「陸王」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|池井戸潤

「陸王」

【ネタバレ有り】陸王 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:池井戸潤 2016年7月に集英社から出版

陸王の主要登場人物

宮沢紘一(みやざわこういち)
こはぜ屋社長

茂木明宏(しげきあきひろ)
ダイワ食品陸上競技部員

飯村晴之(いいむらはるゆき)
シルクール元社長

村野尊彦 (むらのただひこ)
シューズマイスター

小原賢治 (おばらけんじ)
アトランティス日本支社営業部長

陸王 の簡単なあらすじ

足袋製造会社「こはぜや」社長の宮沢は会社の経営が少しずつ傾いていることに危機感を募り、新事業として陸上競技専用の足袋「陸王」の開発に乗り出します。陸王の開発は技術的にも資金的にも困難を極めますが、諦めずに陸王の開発に取り組む宮沢に一人..また一人と協力者が募り、宮沢はランニング専用足袋「陸王」でランニングシューズ業界に殴り込みをかけるのでした。

陸王 の起承転結

【起】陸王 のあらすじ①

百年ののれん

足袋製造会社「こはぜや」は創業百年を超える老舗企業です。

こはぜやの社長宮沢は業績の低迷に悩んでいました。

足袋そのものが斜陽産業であるため、このままの業績だといずれ倒産を迎えることに宮沢は危機感を覚えます。

業績を回復させるため新事業に乗り出すことを決意し、模索の末にランニング専用の足袋「陸王」の開発に乗り出すことにしました。

陸王の雛型が出来上がりますが耐久性に乏しく実用段階には程遠いため、テスターを探すことになります。

そこで陸上選手の茂木に目をつけます。

茂木は優秀な選手ですが、足を痛めてしまい表舞台からは姿を消していました。

茂木に矯正用としてシューズを使ってもらおうとしますが、陸王には実績がないため見向きもされません。

そしてシューズ業界にはアトランティスという大企業が君臨しているため、中小企業のこはぜやでは相手にもなりません。

宮沢率いるこはぜやの従業員はアトランティス製のシューズを超えるものを作るために研究を続けるのでした。

一方茂木はアトランティスと専属でシューズの契約をしています。

しかし、茂木は故障していてレースに出られる見込みが立たないため、アトランティスは茂木を見切り、シューズの契約を一方的に打ちきったのです。

茂木は激怒して自分が所有するアトランティスのシューズをゴミ箱に投げ捨てて二度とアトランティスのシューズは履かないと心に誓うのでした。

【承】陸王 のあらすじ②

 シルクール

陸王の性能を高めるためにはソールの耐久性を高める必要があり、シルクールという素材がソールを作るために必要だということになります。

シルクールの特許を持つ飯山という男を探し当てますが飯山は元会社経営者で会社を潰してしまい、借金取りに狙われている身です。

荒んだ逃亡生活が飯山の性格を歪めてしまい、交渉が難航します。

宮沢は飯山をこはぜやに招待し、陸王の製造にかける職員たちの熱意を見せつけます。

こはぜ屋の人々の熱意を見た飯山の心に変化が起き、飯山はこはぜ屋に特許を使うことを承諾し、シルクールに関する顧問としてこはぜ屋に雇われることになりました。

飯山の助手として宮沢の息子..大地が下に着きます。

大地は就職活動がうまくいかないためこはぜ屋を手伝っている身で、工学部出身なのでモノづくりや研究に造詣があるため陸王の製造を手伝うことになりました。

アトランティス専属の村野という男は業界でもその人ありと呼ばれる優秀なシューフィッターです。

茂木が選手として復活することになり、茂木の契約を打ち切った小原という上司は自分の非を認めずに、村野に責任をなすりつけました。

アトランティスという会社に愛想が尽きた村野は会社を退職し、ひょんなことから宮沢と出会い、宮沢と話をするうちに陸王に興味を持ち、宮沢たちの開発チームに加わったのです。

