【ネタバレ有り】木曜組曲 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:恩田陸 1999年11月に徳間書店から出版
木曜組曲の主要登場人物
静子(しずこ)
重松時子の異母姉妹。 美術関係の出版プロダクションの社長。
絵里子(えりこ)
静子の従姉妹。 ノンフィクション作家。
尚美(なおみ)
時子の弟の娘。 サスペンス作家。
つかさ(つかさ)
尚美の異母姉妹。 純文学作家。
綾部えい子(あやべえいこ)
時子を担当していた編集者。
木曜組曲 の簡単なあらすじ
一部の熱狂的な読者から愛されていた重松時子が、突如としてこの世を去ったのは4年前の2月の第2木曜日のことです。それ以来時子の命日が近づくと、彼女にゆかりのある5人の女性たちがM市内の外れにあるうぐいす館に集まっています。今年もいつも通りに料理とお酒を楽しんで思い思いに過ごすはずでしたが、差出人が不明のメッセージから思わぬ事態へと発展していくのでした。
木曜組曲 の起承転結
【起】木曜組曲 のあらすじ①
デビュー作の「蛇と虹」から遺作となった「蝶の棲む家」まで、重松時子は一部に熱狂的なファンを持つ小説家です。
時子が死んだのは2月の第2木曜日で、場所は彼女が住んでいたM市の郊外にある洋館「うぐいす館」でした。
現場に居合わせたのは時子の母親ちがいの妹・静子、静子の母の妹の娘・絵里子、時子の弟の娘・尚美、尚美の異母姉妹・つかさ、時子を担当していた編集者の綾部えい子。
静子と尚美とつかさには時子との血のつながりがありますが、絵里子とえい子にはありません。
その日の朝からえい子が「蝶の棲む家」の最終稿をチェックしていると、午後から静子・絵里子・尚美・つかさの4人がやって来ます。
時子は2階の書斎で仕事をしていて、「薬を飲む」と言って水の入ったコップを取りに来ただけです。
午後7時頃にえい子が様子を見に行った時には、寝室に倒れていて既に息がありません。
警察の調べではコップから青酸系の毒物が検出され、直筆の遺書も見つかったために自殺として決着がつきました。
それ以来5人の女性たちは、毎年の2月の第2木曜日の前後合わせて3日間を時子をしのぶためにうぐいす館に集まっています。
【承】木曜組曲 のあらすじ②
例年通り5人はうぐいす館に顔をそろえて、近況報告もそこそこにえい子の手料理と持ち寄ったお酒で乾杯をしました。
食事の最中に「フジシロチヒロ」という「蝶の棲む家」の主人公の名前を語った人物から、カサブランカの花束と「皆様の罪を忘れない」というメッセージが届きます。
さらに明らかになったのは、4年前に時子が亡くなった日に尚美が彼女の部屋に居たことです。
主婦であると同時に売れっ子の作家である尚美は、ひそかに時子から後継者に指名されていました。
そんな尚美に対して、歯科技工士をしながら純文学を書いているつかさは対抗意識を持っています。
晩年の時子は食事や財産管理をえい子に任せっきりで、自分では何ひとつできません。
編集者としての職分をこえて完成原稿にも勝手に手を入れてために、時子は彼女を恨んでいたはずです。
皆が険悪なムードになる中で、絵里子は時子が亡くなる直前に玄関の銅版画を動かしていたことを思い出しました。
銅版画の裏には、「わたしはもうすぐ静子に殺される。」
という時子の手紙が発見されます。
【転】木曜組曲 のあらすじ③
年に1度のこの集まりは食事の時間の他はそれぞれが自由に読書をしているだけで、これといったイベントがある訳ではありません。
木曜日の午後をゆったりと過ごしていた5人を妨げたのは、またもや「フジシロチヒロ」からの脅しめいた電話です。
気分転換にスパゲッティを食べることにした5人は、戸棚に保管されいた缶詰めのミートソースを使いますした。
1番最初に味の異変に気が付いたのは静子で、缶の底には細工した跡が残っています。
大御所となった時子に面と向かって批判する者は、出版関係者にはいません。
そんな時子に唯一本音を言えるのが妹の静子で、彼女は姉をモデルにした小説を書いて送り付けたことがありました。
缶詰めの中の毒は、憎んでいた妹を狙ったものだと静子は主張します。
その証拠に時子は4年前に毒物をコップの中に溶かして、5人が食べる予定の鍋の中に入れようとしたことがありました。
たまたま神棚の水を取り換えようとしていた絵里子は、水の入ったコップを手にしています。
ふたつのコップがすり替わってしまったことによる不幸な事故で、時子の死は殺人でも自殺でもありません。
【結】木曜組曲 のあらすじ④
最終日に4人が朝食を食べ終えると、えい子は1人1人の顔を見回しながらある提案をします。
4年前の事件に真の解決がついた今、来年の2月の第2木曜日までにそれぞれが時子に関する作品を執筆することです。
尚美は「蝶の棲む家」のゴーストライターを務めた経験を、フィクションとして発表することを思い付きました。
つかさは初めて時子が親戚だと知って尚美と一緒にうぐいす館を訪れた、中学生時代のことを連作短編集にまとめることを考えています。
静子が経営している小さな出版プロダクションの机の中に眠っているのは、姉をモデルにした未発表の小説です。
3人が立ち去ったうぐいす館では、 絵里子とえい子がお茶を飲みつつ計画の成功にほっとしていました。
「フジシロチヒロ」の正体は絵里子の大学時代の友人で、彼女は時子のファンでもあり劇団員でもあります。
スパゲッティの缶詰めの中に混入しておいたのはニョクマムという珍しい香辛料のため、万が一誰かが口にしても害はありません。 全ては時子の血を受け継いだ3人に、彼女をこえる作品を書いて欲しかったからです。
時子の残した小説を未来に伝えるためにも、えい子は来年の2月の第2木曜日までうぐいす館を維持することを誓うのでした。
木曜組曲 を読んだ読書感想
重松時子と5人との関係が複雑なために、手元に登場キャラクターの相関図をメモしながら読み進めていく方がいいかもしれません。
時子に引き寄せられていくかのように集まってくる、女性たちの姿が美しくも幻想的でした。
綾部えい子が腕によりをかけて振る舞う、ホウレン草のキッシュや鯛すき鍋も実に美味しそうです。
和やかな雰囲気の中で進んでいく4年に1度の集まりが、次第にお互いの秘密の暴き合いへと変わっていく展開に引き込まれていきます。
4年越しに導き出された真実とともに、偉大な作家の遺志を受け継いでいくそれぞれの決意が感動的でした。
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