のことが嫌でたまりませんでしたが、そんな環境の元でも真面目で成績も良かったアキコは、大学卒業後みごと出版社に入社します。
遣り甲斐のある編集の仕事を続けるなか母が突然亡くなってしまい、会社からは経理部への異動を命じられます。
このまま我慢して定年まで仕事を続けるか悩むアキコでしたが、尊敬する料理専門学校の先生の「あなたはセンスがある。
あなたがお店をやればいいじゃない」という声に背中を押され食堂を開くことを決心します。
店の内装は修道院の食堂をイメージしたすっきりしたもの、メニューはサンドイッチとスープにサラダというオーソドックスなものに決めました。
調理師免許を取りお店も改装し、シマちゃんという礼儀正しく力持ちのアルバイトの女性も見つかって、順風満帆に進んでいると喜ぶアキコです。
しかし開店の日、店を訪れた母の店の常連客だったおじさん達からは「店内が殺風景、メニューが少ない、味が薄いと」ダメ出しをされてしまいます。
それでもアキコは、自分の信念をぶれることなく持ち続けることが大切だと心に誓います。
【承】パンとスープとネコ日和 のあらすじ②
心配だったお店も行列ができるほど盛況で、材料が無くなってしまい夕方には店を閉める日も少なくありません。
シマちゃんは勘がよく働き者で、アキコは大助かりです。
何もかもが順調のように見えていましたが「子供に変なものを食べさせたくない。
チキンに抗生物質を与えているか、野菜で低農薬のものを教えて欲しい」と母親から詰問されたり、アキコのプライバシーが勝手にブログに書かれていたりと色々な事が起きます。
それでもアキコはタロに癒され、シマちゃんが怒ってくれるのを見ながら、忙しくも楽しい毎日を過ごしています。
しかし、暫くしたころアキコはお店に来てくれる人が、同じような服装をした似た雰囲気の人ばかりだということに気づきます。
確かに全ての人を対象にしたオープンなお店を目指していたわけではありませんが、結果として母のお店の常連客も排除してしまい客層も偏ってしまいました。
改めて分析してみると「普通だけどほんのちょっと違う」というだけの、中途半端な店を作ってしまったのではないかと思い悩みます。
そんな時に向かいの喫茶店のママがやってきて、定休日を設けようとするアキコに「チャンスは逃すな、稼げる時は身を粉にして働け」とお説教をします。
口うるさいと思いつつ、経営者としては見習うところも多いと感じるアキコ。
そのママが帰ったあと、母と昔同じ店で働いていたというタナカさんという女性が訪ねてきました。
【転】パンとスープとネコ日和 のあらすじ③
タナカさんはアキコの母が亡くなったことを知らずに訪ねてきてしまったと、一度店を出たあとに仏壇に供えて欲しいと花を持ってきてくれました。
その日は、そのまま帰ったタナカさんでしが、定休日の水曜日にタナカさんは再びアキコの家にやってきます。
タナカさんは、アキコの父親はお寺の住職で既に亡くなっていて、今は息子が継いでいることやお寺の住所などを告げ帰っていきました。
タナカさんが帰った後、シマちゃんから階段を踏み外し、捻挫をしてしまったという電話がかかってきます。
アキコは日曜まで店を休むことにして、タロと遊んだり、ゆっくりコーヒーを飲んだりと心も体もリフレッシュします。
休みも4日目になったある日、電車に乗って買い物に出かけたアキコは、目的地である駅の三つ先の駅に異母兄弟のお寺があることを意識します。
アキコはいつの間にか目的地の駅を過ぎ、お寺のある駅に降り立っていました。
結局お寺まで来たしまったものの、入ることができずにウロウロしているアキコ。
そんなアキコに女性が優しく声をかけてくれ、同時に自分の兄である住職とも言葉を交わします。
その初老の女性は兄嫁で、少し話しただけでも分かるくらい素敵な女性でした。
アキコは二人にだったら素直に胸の内が話せるかもと思いましたが、余計な波風を立てることはないと何も話さず寺をあとにします。
寂しい気持ちもしましたが、兄たちの人柄に触れ心が温かくなったアキコでした。
【結】パンとスープとネコ日和 のあらすじ④
まだ青あざが残るものの元気になったシマちゃんとお店を開けると、いつものようにお客さんが来てくれて休んでいた二人を労わってくれます。
普段と同じ日が戻ってきたころ、インターネットのブログや掲示板でお店の悪口が書いてあるとシマちゃんから聞かされます。
「店を突然休んだりして傲慢だ。
もっとメニューを増やせ。
味がなくてまずかった。」
などなど。
こんなアレコレはあるものの、週に一度の休みを確保しながら店はうまく回っていました。
明日は休みだと嬉しい気持ちになっていた火曜日、タロの元気がなくなっています。
アキコがお店を閉めて自室に上がると、タロの呼吸は明らかにおかしくなっていました。
キャリーバッグにタロを入れ、エプロン姿のまま動物病院へ向かったアキコでしたが、診察台に乗せた時タロはもう亡くなっていたのです。
悲しみにくれるアキコでしたが、気合を入れて店に立ちます。
週に一度は顔を見せてくれる品の良い老婦人など常連さんも増えてきました。
突然襲ってくる「タロがいない寂しさ」をなんとかやり過ごしていたある日、料理学校の先生がお店にやって来てくれます。
「スープにちゃんと手をかけているのが良い」そしてシマちゃんのことも「マニュアル通りではなく、お客様に対してありがとうという気持ちを感じる人」だと褒めてもらいました。
先生の言葉に元気をもらったアキコでしたが、タロが亡くなった悲しみに負けて兄の寺を訪ねてしまいます。
そこでタロの話を奥さんにしたアキコは、霧が晴れるように悲しみが薄らいでいくのを感じました。
まだタロの事を思って泣く日もあるアキコですが、泣きたい時は泣いて我慢し過ぎないよう毎日を過ごしています。
そんなある日、シマちゃんがタロにそっくりな子を見つけたと写メを見せてくれます。
その偽タロに出会えたなら、自分なりのささやかな生活を楽しめるような気がしたアキコでした。
パンとスープとネコ日和 を読んだ読書感想
せっかく入った出版社を辞めて、食堂を始めたアキコの潔さが羨ましかったです。
料理のセンスがあって母親が残してくれた店があるとはいえ、なかなか安定した生活を捨てるのは勇気がいることだと思います。
潔く辞められたのは、アキコが芯の通った強い女性だからだと感じました。
そんな強い女性でも気持ちがぶれることがあり、大きな悲しみに飲み込まれてしまうことだってあります。
そんなとき、一緒に働くシマちゃんや向かいの喫茶店のママさん、憧れの先生、心優しいお寺のご夫婦、周りの皆に助けられながら、少しでも生活を楽しむことを考えるアキコ。
「泣きたい時は泣いき、それを悪いことだと思わずなんとかやり過ごしていく」どうしようもない悲しみに出会ってしまったときに、対処する方法を教えてもらえた作品でした。
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