ホテルローヤル(桜木紫乃)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

ホテルローヤル(桜木紫乃)

【ネタバレ有り】ホテルローヤル のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:桜木紫乃 2013年1月に集英社から出版

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ホテルローヤルの主要登場人物

加賀屋美幸(かがやみゆき)
スーパーの事務員。

田中雅代(たなかまさよ)
ホテルローヤルの経営者。

山田ミコ(みこ)
ホテルローヤルの清掃員。

田中大吉(たなかだいきち)
ホテルローヤル創設者。

ホテルローヤル の簡単なあらすじ

湿原脇の踏み切りを渡って坂道を上った先にひっそりと佇んでいるのが、「ホテルローヤル」です。選手生命を断たれたアイスホッケー選手、父に代わってホテルを切り盛りする娘、夫を養う清掃係、事業を起こし一攫千金を狙う社長。北国に生きる訳ありな男女が入れ替わり立ち替わり訪れるラブホテルの、30年の歴史が紐解かれるのでした。

ホテルローヤル の起承転結

【起】ホテルローヤル のあらすじ①

廃墟に響くシャッター音

加賀屋美幸は短大を卒業してから13年にも渡って、スーパーマーケットの事務を取り仕切っていました。

3年前にこのお店に入社してきたのは、元アイスホッケーのスター選手で怪我によって引退した後に職を転々としていた木内貴史です。

美幸は彼が中学生時代の同級生であることに気付き、間もなくふたりはお付き合いを始めます。貴史は選手時代の交遊関係もほとんど断っていて、部屋で唯一の趣味であるカメラをいじくり回してばかりです。4月のある日に、美幸は彼からヌード写真のモデルを頼まれます。

撮影場所に選ばれた廃墟のラブホテルは白壁が半分以上はがれ落ちていて、草に覆われた看板は「ホテルローヤ」までの文字しか確認出来ません。ふたりっきりの写真撮影が終わった後に帰りの車内で貴史が美幸に語ったのは、雑誌のカメラマンになってもう一度夢をみることです。今まで決してお互いの将来について口に出すことのなかった男の変わりように、美幸は驚くのでした。

【承】ホテルローヤル のあらすじ②

ホテルローヤルの幕引き

ホテルローヤルは今から30年前に、田中大吉が愛人と始めた商売でした。

60代を過ぎて肺を患った大吉が入院してからホテルの管理をするようになったのは、当時高校を卒業して就職先が決まっていなかった娘の雅代です。

以来事務室で寝泊まりするようになり、受け付け業務からベッドメイクに風呂掃除まで全てひとりでこなしています。

29才になった現在ではすっかり客足が伸び悩んでいて、とうとうこの9月で営業を終えることになりました。

飲料水メーカーから酒屋にアダルトグッズ販売会社まで、出入りの業者に連絡して引き取ってもらえるものは殆ど処分します。ホテルを閉めた後のことは税理士さんに頼んでいて、土地と建物の売却先が決まれば建物の取り壊しが始まるようです。1階の車庫に備え付けられた6枚のシャッターを閉め、2階の客室フロアを施錠します。

雅代は鍵を税理士の事務所に届けにいくために、湿原を見下ろす高台から国道へとアクセスを踏み込んでいくのでした。

【転】ホテルローヤル のあらすじ③

ただひたすらに働き続ける

山田ミコがホテルローヤルでパート従業員として働き始めてから、5年の歳月が経とうとしていました。

勤務時間は午前9時から夜中の12時までとハードですが、ひと月の収入は100000円前後にしかなりません。

今年で60才を迎えたミコには、10歳年下の夫・正太郎がいます。

かつてはサンマ漁船に乗った漁師でしたが、ここ10年くらいは職に就いていません。自宅から2キロほど離れた山奥にあるふたりが暮らす家は、ミコの両親が遺したたったひとつの財産です。夫婦には24歳の長男、22歳の次男、20歳の長女がいましたが3人とも中学校卒業後に家を出て以来盆にも正月にも帰省しません。

ある日の休憩時間のこと、ホテルローヤルの事務室にあるテレビの前にスタッフが集まっていました。

流れているのはニュース番組で、ミコの次男が死体遺棄事件の容疑者として報道されています。職場の人たちは責めることもなく明日もまた皆と一緒に働けそうで、ミコは正太郎の待つ自宅までの坂道を下っていくのでした。

【結】ホテルローヤル のあらすじ④

看板職人の夢

42才の田中大吉は切り立った高台のすれすれにたち、180度に広がった湿原のパノラマを眺めていました。看板屋として30才からぼそぼそと個人経営に打ち込んできましたが、ここらで人生を賭けた一発勝負を考えています。同い年の妻やお堅い義父からはまるで理解されない中で、密かに大吉の計画に賛同してくれたのが団子屋の看板娘・るり子です。

時代はまさにバブル経済の真っ只中で、建設会社とリース会社がタッグを組んで郊外のあちこちに建設ラッシュを巻き起こしています。

無担保・無保証でオーナーになれる甘い話でしたが、万が一商売が失敗したら全財産を持っていかれるのも確実です。迷っていた大吉を後押ししたのが、妻子がありながら道ならぬ関係に陥ってしまったるり子の妊娠でした。

つわりで苦しんでいたるり子のために、6000円もするローヤルみかんを百貨店の高級青果店で購入します。

ホテルの名前も決まった大吉は、覚悟を決めて離婚届けと契約書にハンコを押すのでした。

ホテルローヤル を読んだ読書感想

とあるラブホテルの歴史が、時間の流れを遡って映し出されていくストーリーが味わい深かったです。

バブル経済の熱狂の中で産み出されたホテルが、やがては廃墟となっていく運命が哀愁たっぷりでした。

それぞれのエピソードを彩る個性豊かな登場人物たちも、皆欠点だらけですが不思議と憎むことは出来ません。

高級みかんのブランドから名付けられたホテルが、低所得者層の働き先や密会場所として利用されていくのが何とも皮肉です。

いつの時代も変わることのない男女の泣き笑いを、高台から悠然と見下ろすようなホテルローヤルの佇まいが思い浮かんできます。

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