【ネタバレ有り】私のスポットライト のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:林真理子 2016年9月にポプラ社から出版
私のスポットライトの主要登場人物
平田彩希(ひらたさき)
ヒロイン。泡川中学校の1年生。旅行研究会に所属。
平田義郎(ひらたよしろう)
彩希の父。小学校教師。大学生の時に演劇に熱中する。
棚橋由紀(たなはしゆき)
彩希のクラスメート。女子のリーダー格。
関洋介(せきようすけ)
30代の若手映画監督。
山崎美冬(やまざきみふゆ)
彩希の従姉妹。大手プロダクション「ポプラプロ」で芸能活動を続ける。
私のスポットライト の簡単なあらすじ
平田彩希は地元の公立中学校に通う平凡な13歳の女の子で、地味なルックスに平均的な成績で教室の中でもこれといって目立つことはありません。そんな彩希の変わり目となったのは、学園祭で無理やり主役を押し付けられた時です。舞台の上で演技をする喜びに目覚めた先は、小さな劇団に通いながら自分の知らない世界を垣間見ていくのでした。
私のスポットライト の起承転結
【起】私のスポットライト のあらすじ①
平田彩希は小学校の教師をしている父親の義郎と、主婦の母に高校1年生になる兄・健司の3人で暮らしている13歳です。
通っているのは地元の公立中学校で、なるべくルックスも成績も平凡な女の子たちのグループにいて目立たないようにしていました。
学園祭のシーズンになると彩希のいる1年B組では劇をやることが決まり、クラスの「一軍」として君臨している棚橋由紀が脚本を書き上げます。
完成した作品「ミツコ」はアメリカの古い映画を下敷きにしたストーリーで、いじめられっ子が超能力に目覚めて報復していくホラーテイストの作品です。
主役には国語の授業の時に1番朗読がうまかったという理由で、彩希が起用されました。
厭々ながらも自宅で演技の練習をしている時に、義郎が学生時代に演劇部に所属していたことを知ります。
父のアドバイスによって見る見るうちに上達してき、彩希たちのお芝居は「パフォーマンス賞」をもらうほどの大成功です。
毎日を何となく過ごしてきた彩希は、始めて自分のやりたいことを見つけました。
【承】私のスポットライト のあらすじ②
学園祭が終わって1週間が過ぎようとしていた時に、彩希はお気に入りのテレビドラマに出ている子役が劇団に所属していることを知りました。
「劇団メイプル」は子役のタレントばかりではなく、中学生部という名前の養成講座も用意されています。
入会金25万円に月謝2万5千円は平田一家にとっては痛手になりますが、最終的に後押しをしてくれたのは義郎です。
千駄ヶ谷駅を降りて閑静な住宅地を抜けた先に、劇団メイプルの稽古場はありました。
そこで彩希は発声練習から所作に踊りまで、演技の基本を学んでいきます。
他の学校に通う中学生や年上の友達とも仲良くなっていく一方で、1年B組では彩希が劇団に入ったことで持ち切りです。
力を合わせて学園祭を成功させた棚橋も、ひそかに彩希を「勘違いしている」といった悪口をLINEに書き込んでいます。
「ふつうの子」が何かをすると嫉妬されると感じた彩希は、それからしばらくの間は劇団に通うことができません。
そんな彩希の大きな力になったのは、「頑張るコは目立つ。
頑張ることを馬鹿にする奴らを笑ってやれ」という義郎の言葉です。
【転】私のスポットライト のあらすじ③
再び劇団で演技トレーニングに打ち込むようになった彩希のもとに、映画オーディションの話が舞い込んできました。
「旅をする人」というタイトルの認知症の男性を主人公にした作品で、監督の関洋介は売り出し中の実力派で2年前には日本アカデミー賞も受賞しています。
見事にオーディションに合格した彩希の役は主人公の孫娘で、撮影期間は2カ月ほどかかりますが夏休み期間を挟むために学業には支障がないでしょう。
ロケ地は福岡市内から車で1時間くらい離れた場所にあり、小さな町の旅館で泊まり込みの撮影です。
共演者やスタッフとも家族のように打ち解けていた彩希が異変に気が付いたのは、クランクアップが近づいたある日の朝のことです。
この映画を作っているプロダクションが倒産してしまい、プロデューサーの高坂が東京に戻って資金繰りに奔走することになりました。
撮影の方は問題なく終わりましたが、「旅をする人」が映画館で公開される見通しは立っていません。
【結】私のスポットライト のあらすじ④
1カ月以上たっても進展がない中で、彩希は高坂が体調を崩して入院しているという話を聞いてお見舞いに行くことにしました。
高坂は手足が徐々に動かせなくなる珍しい病気に侵されていて、当分の間は現場に復帰できません。
さらには映画を公開するためには、2000万円もの大金が必要なようです。
彩希は同い年の従姉妹でテレビCMやドラマで活躍している、山崎美冬と協力して資金集めを開始しました。
美冬が所属している事務所は大手の芸能事務所で、広告代理店やスポンサー企業との付き合いも広いです。
何時しか彩希と美冬の地道な活動は、「中学生が映画のプロデューサー」として大きな話題を集めます。
「旅をする人」には美冬も出演することになり彩希の出演シーンは大幅に削られてしまいましたが、映画が公開されたことが何よりです。
学校では相変わらず中傷が出回っているようでしたが、彩希は教室の外で自分だけのスポットライトを浴びることを目指すのでした。
私のスポットライト を読んだ読書感想
特別に人気者でもなくいじめられっ子でもない、教室の中でも目立たないごく普通の女の子・平田彩希を主人公にしているところに好感が持てました。
今どきの中学生たちのスクールカーストや、友達との複雑な関係もリアルに描かれています。
表面上は友好的な会話を交わしながらも、裏ではLINEなどのソーシャルメディアを使って傷つけ合う様子も印象深かったです。
波風立てないことだけを考えて13年間生きてきた彩希が、初めて心から夢中になれるものを見つけた瞬間を鮮やかに捉えています。
小さな世界に閉じこもっていた彩希が、学校の外へと飛び出していくようなクライマックスが感動的です。
コメント