星の子(今村夏子)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

星の子

【ネタバレ有り】星の子 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:今村夏子 2017年6月に朝日新聞出版から出版

スポンサーリンク

星の子の主要登場人物

林ちひろ(はやしちひろ)
中学三年生。子供の頃から体が弱く、そのせいで両親が新興宗教にのめりこむようになる。彼女自身も宗教団体で活動をしている。

両親(りょうしん)
ちひろの両親。優しく仲の良い両親。新興宗教にはまるあまり、仕事を辞め、奉仕活動をライフワークとしている。

林まさみ(はやしまさみ)
ちひろの5歳年上の姉。新興宗教にのめりこむ家族に反発し、家を出る。

雄三おじさん(ゆうぞうおじさん)
ちひろの叔父。宗教にのめりこむ一家を心から案じている。

なべちゃん
ちひろの友人。ドライで優しい。人間関係の狭いちひろの、たった一人の外の世界の友人。

星の子 の簡単なあらすじ

体の弱かった娘ちひろの健康を案じて、両親は怪しい新興宗教にはまっていくー…。新興宗教にのめりこむ家族の崩壊と、周囲の人々への波紋、そして成長してゆく娘の姿を静かなタッチで描きだします。発売当初からそのショッキングな内容に話題騒然となった、157回芥川賞候補作です。

星の子 の起承転結

【起】星の子 のあらすじ①

「金星のめぐみ」、そしてカルトにはまっていく家族

虚弱児としてこの世に生を受けたちひろ。

両親は体の弱い娘を心配して、病院を駆け巡る日々でした。

生後半年のある日、体にあらわれたひどい湿疹に思い悩む両親。

生命保険会社のサラリーマンだった父親が、職場でぽろりと漏らした相談に、同僚の落合さんが「水を変えてみては」とすすめてきます。

両親は藁にもすがる思いで、落合さんからもらった「金星のめぐみ」という水を、ちひろの体に塗布します。

これが功を奏し、ちひろの湿疹はすっかり治ってしまうのです。

「金星のめぐみ」のパワーに感動した両親は、それをすすめてくれた落合さんにも心酔し、それと同時に落合さんが入信している新興宗教にものめりこむようになっていくのでした。

ある日落合さんの家に招かれたちひろ一家。

歓待に両親とちひろは大喜びですが、姉のまさみだけは、始終つまらなさそうにしています。

訪問の際、幸せで順風満帆に見えた落合さんに、実は口をきくことのできない息子がいると知らされます。

ひょんなことで、彼が実は喋れることに気が付いたちひろ。

帰り際にちひろを睨み付ける落合家の息子の姿がありました。

それは「誰にも言うなよ」という暗黙のメッセージでした。

【承】星の子 のあらすじ②

閉じていく家族と、家を出る姉

小学生になったちひろには、友達ができませんでした。

宗教一家なので「あの家の子と遊んではいけません」と言われることもありましたが、ちひろ自身も浮いた存在で、周囲の子供にくらべるとずいぶん幼い印象を与えるのでした。

体の弱いちひろを心配するあまり、両親は親離れができません。

異常に親子の仲が良いのも、友達を遠ざける要因でした。

そんなちひろに初めてできたまともな友達が「なべちゃん」です。

転校生で、ドライな物怖じしない少女でした。

ちひろ自身の問題を指摘した人は、なべちゃんが初めてでした。

なべちゃんとの縁はちひろが中学生になっても続くことになります。

ある日、一家に波紋を起こす出来事が起こります。

ちひろと姉のまさみをかわいがってくれている、母親の弟である雄三おじさんが家を訪ねてきて、家にしのびこんで「金星のめぐみ」をすべて公園の水道水と入れ替えたと告白するのです。

