悲しみよこんにちは(フランソワーズ・サガン)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

悲しみよこんにちは(フランソワーズ・サガン)

【ネタバレ有り】悲しみよこんにちは のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:フランソワーズ・サガン 1955年6月に新潮文庫から出版

悲しみよこんにちはの主要登場人物

セシル
17歳。本作の主人公。快楽と幸福の追求こそ人生の目的であると思っている。

レエモン
セシルの父親。40歳。やもめ。女好き。エルザという愛人がいる。

アンヌ
レエモンと恋に落ちる女性。30代。理知的で冷静。セシルとレエモンの自堕落な生活を心配している。

悲しみよこんにちは の簡単なあらすじ

「物憂さと寂しさがつきまとって離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しく立派な名をつけていいものか、私は迷う」この有名な書き出しから始まる本書には、17歳の少女の目を通して見た、人間の悲しみ、物憂さ、優しさ、孤独といった繊細な感情が、とても素直に描かれている。18歳の著者の処女作であり、青春文学の永遠の金字塔である。

悲しみよこんにちは の起承転結

【起】悲しみよこんにちは のあらすじ①

父と娘

17歳のセシルは、やもめの父親の元で、毎日幸福に暮らしていました。

父親のレエモンは、40歳ですが、歳の割に若々しく、仕事と女遊びが大好きです。

セシルはそんな父の生き方を理解しており、むしろ積極的に協力しています。

セシルは、誰にとっても華々しくかがやかしい年代であるはずの17歳という年齢に、あまりこだわりを持っていません。

むしろ、世間の人々が「若い」というだけで何かとても価値のあるかのように扱うことに、とても懐疑的です。

セシルは、恋愛や人生といったものに対して、とっくに幻滅しており、身体的な快楽だけが幸福であるという価値観を抱いています。

その夏、セシルと父親は、愛人のエルザも含めた三人で、地中海沿岸の避暑地に遊びに来ていました。

セシルはこの地で、たくましい青年シリルと出会い、愛し合うようになります。

そこへ、亡き母の友人であるアンヌが偶然やって来ます。

聡明だけれどどこか冷たい雰囲気のあるアンヌに、レエモンは心を奪われます。

この、知的で洗練された美しさを持つ女性と結婚したい、と心から願うようになり、今まで関係して来た女性たちを切り捨て、アンヌにプロポーズする決意をします。

【承】悲しみよこんにちは のあらすじ②

セシルのたくらみ

セシルは、口にこそ出さないものの、レエモンとアンヌの結婚に反対でした。

というのも、“あなたのため”と言って、勉強を強要してきたり、シリルと別れるよう助言してきたりする生真面目なアンヌのことが、どうしても好きになれなかったのです。

刺激的な生活を愛するセシルにとっては、アンヌの言うことこそ有害で危険な思想に思えました。

それに、今まで父娘二人で自由気ままにやってきたのに、その暮らしがなくなってしまうであろうことも嫌でした。

セシルは、自分たちの平穏で幸福な暮らしを壊す危険な存在として、アンヌを排除する計画を立てます。

青春特有の残酷さと好奇心をもって、セシルは、シリルとエルザが恋愛関係にあるかのように装い、父を煽ってエルザの元へ向かわせます。

アンヌと結婚したがっているとは言っても、若いシリルに愛人を取られると知って黙っていられる父ではありません。

そのことをセシルはよく知っていました。

セシルの思惑通り、父は、アンヌとの結婚のために一度は切り捨てたはずのエルザと、再び関係を持ってしまいます。

【転】悲しみよこんにちは のあらすじ③

すべてが壊れる

レエモンの過ちを知ったアンヌは、ショックのあまり、車で別荘を去ろうとします。

セシルは、アンヌをガレージまで追いかけ、車の窓越しに彼女に話しかけます。

アンヌの動揺ぶりを見てセシルは初めて自分のしたことの残酷さを理解しました。

自分が攻撃していたのは、「年とった婦人」という抽象的な存在ではなく、生きた、感じやすい人間であるということに、今さら気づいたのです。

セシルは後悔し、泣きながらアンヌにすがり、ゆるしてほしい、行かないでほしいと懇願します。

「私たちにはあなたが必要なの」と。

けれどもアンヌは、「あなたたちには誰も必要じゃないわ」と言い、そのまま車を発進させます。

その日、アンヌは、自動車事故で亡くなりました。

現場は、もともと事故の多い危険な場所だった、とレエモンはセシルに話します。

ですが、セシルは、アンヌが自殺したのではないかと疑います。

賢い彼女は、自分たち父娘に罪悪感を与えないために、事故とも思えるやり方で自殺したのではないか、と、こう考えたのです。

事故であったのか自殺であったのか、それは誰にもわからないことなのでした。

【結】悲しみよこんにちは のあらすじ④

悲しみ

パリでアンヌの葬儀が執り行われ、セシルとレエモンも出席しました。

アンヌの親戚たちは、アンヌの死を不幸な事故だと思っている様子です。

葬儀の場にはシリルも来ていましたが、セシルは、なかば八つ当たりのような気持ちで、彼に対して恨みの感情を抱いており、話しかけることができませんでした。

帰りの車の中で、父娘は手を握り合い、、また二人きりの世界が戻って来ることを確信していました。

それから一ヶ月の間、彼らは昼も夜も一緒に食事をとり、外出もほとんどせず、時々アンヌの話をして日々を過ごしました。

そうして一年も経つ頃には、予感のとおり、すっかり元の放蕩生活に戻っていました。

セシルには新しい恋人ができ、父にも、少しお金のかかる女友達がいます。

けれども何も問題はありません。

「幸福だ」と、セシルは思います。

アンヌがいなくなったあの夏から、もうすぐ一年???。

ベッドの中で、眠れない夜を過ごすとき、セシルの頭に突然アンヌの記憶がよみがえります。

その思い出とともに、押さえようもなく胸の内にわき上がってくる感情に、セシルは名前を付けました。

「悲しみ」と。

悲しみよこんにちは を読んだ読書感想

青春期特有の残酷さと好奇心が、取り返しのつかない結果を生んでしまう、という、みずみずしくも儚くせつないストーリーが胸を打ちます。

ずっとセシルの一人称で話が進むのですが、同世代の作者らしく、17歳の女の子の心の動きがとてもリアルです。

モノローグで自分に対してツッコミを入れてしまう所なんか、「あるある?」と思いながら読みました。

この小説は、発表と同時に世界中でベストセラーになったらしいのですが、きっと、多くの少女と、かつて少女だった大人たちの共感を集めたからだろうと納得できます。

ただ、なんだかよくわからないうちにセシルにふられてしまったシリルだけは、普通に、かわいそうだなと思いました。

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