【ネタバレ有り】綺麗な生活 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:林真理子 2008年10月にマガジンハウスから出版
綺麗な生活の主要登場人物
唐谷港子(からたにみなこ)
ヒロイン。美容クリニックの受付係。
大月泰生(おおつきやすお)
芸大大学院生。
大月雄也(おおつきゆうや)
泰生の父。建築家。
唐谷ゆかり(からたにゆかり)
港子の母。テーブル学教室の講師。
唐谷慎二(からたにしんじ)
港子の父。仕事で台湾在住。
綺麗な生活 の簡単なあらすじ
美容外科で受付をしている唐谷港子が出会ったのは、大学院で建築学を学ぶ大月泰生です。彼の父親は著名な建築家であり、成人した息子と妻がいながらも港子の母親・ゆかりと不適切な関係を続けています。顔が良くてモデルのアルバイトをしている泰生に惹かれていく港子でしたが、突然のアクシデントによって思わぬ選択を迫れれることになるのでした。
綺麗な生活 の起承転結
【起】綺麗な生活 のあらすじ①
唐谷慎二は女子大生のゆかりと結婚して、間もなく娘の港子を授かりました。
遊び人として有名な慎二と、裕福な家庭で甘やかされて育ったゆかりとの結婚生活はうまくいきません。
慎二は愛人を作って家を出てしまいましたが、ゆかりは離婚することなく20年以上に渡って別居生活を続けていきます。
慎二から毎月かなりの額の仕送りをもらっていて、ゆかりは亡くなった祖父のオーナー会社の株式をたっぷりと受け継いでいるためにお金には困りません。
港子がゆかりから美容外科「タニ・クリニック」のレセプショニストの仕事を紹介されたのは、22歳の時です。
白金台のプラチナ通りにある芸能人や有閑マダム御用達の美容クリニックで、客の予約を取ってあげたり話し相手になっていました。
このクリニックで港子が働き始めてから8年がたったとき、人気の女優・早田梨奈がVIPルームに通されます。
梨奈を迎えに来たのが芸大の大学院に通う大月泰生で、彼の父・雄也はゆかりの浮気相手です。
【承】綺麗な生活 のあらすじ②
大月雄也は苦労して地方の国立大学を卒業した後でニューヨークに留学して、アメリカから帰った後に建築家として名を知られるようになりました。
結婚後も異性との関係が派手で、最近になってテーブル学なる教室を始めて「テーブルコーディネーター」を名乗りだしたゆかりと東京の社交界で出会います。
雄也とゆかりは1週間前に2人っきりでイタリア旅行に行くほどの深い仲で、ただの浮気ではなくゆくゆくはお互いのパートナーと離婚して一緒に暮らすつもりのようです。
親同士が不倫をしているという罪悪感を感じながらも、港子は泰生とスケジュールを調整して食事に行くことにしました。
泰生は大学では父と同じく建築学を学びつつ、恵まれたルックスを生かしてモデルとしても活躍しています。
6歳年下の美しい男と歩いているだけで、道行く女性たちは視線を走らせてくるために港子は悪い気はしません。
白金のイタリアンレストランでディナーを楽しんだふたりは、そのまま港子の部屋で一夜をともにしました。
【転】綺麗な生活 のあらすじ③
どうしても話したい事があるとゆかりからの留守番メッセージを聞いた港子は、久しぶりに実家の門を押しました。
日頃からタニ・クリニックで綿密な手入れを受けている効果もあって、30歳の娘がいて今年52歳を迎えるようには見えません。
ついに夫と離婚して雄也と再婚すると宣言したゆかりに、港子は突発的に泰生と付き合っていることを告白します。
言い争いの末に実家を飛び出した港子が電話をかけた相手は、たまたまバイクに乗っていた泰生です。
運転中の通話が原因で交通事故を起こしてしまい、泰生は世田谷にある国立第二病院へと搬送されました。
入院中は雄也から泰生との面会を許してもらえずに、退院後も彼からの連絡は一向に来ません。
港子は出版社に勤めている友人に紳士録を調べてもらって、建築家・大月雄也の自宅の住所を突き止めます。
ようやく自室で会うことができた泰生の顔は事故の影響で右半分が赤黒く変形していて、ハンサムだった頃の面影はありません。
【結】綺麗な生活 のあらすじ④
事故に遭う前の泰生は街を行く人たちの目をひいていましたが、それは彼のスタイルの良さと美貌からでした。
今の泰生は別の意味ですれ違う人々の注目を浴びていき、2度の整形手術を受けた後の彼は外を歩くときにマスクが手放せません。
「泰生がどんな顔になっても関係ない」という港子の言葉を信じて、思い切ってマスクを外したまま渋谷の大通りを歩いてみます。
取り立てて通行人が泰生の顔を凝視しないのは、都会の無関心さでもあり自分たちだけの幸せで頭がいっぱいなのでしょう。
少しずつ元気を取り戻してきた泰生を見て、港子が思い付いたのは伊豆へのドライブ旅行です。
ひと部屋ごとに露天風呂がある高級旅館であれば、他の旅行客に気兼ねする必要はありません。
港子と泰生の破局が決定的になったのは、途中のサービスステーションで5歳くらいの男の子の「すっごく怖い顔のおじさんがいたよ」という言葉です。
泣き崩れた港子を車から降ろした泰生は、ひとりでその場を走り去るのでした。
綺麗な生活 を読んだ読書感想
「アンチエイジングというのは失われたものを執拗に訪ねる旅」という、ヒロイン・唐谷港子のセリフが印象深かったです。
年齢を重ねることを罪悪のように考える、今の時代の軽薄な風潮を鋭く捉えていました。
50歳を過ぎてもヒアルロン酸注射やリフトアップ施術に夢中になっている女性を軽蔑していたはずの港子が、バイク事故によって変わり果てた姿となった恋人・大月泰生と対面するシーンが心に残ります。
彼の外見ではなく中身を愛していると信じていた港子の偽善が、サービスエリアでの少年の残酷なひと言であっさり崩れ去る場面が圧巻です。
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