「騙されているから目を覚ましてくれ」と訴える雄三おじさんを、激怒して追い返す両親の姿がありました。

小学校高学年になったちひろ。

相変わらず学校では浮いた存在です。

何の疑いもなく宗教の集会に通っていますが、年齢を重ねるごとにそこでの人間関係も少しずつ変化が起き始めます。

両親はいつしか仕事を辞め、教団からの紹介先で働き始めます。

奉仕の対象も、体の弱いちひろから、宗教団体へと変わって行きます。

家も次第に小さいものに引越しする一家に、ある日事件が起こります。

高校生になった姉のまさみが、家を出たのです。

最後までカルト宗教に馴染めなかった姉の最後の手段でした。

家出の前日、両親の洗脳を解くために、水の入れ替えを計画し、雄三おじさんに協力していたのは、実は姉だったということを知るのでした。

【転】星の子 のあらすじ③

ちひろの恋と、外の世界からの目

時は流れ、中学3年になったちひろに好きな人が出来ます。

大好きな俳優に似た南先生という若い男性教師です。

「あの先生のどこがいいの」と案じる友人なべちゃんの言葉に聞く耳を持たず、ちひろは南先生のプロフィールを集め、先生の似顔絵を描くことに没頭するのでした。

ある日クラス活動で帰りが遅くなったちひろとなべちゃんたちを、南先生が車で家まで送ってくれることになります。

緊張してろくに話せないちひろ。

家の近くまで来たとき「へんなのがいるから車から降りるな」と南先生が慌てて引き留めます。

南先生が指さしたのは、緑のおそろいのジャージを着て公園のベンチに腰かけた、ちひろの両親の姿でした。

その夜ちひろは初めて、口がきけるのに喋れないふりをしていた、落合さんの息子の気持ちを初めて理解します。

翌日、南先生に「昨日の不審者は自分の両親です」と告げるちひろ。

それを知った南先生は、ちひろにきつい態度をとるようになります。

傷ついたちひろは、他者から見た自分たちの姿を初めて知ることになるのでした。

【結】星の子 のあらすじ④

成長する娘の見つめる星空

親戚の法事の日、一人で出席したちひろ。

久しぶりに会う雄三おじさんと、いとこのしんちゃんから、「高校生になったら家を出て、おじさんの家から高校に通わないか」と誘われるのでした。

おじさん一家は、ちひろが両親と距離をとったほうがいいと強くすすめ、そのあと何度も自宅に説得に訪れるのでした。

中学3年生の冬、宗教団体「星の子」の年に一度の研修旅行が行われます。

全国の各支部から信者たちが集うこの旅行に、ちひろは両親と参加し、同じ学校の同級生、春ちゃんは、信者ではない交際相手を研修旅行に連れてきていました。

研修中、「宣誓の時間」という、信者たちが舞台上で宣言を表明するイベントで、春ちゃんの彼氏は「好きなひとが信じる者を、一緒に信じたい」と堂々と宣言します。

その夜、高原に散歩に出たちひろと両親。

外は一面の星空です。

一緒の瞬間に流れ星を見ようと空を見上げるのですが、タイミングがあいません。

ちひろの見ている星を両親は見ておらず、両親の見ている星を、ちひろはどうしても見つけることができません。

その夜、3人はいつまでも星空を眺めつづけるのでした。

星の子 を読んだ読書感想

カルト宗教を信仰する家族のもとで、成長していく娘の姿を描いた小説です。

カルトを真っ向から否定するのではなく、思春期の少女の繊細な感情を通し、自分と自分の家族という内側の世界と、学校や友人という外の世界を描くことによって、読者の心に静かな波紋を起こします。

ラストは、ちひろの自立への微かな希望を予感させて、物語は終わります。

打ちのめされるようなテーマですが、読後は静かです。

今村夏子の文体は独特のユーモアがあり、人物造形も魅力的です。

特にこの小説では、友人の「なべちゃん」の鋭く優しい視線が、ちひろのどうしようもない運命を救い、外の世界に目を開かせるための救いになっています。

寡作ではありますが、作品の質はどれも素晴らしく、今後の作品に注目すべき作家です。

コメント