【ネタバレ有り】何様 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:朝井リョウ 2016年8月に新潮文庫から出版
何様の主要登場人物
松居 克弘(まつい かつひろ)
主人公。ECサイト会社の新人。人事部。
君島(きみじま)
克弘の先輩の女性。喫煙者人脈が広い。
武田(たけだ)
克弘の上司。部下からの信頼が厚い。
結唯(ゆい)
克弘と同棲中の恋人。現在妊娠中。
何様 の見どころ!
・新人面接官
・克弘の心の葛藤
・面接に関わる全ての人の悩みと願い
・克弘の成長と周囲の優しさ
何様 の簡単なあらすじ
克弘はECサイトを運営する会社の人事部に配属されました。
仕事もまだまだだというのに、新卒採用の面接官を任されてしまいます。
社会経験が乏しい克弘はこの大役に自信をなくします。
同時に、克弘は友人や恋人との接し方にも悩みを持っています。
「採用する側」の苦悩と成長を描く物語です。
何様 の起承転結
【起】何様 のあらすじ①
ECサイト会社の新人・克弘は、社会人になりきれず、もやもやとした思いを抱えています。
ある日、大学時代の友人から、インタビューを受けてくれないかと頼まれた克弘は、精いっぱい社会人らしい恰好をして、社会人らしいコメントを述べました。
この友人は教育系の出版社に勤めていて、この記事は高校生が読む冊子に掲載されるそうです。
少し前までは学生だったのに、「ギャラ」「原稿」「落とす」などと業界用語を使う友人を見て、克弘は気恥ずかしい気持ちになります。
インタビューが終わり、煙草を勧める友人を断り、克弘は外に出ます。
就職活動が始まる時期でした。
克弘は、人事部に配属されていました。
採用を行う部署です。
克弘は、選ばれる側から選ぶ側になるなんて、想像もしていませんでした。
【承】何様 のあらすじ②
就職活動が解禁され、克弘の仕事は忙しくなってきました。
人事部だけでは手が回らないため、面接の採点は他部署にも手伝ってもらっています。
克弘の会社は、大量採用、大量離職と揶揄されています。
就活生の時は、採用数が多くて内定が取りやすいと喜んでいましたが、いざ採用する側になると難しいものでした。
面接が終わると、担当者同士で誰を次の面接に進めるかの話し合いが行われます。
この日の話し合いでは、君島が積極的に発言をし、順調に就活生の合否が決まっていきました。
今後の面接予定を決めた後、上司の武田が克弘に次回から面接官を勤めるように、と指名しました。
今までの克弘は、面接のバックサポートを行っており、面接はしたことがありませんでした。
そもそも、克弘自身が就活生と年代が近いため、的確な面接ができるか、克弘は不安でした。
しかし、尊敬する武田の頼みを断るわけにはいきません。
武田は、克弘が就職活動をしていたときの面接官でした。
就活生にとって、面接官とは怖い存在でしたが、武田はしっかりと克弘の話を聞いて、共感してくれたのです。
その時から、克弘は武田のことを強く慕うようになりました。
克弘は緊張しながらも面接官を引き受けました。
【転】何様 のあらすじ③
克弘が家に帰っても、同棲中の結唯はまだ帰宅していません。
結唯とは学生時代からの付き合いで、お互いの就職を機に同棲を始めました。
しかし、結唯の仕事は忙しく、克弘より帰りが遅くなることも多いのです。
克弘はこの状態を、恋人と同棲しているというより、一人暮らしの人間が二人いるようだと感じていました。
一人で夕食を食べていると、以前インタビューを受けた友人から、出来上がった記事が送られてきました。
添付された見慣れない顔をした自分の写真と記事を、他人事のように眺めていると、結唯が帰ってきました。
結唯は現在妊娠中で、体調が悪そうです。
克弘は結唯の体を気遣いますが、結唯は弱さを見せませんでした。
克弘は、結唯のことをどんなに気遣っても、妊娠中の不安やしんどさは当事者にしかわからないと思っています。
何かしてあげたいと思っても、克弘にできるのは、結唯のために煙草をやめることだけでした。
克弘も結唯も、お互いのことを思いやっているのですが、お互いに甘えることはできず、気遣いだけがすれ違っていました。
二人とも、環境と体の変化に途惑っているのです。
【結】何様 のあらすじ④
克弘の面接官としての仕事が始まりました。
面接官としてあらゆる学生の志望動機や自己PRを聞いていくうちに、克弘はなにが正解なのかわからなくなっていきます。
それぞれの学生にそれぞれの背景があるのに、それを面接官が勝手に合否を決めるのはおこがましいと思ってしまったのです。
その考えに陥った克弘は、面接官なのに一つの質問もできないまま面接が終わりました。
面接後、克弘は君島に喫煙室に呼び出されます。
面接での態度を少し責めた後、君島は克弘の相談に乗ってくれました。
君島は「当事者じゃないから合否が決められない」という克弘の言葉を笑い飛ばしてくれました。
その勢いで、克弘は自分が父親になったことを話します。
君島は驚きながらも、克弘の今後を応援してくれました。
君島は、上司の武田だってベテランの面接官ではないと教えてくれました。
武田はもともとは営業部の人間で、初めて面接を行ったのが、克弘の代だったのです。
克弘は、憧れの上司でさえも少し前までは新人だったと知って、少し安心します。
そして、君島と話しているうちに、採用という仕事に対して希望が見えてきます。
仕事を頑張って、早く結唯のもとに帰りたい、と強く思うのでした。
何様 を読んだ読書感想
「何者」の続編にあたる短編集です。
学生から社会人になる過程の若者の話が掲載されています。
「何者」のようにきっちりとしたオチのあるストーリー展開ではないですが、社会生活に悩んだ時に読むと元気の出る一冊です。
就活時のあるあるがたくさん詰まっているので、共感しながら読み進めました。
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