工場(小山田浩子)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

工場(小山田浩子)

【ネタバレ有り】工場 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:小山田浩子 2013年3月に新潮社から出版

工場の主要登場人物

牛山佳子(うしやまよしこ)
工場の印刷課勤務。契約社員。

古笛よしお(ふるふえよしお))
工場の環境整備課勤務。正社員。

牛山(うしやま)
佳子の兄。工場の資料課勤務の派遣社員。

工場 の簡単なあらすじ

正体不明の鳥が飛び交い何を製造しているのかさっぱり分からない、奇妙な工場の内部を3人の男女の目線から映し出した作品です。正社員・契約社員・派遣社員と立場を越えて、それぞれの運命も次第に絡みあっていきます。

工場 の起承転結

【起】工場 のあらすじ①

シュレッダー場に送り込まれる

牛山佳子は大学の文学部で日本語学を専攻して、卒業してからは5つの会社に就職しましたがいずれも長続きしません。

ある時に兄がハローワークで出力してきた求人票を見て、工場の正社員に応募しました。鳥の匂いがする地下室で、午後2時から面接を約束していた採用担当者を待ちます。

現れたのは赤黒く長四角い顔をした、印刷課分室の後藤と名乗る中年男性です。

一通り佳子の今回の志望動機とこれまでの職務履歴を聞き終わった後藤は、正社員ではなく契約社員からのスタートを提案しました。

同じ印刷課分室なからも正社員と契約社員とでは待遇がまるで違ってきますが、今の時期には例え時給制の仕事でも有難い話です。

実務補佐チームという部署に配属された佳子は、作業に関する説明をチームリーダーの逸見という若い女性から教わります。

シュレッダーに紙を入れる、シュレッダーカスが詰まったゴミ袋を捨てる。この工程を午前9時からただひたすらに繰り返していくのでした。

【承】工場 のあらすじ②

孤高のコケ博士

大学でコケの分類学を専攻していた研究生の古笛よしおは、教授の推薦によって工場の正社員採用面接に向かいました。

現れたのは広報企画課の後藤で、挨拶もそこそこに早くも社員証を渡されて入社後の説明を受けます。

新入社員の研修と和睦を兼ねた工場ウォークラリーが始まっても、一回りは年下かと思われるその他のメンバーたちとは一向に打ち解けることはありません。

所属先は環境整備課の屋上緑化推進室で所員は古笛しかいない上に、これといったノルマも締め切りもない漠然とした部署です。

入社予定日が4月1日になりその2週間前に、後藤が自動車で工場全域を案内してくれました。

カラオケや釣り堀に代表されるような遊興施設も多く、社員食堂の他にもステーキハウスに寿司屋やイタリアンと食事には困りません。

何時しか「コケ博士」のニックネームで地元住人に親しまれるようになった古笛は、家族連れを工場に隣接する森に招いてコケの観察会を開いたり住居兼研究室で気の向くまま研究を続けていくのでした。

【転】工場 のあらすじ③

あっという間に派遣に転落

ごく小さな会社ながらも遣り手のシステムエンジニアとして働いていた牛山は、30歳を迎えた時に馘になってしまいました。

恋人が人材派遣会社に勤めていたために、何とか工場の資料課に派遣社員として拾ってもらいます。

担当することになったのは赤ペンで文章の校正をするルーティンワークで、これまで培ってきたパソコンの技術を活かす機会はありません。

手書きの原稿用紙から新聞記事に書籍まで実にたくさんの出力紙とにらめっこして、国語辞典を片手に赤ペンでチェックを入れていきます。

余りの作業の単純さと間仕切りで区切られた安心感から、近頃では勤務時間中に眠りこんでしまうこともしばしばです。

牛山が何回読んでも意味不明な文章の中には、洗濯機トガゲや工場ウを始めとするこの工場しか棲息しない稀少生物の生態系についてのレポートも含まれていました。

誰が誰のために書いているのか、何故莫大な人件費を投じて校正させるのか、工場は一体何を作っているのか。

疑問は次々と涌いてきますが、一向に解き明かされることはありません。

【結】工場 のあらすじ④

不条理を産み出す工場

貯まっていた有給を消化するように後藤から指示を受けた佳子は、休みを取って無限に広がるかのような工場の中を歩いてみました。

ほっと一息つくために立ち寄ったアメリカ発祥の有名コーヒーチェーン店の店内で目撃したのは、兄とその恋人の姿です。

兄がシステムエンジニアを辞めて工場の派遣社員になっていたことを盗み聞きして、俄にショックを受けてしまいます。

ふたりに気付かれないように店を出た佳子は、鳥を撮影している古笛と出会いました。

古笛が15年もの間この工場で働いていること、コケ観察会は子供たちに好評ながら肝心の緑化計画の方はまるっきり進展していないこと。

古笛と一緒にお昼ご飯を食べて不可解な彼の経歴を聞いた次の日、佳子はいつものように印刷課へ出勤します。

作業場に向かう彼女がすれ違ったのは、黒い鳥を羽交い締めにした中年の女性です。

何故地下に生き物がいるのか疑問に思った佳子が紙をシュレッダーにかけた瞬間、彼女自身も黒い鳥になっていたのでした。

工場 を読んだ読書感想

住宅街やマンションばかりでなく、ボーリング場からレストランまで何でもありの工場が楽し気です。

見たこともないような鳥たちが敷地内で独自の進化を遂げている猥雑さには、ガラパゴス諸島を思い浮かべてしまいました。

まるで意味のない記号や数字が書かれた紙きれをシュレッダーに入れ続けていく牛山佳子の姿には、神々の逆鱗に触れたシジフォスのようでもあります。

人間が造り上げたはずの工場が、何時しか人間そのものを支配してしまう不気味さをがたっぷりです。

働くことについて疑問を抱いていた佳子に降りかかる、クライマックスでの不条理な現象が圧巻でした。

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