【ネタバレ有り】三毛猫ホームズは階段を上る のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:赤川次郎 2011年2月に光文社から出版
三毛猫ホームズは階段を上るの主要登場人物
片山義太郎(かたやまよしたろう)
妹の晴美・部下の石津・三毛猫ホームズと共に事件を追う刑事。
直井みすず(なおいみすず)
夫の英一と義母のミツ子との関係に思い悩む主婦。
木田安代(きだやすよ)
みすずのパート先の上司。
浅倉綾(あさくらあや)
英一の浮気相手。
近藤(こんどう)
駅前交番のお巡りさん。
三毛猫ホームズは階段を上る の簡単なあらすじ
恋人の予期せぬ妊娠で現金が必要になった大塚信吾が、保険金と土地目当てで雑貨屋を経営する祖父・秀治の殺害を友人の前田哲二に依頼します。前田は犯行現場を主婦の直井みすず見られてしまい彼女の行方を探していきますが、思わぬ事態に巻き込まれていくのでした。
三毛猫ホームズは階段を上る の起承転結
【起】三毛猫ホームズは階段を上る のあらすじ①
直井みすずは義母のミツ子に頼まれていた輪ゴムとビニール紐を購入するために、雑貨店に立ち寄りました。
中では店主の大塚秀治がマスクとサングラスをした男ともみ合いになっており、直後に銃声が響き渡ります。
秀治が倒れると同時にマスクとサングラスが引きはがされて、露わになったのは若い男性の顔です。
直後に駆け付けた駅前交番に勤務する近藤によって刑事の片山義太郎と石津が呼ばれて、みすずは事情聴取を受けることになりました。
みすずは事件よりも口喧しい義母の方が気になっていたために犯人の顔を目撃したことを隠してしまいます。
次の日にみすずが勤務先のスーパーマーケット「Kストア」で遭遇したのは、英一の恋人だと名乗る浅倉綾です。
ショックで呆然としているみすずに、普段は厳しい売り場主任の木田安代は親身になって相談に乗ってくれました。
夫の浮気、義母の理不尽な要求、家庭内での孤独。
全てを吐き出したみすずは、殺人犯の顔も忘れることにします。
【承】三毛猫ホームズは階段を上る のあらすじ②
家でテレビを見ていた直井ミツ子の携帯電話に、「公衆電話」と表示された電話が掛かってきました。
聞き覚えのない女性の声が告げたのは、息子の妻・みすずが度々密会現場に使っているというホテルの場所です。
前々から気に入らなかったみすずを英一と離婚させる絶好のチャンスと睨んだミツ子は、フィルム式のカメラを持ってホテルの裏手に駆けつけます。
現れたのはマスクとネッカチーフで顔を隠した電話の主で、ミツ子はナイフで刺されて亡くなってしまいました。
一方の前田哲二はみすずの居場所を突き止めてホテルに連れ込みますが、彼女の境遇と自身の生い立ちに不思議な共通点を感じてしまいます。
父親の暴力に黙って耐えてきた母親のこと、母を守るために父を包丁で刺して鑑別所送りになったこと、事件がきっかけになって一家離散の憂き目を味わってきたこと。
口封じのために探していたはずのみすずを、何時しか前田は心から愛するようになっていたのでした。
【転】三毛猫ホームズは階段を上る のあらすじ③
母親の死以来自宅に引きこもっていた英一でしたが、葬儀に追われているうちにようやく立ち直っていきます。
挙句の果てには不倫相手の浅倉綾と共に、温泉旅行にまで出掛ける始末です。
ホテルに到着した英一たちを待ち構えていたのは先回りしてやって来たみすずで、浅倉が先日轢き逃げに遭いそうになったり正体不明の強迫メールを受け取っていたために片山と晴美も同行しています。
大浴場で浅倉と一緒になった晴美は、何者かにお湯の中に押し付けられて一時的に気を失ってしまいました。
女湯の前で張り込んでいた片山は、クリーニングカートを押す従業員が出てくるのを見かけます。
ホームズが盛んに鳴き出したために声をかけようとした途端に、カートを置いて逃走してしまいました。
中に入っていたのは浴槽内で気絶させられていた浅倉です。
意識を取り戻した晴美と共に片山は英一と浅倉の客室に向かいますが、英一は既に細いきり状の凶器で心臓を一突きにされて死亡していました。
【結】三毛猫ホームズは階段を上る のあらすじ④
「Kストア」では閉店後の棚卸しで忙しかったために、喪中のみすずも駆り出されていました。
片山はみすずの上司・木田安代と何処かで会ったような気がしていたために、ホームズを連れて店内に張り込んでいます。
台車を軽やかに押す木田と、温泉地のホテルでクリーニングカートを推していた犯人の後ろ姿は瓜二つです。
みすずは機械室に呼び出されていて、木田から全てを告白されました。
かつて暴力を受けていた夫を殺害してしまったこと、交番に自首に行った先で近藤と出会い虐げられている女性たちのために「制裁」を決意したこと。
大塚秀治の殺害現場でマスクとサングラスを拾った近藤は、前田哲二を脅して片山とみすずを消すつもりです。
みすずを守るために前田は拳銃で木田を射殺して、近藤は顔をホームズに引っかかれた末に駆け付けた刑事たちに逮捕されます。
開店前までに何とか棚卸しを終えたみすずは、朝の光を浴びながら笑顔でお客さんを出迎えるのでした。
三毛猫ホームズは階段を上る を読んだ読書感想
マザコン気味な夫といつまでたっても子離れ出来ない義母に挟まれている、直井みすずの鬱屈とした気持ちには共感出来ました。
次から次へと舞い込んでくる不幸な出来事や危険な状況に翻弄されながらも、自分自身の意思で立ち向かっていく姿が強く美しかったです。
登場人物がそれぞれ抱えている、過去に犯した罪や不幸な生い立ちには胸が痛みます。
単純な善悪二元論では片付けることが出来ない、事件の真相にも考えさせられました。
時に暗く時には重くなりがちなテーマを扱いながらも、片山義太郎と晴美の息の合ったコンビと可愛らしいホームズには癒されます。
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