【転】陸王 のあらすじ③

陸王の危機

村野は陸上界に顔が効くため、こはぜ屋が作った陸王を茂木に履いてもらうことに成功しました。

茂木も陸王を気に入り、茂木のフィードバッグを得られることになった陸王はさらに性能を向上させてゆきます。

そして、茂木は復帰後の初レースで毛塚という因縁の深い選手を打ち破ることに成功し、好成績を収めたのです。

しかし世間は茂木より毛塚に注目しており、茂木の勝利にはあまり関心が向けられません。

怒った茂木はもう一度毛塚を完膚なきまでに負かして、勝利することを決意するのでした毛塚はアトランティス製のシューズを履いているため、アトランティスを破った陸王の存在を小原は目障りに思い、潰すことを決意します。

陸王の素材を製造している会社に、こはぜ屋とはもう取引しないように圧力をかけます。

困ったこはぜ屋に追い打ちをかけるようにシルクールを製造する機械が大破してしまい、茂木に供給できるレベルの陸王を製造することが困難になってしまいました。

シルクールを製造する機械を作るためには1億円もの投資が必要であり、中小企業のこはぜ屋ではとても用意することができない額です。

陸王の製造を諦めて普通の足袋製造会社に戻るかどうかの決断を宮沢は迫られます。

そんな折、宮沢の前にこはぜ屋を買収したいというフェリックスという大企業が現れます。

フェリックスの子会社になれば潤沢な資金で設備投資をするので陸王を量産することができるという喉から手が出るほどの好条件でした。

しかし、大企業の傘下に下れば百年続いてきたこはぜ屋が全然違う会社になってしまうことを危惧した宮沢は葛藤に葛藤を重ねることになるのです。

【結】陸王 のあらすじ④

陸王の勝利

悩んだ末に宮沢が下した決断はフェリックスとの合併は断り、業務提携をするという手段でした。

フェリックスの社長御園との激しい交渉の末にこはぜ屋とフェリックスは条件付きで業務提携をすることになりました。

そして、茂木と毛塚が再び競うことになるレースの日がやってきました。

陸王を潰したと思っているアトランティスは茂木に再び契約を迫り、言葉巧みに茂木にR�Uという最新鋭のシューズを押し付けます。

こはぜ屋のピンチは茂木の耳にも届いており、陸王かR�Uかで茂木の胸中は揺れ動きます..悩んだ末に茂木が選択したシューズは陸王でした。

レースは陸王を履いた茂木と、R�Uを履いた毛塚の熾烈なレースとなります。

厳しい闘いを制したのは陸王を履いた茂木でした。

こはぜ屋に敗れた、アトランティス営業部長の小原は怒り狂います。

このレースで陸王は一躍有名になり、アトランティスの傲慢さに嫌気がさしていた他の有力選手たちも、アトランティスとの契約を打ち切りこはぜ屋との専属契約を次々と結ぶのでした。

そして、量産体制が整ったこはぜ屋は大きな工場を持つようになり、選手や人々の足に寄り添うための足袋を今日も製造するのでした。

陸王 を読んだ読書感想

読み終わった後に最初に思ったことは、これが本物の小説というものか..と思いました。

登場人物や設定を余すところなく使っており、読んでいてとても引き込まれる作品です。

ものづくりの面白さや苦しみを実によく表現している作品で、登場人物と共に陸王を作る苦しみを共有しているような気持ちになります。

私は登場人物に感情移入したり、応援したりということはほとんどしないのですが、こはぜ屋の制作した陸王を履いてレースに挑む刺激を思わず応援してしまっていました。

読了してみてとても爽快な気持ちになりますので、スポーツに興味がある方もない方も一度手に取って読んでみることをおすすめします。

きっと読み終わった後はこはぜ屋の陸王を履いてランニングに出かけたい気分になると思います。

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