「アンデッドガール・マーダーファルス1」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|青崎有吾

「アンデッドガール・マーダーファルス1」

著者:青崎有吾 2015年12月に講談社から出版

アンデッドガール・マーダーファルス1の主要登場人物

輪堂鴉夜(りんどうあや)
主人公のひとり。不死の美少女で、怪物専門の探偵。現在、首から下がない。

真打津軽(しんうちつがる)
主人公のひとり。鳥籠使いと名乗る半人半鬼の青年。鴉夜の助手。

馳井静句(はせいしずく)
クールなメイド。鴉夜に仕える一族の生き残り。鴉夜には忠誠と愛を誓っているものの、津軽のことをまぁまぁ嫌っている。

ジャン・ドゥーシュ・ゴダール(じゃん・どぅーしゅ・ごだーる)
吸血鬼。人間に歩み寄る人類親和派。妻が殺された事件の解明を鳥籠使いに依頼する。

ボリス・クライブ(ぼりす・くらいぶ)
変わり者の科学者。故人。人造人間を生み出そうとしていた。

アンデッドガール・マーダーファルス1 の簡単なあらすじ

十九世紀末、ヨーロッパ。

怪物というおとぎ話に出てくるような、けれども超常的な能力を持たない異形が未だ蠢いている時代に東洋人の探偵がヨーロッパで活動していました。

通り名は「鳥籠使い。」

首だけの探偵・鴉夜とその助手・津軽、そしてメイドの静句。

この3人の目的は奪われた鴉夜の身体を奪還すること。

そのために犯人の手がかりを求め、西へ東へと怪物が起こした事件を解決していたのです。

アンデッドガール・マーダーファルス1 の起承転結

【起】アンデッドガール・マーダーファルス1 のあらすじ①

鬼殺し

その日も津軽は見世物小屋で怪物殺しをしていました。

舞台袖で銅鑼が鳴り、金網越しの観客席からは下品な歓声が上がります。

講釈師が喋るなか、出番が終わった津軽は自分の楽屋に戻りました。

津軽のいる見世物小屋は明治政府が執り行った怪物一掃という怪物退治で生き残った怪物たちを集め、悪趣味な見世物をしているところです。

津軽もまた怪物のひとりに数えられた青年で、与えられた名は「鬼殺し」でした。

それは奇しくも津軽が所属していた怪物退治の部隊と同じ名でした。

元々津軽は怪物退治の隊員でしたが、ある日、騙し討ちに遭ってしまい、その時に鬼の細胞を混ぜられてしまったのです。

何とか1人逃げ延びることができたものの、津軽の寿命は残り少なくなっていました。

鬼に呑まれつつあるなら、愉快に死にたい。

そう思った津軽は悪趣味な舞台の上で鬼となり、安心している下衆な客たちを巻き込んで血の惨劇をつくろうと企んでいました。

ところがそこに首だけの不死の少女・鴉夜と彼女に仕えるメイド・静句がやってくるのでした。

【承】アンデッドガール・マーダーファルス1 のあらすじ②

吸血鬼

津軽に殺されようと思っていた鴉夜を説き伏せ、各々の目的のためにヨーロッパにやってきた鴉夜一行あらため鳥籠使いたちは1898年、フランスで吸血鬼殺しの事件を引き受けます。

依頼主はジャン・ドゥーシュ・ゴダール(以下、ゴダール卿)です。

その日、ゴダール卿は息子ラウールを連れて鹿狩りをしていました。

人類親和派であるゴダール卿は人間の血の代わりに動物の血を飲んでいたのですが、その隙に寝室でくつろいでいた妻が殺されてしまいます。

ゴダール卿は犯人は吸血鬼ハンターだと主張するものの、鴉夜はその可能性を否定します。

そして事件が起こる前日、ゴダール卿がハンターに襲われたことを知った鴉夜は津軽を連れてその現場に赴きました。

そこでフーゴという青年からゴダール卿を襲ったハンターのことを知ると、鴉夜は関係者をゴダール卿の書斎に集めて推理をします。

その推理によって導かれた犯人はラウール。

彼は吸血鬼のプライドにこだわるあまり、母親を手にかけたのです。

もうこんな家族いらない、そんなことまで言い捨てるラウールに津軽が立ちはだかるのでした。

【転】アンデッドガール・マーダーファルス1 のあらすじ③

人造人間

1898年、ベルギーにいた鳥籠使い一行に彼女たちを追いかける少女新聞記者・アニーから手紙が送られてきました。

被害者の名前はボリス・クライブ、首を何者かに持ち去られた事件なのですが、死体発見現場は地下の研究室で、そのときは密室だったのです。

しかもその密室には彼が生み出した人造人間がいたのですが、その知能は赤ん坊程度です。

能力的には犯行は可能であるものの、殺人のことさえ分からない人造人間ではどう考えても博士を殺せるとは思えません。

推理しか娯楽がない鴉夜は津軽と静句をつれて現場に向かうと、そこには件の人造人間が地下室の片隅で縮こまっていました。

そこから事件の関係者が集まり始め、灰色とあだ名をつけられたグリ警部とともに捜査を始めます。

捜査はリナという博士の助手の犯行に思われたそのとき、津軽の何気ない一言から博士の首の行方を鴉夜は閃きます。

博士の首は他ならぬ人造人間の首になっていたのです。

それを告げられた人造人間は自分が何者であるのか、苦悩するのでした。

【結】アンデッドガール・マーダーファルス1 のあらすじ④

ロンドンへ

ベルギーの事件が一件落着した後、鴉夜はグリ警部が持っていた杖に驚きの声を上げます。

それは鴉夜の身体を持ち去った犯人のひとりが使っていた杖と同じデザイン、同じ名前の彫刻がされた代物だったからです。

グリ警部曰く、「ロンドンの老舗のもの」と教えられた鳥籠使いたちは目的地をロンドンにします。

一方、町を離れた人造人間は大自然のなかで途方に暮れていました。

もはや人造人間にボリスの自我はなく、リナは研究心はあったものの、人造人間を恐れていました。

居場所のない人造人間は朝焼けを見ながら初代の人造人間と同じく、南極を目指してそこで終わりを迎えようと考えていたところ、声をかける者たちが現れました。

そのなかで一番年老いた男性である老紳士が人造人間に手を伸ばし、名前を授けます。

ヴィクターと呼ばれた人造人間はその誘いに応じる代わりに、彼ら彼女らの名前を尋ねます。

カーミラ、アレイスター、ジャック、そして最後に老紳士が教授と名乗るのでした。

アンデッドガール・マーダーファルス1 を読んだ読書感想

面白い、ただその一言に尽きます。

はっきり言ってアンデッドガール・マーダーファルス(以下、アンファル)の設定や世界観はライトノベルのようです。

吸血鬼や人魚などの怪物たちが蠢く世界、生首だけの探偵少女、海外文学作品の主人公や登場人物たち。

アンファルはまるで中学生の感性を彷彿とさせる世界観なのにワクワクしてしまうんです。

アクションがあるのも面白さが色褪せないポイントですが、ミステリーがしっかりしているのも忘れてはいけません。

なぜ吸血鬼が無抵抗で殺されたのか、なぜ密室で博士だけの首がなくなったのか。

その謎解きには怪物の生態・特徴が欠かせないのですが、「なるほど!」と頷けるものばかりです。

「ミステリー(トリック)としては二番煎じ」という意見もあるようですが、作者さんの「面白くしてやるぞ!」という熱意が伝わる作品です。

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