「求めよ、さらば」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|奥田亜希子

「求めよ、さらば」

著者:奥田亜希子 2021年12月にKADOKAWAから出版

求めよ、さらばの主要登場人物

辻原志織(つじはらしおり)
三十四歳。結婚して七年。IT関係の翻訳を請け負っている。旧姓は高野。

辻原誠太(つじはらせいた)
志織の夫。プログラマー。趣味は写真。大学時代、志織と同じ居酒屋でバイト。

竹内杏奈(たけうちあんな)
志織の友人。大学時代、志織と同じ居酒屋でバイト。

本島衿子(もとじまえりこ)
志織の友人。大学時代、志織と同じ居酒屋でバイト。

辻原隼太(つじはらはやた)
誠太の弟。大学生。

求めよ、さらば の簡単なあらすじ

三十四歳の志織は、結婚して七年。

三年前から不妊治療を続けていますが、良い結果に結びつきません。

夫の誠太はやさしく、不妊治療にも協力的です。

ふたりの肉体には欠陥がないのに、妊娠しないのは、相性が悪いのかもしれない。

そう考えた誠太は、ある日突然、家を出ていくのでした……。

求めよ、さらば の起承転結

【起】求めよ、さらば のあらすじ①

不妊治療

志織は在宅でIT関係の翻訳の仕事をしています。

夫の誠太はプログラマーとして、ソフトウェア開発会社で働き、写真を趣味としています。

ふたりは三年前から子供をつくろうと取り組んできました。

不妊治療のため、産婦人科を渡り歩いていまは三件目、超人気の産婦人科にかよっています。

誠太は不妊治療に協力的です。

検査をしましたが、夫婦ともに異常はないとのことでした。

けれどタイミング法でやってみても、やはり妊娠しないのです。

そんなとき、志織の友人である杏奈と衿子が遊びにきました。

ふたりとも、志織が大学時代に居酒屋でバイトしていたときの仲間です。

実は誠太もそのバイト仲間なのです。

当時から誠太は物静かな男でした。

女子三人のうち、独身で恋多き女の杏奈だけがお酒を飲み、衿子と、妊娠判定待ちの志織は、お酒を飲みません。

と、ふいに衿子が妊娠中であることを告白します。

広島に住む銀行員の彼氏と、長距離恋愛中に、妊娠したのです。

志織はひどくショックを受けるのでした。

結局、志織が妊娠しないまま、季節が移ります。

志織は、雑誌編集者の妹から、開妊ヒーリングセラピーを勧められます。

そんなのはジンクス程度のことと割り切って出かけていきました。

すると、水の流れが逆流するようにエネルギーが内に向いている、とのことで施術をほどこされ、気分がよくなったのです。

セラピストの勧めにより、志織はひさしぶりに夫と旅行に出かけようと思うのでした。

【承】求めよ、さらば のあらすじ②

離婚届

志織と誠太は伊香保温泉へ行くこととし、その途中で、誠太の祖父母の墓参りをします。

誠太が子供のころ、両親は病身の弟の介護に専念する必要がありました。

そのため誠太は一時期、祖父母の家に預けられたことがあり、かわいがられたのでした。

墓参りのあと、誠太は祖父母の実家を見に行きますが、なぜか自分の実家には行きたくないようでした。

伊香保温泉では、子宝のご利益のある伊香保神社に参拝し、子宝の湯にもつかりました。

その晩、宿の部屋で食事しながら、お酒に弱い誠太は、いつもよりビールを多く飲みます。

彼は「志織に子供ができないのは僕のせいだ」と言って、志織に謝ります。

そして、温泉から帰って二週間後、誠太は離婚届と手紙をおいて、家を出ていったのです。

手紙で誠太は、かつて大学生のころ、バイト先の送別会で、志織に惚れ薬を飲ませたことを告白し、謝罪していました。

さて、そこからずっと時間をさかのぼります。

大学生の誠太は、居酒屋でバイトしています。

彼は同じ店でバイトする志織のことが気になって仕方がありません。

あまり本を読まない誠太ですが、志織が読む本をチェックして、自分も読むようにしています。

志織は人を気遣い、明るい面を見せています。

しかし、陰にいくと、意外に暗い顔をしています。

そのギャップにまいってしまった誠太でした。

あるとき、志織は、付き合っていた大学生に別れを切り出したようです。

しかし相手は諦められず、バイト先まで志織を訪ねてきます。

そのことで相談を受けた誠太は、化粧を濃くして、ドクロの服を着て、彼に会ってみたら、とアドバイスするのでした。

【転】求めよ、さらば のあらすじ③

惚れ薬

志織はゴスロリ姿で男に会い、無事に分かれることができました。

志織は誠太に感謝し、ふたりの距離が縮まります。

ふたりはクリスマスの少し前、バイト仲間が参加する、アマチュアバンドたちのライブに行きます。

仲間のバンドの、一つ前に演奏したバンドのメンバーのひとり、コウが、志織に目をつけたようで、アドレスを交換してきました。

年が明けると、大学生になった弟の隼太が、誠太の部屋に泊まりに来ました。

弟は小さなころは入院を繰り返していました。

両親は隼太の世話に集中するために、誠太を祖父母の家に預けたものでした。

反抗期にもさまざまな問題を起こした弟でした。

その隼太が、大学を出たら自分は地元に残って両親の面倒をみる、と言っています。

そうして、親を捨てて東京に逃げる兄を皮肉るのでした。

さて、コウはどんどん志織にアタックしてくるようで、バイト先の居酒屋へもやってきます。

志織のことが大好きな誠太は気が気でなりません。

しかも、もうじき会社勤めをするためにバイトをやめ、引っ越すのです。

そうなると志織にも会えなくなるかもしれません。

誠太は、ネットで注文して、惚れ薬の作り方キットを取り寄せました。

ただの水を、儀式によって惚れ薬に変化させる、マジックのようなものです。

そうやって作った惚れ薬を、誠太は、バイト先の送別会のとき、すきを見て、志織の飲み物に入れたのです。

すると、しばらくして、志織のほうから「私と付き合って」と告白してきたのでした。

【結】求めよ、さらば のあらすじ④

不器用なふたり

志織は杏奈といっしょに、衿子の新居を訪ねます。

生まれて四か月の桔平くんを渡され、あやそうとするうち、涙がこみあげてきて止まりません。

志織はふたりに、誠太が出ていったことを初めて告げます。

そして、誠太がいまやっているらしいインスタのことも話します。

郷里の祖父母の家にいるのではないかと思っているけれど、訪ねて行って、会ってくれなかったらどうしよう、と怯えていることも話します。

志織は、誠太と会ってからのこの十二年間、自分が彼のことをなにも見ていなかったような気がしています。

翌日、志織は、いまのマンションに引っ越す前にすんでいたところや、独身時代に住んでいたところを見てまわりました。

すると、その時々の、誠太のさまざまな表情を思いだしました。

また、彼が自分のために泣いてくれたとき、この人と一生いっしょにいたいと思ったことも、思いだしたのでした。

数日後、バイト時代にバンドをやっていた人と連絡がついて、会いました。

彼から、誠太が、バイト時代から志織のことを好きだったのだ、と聞かされます。

志織は、誠太の故郷の群馬県に行き、彼が写真に撮った山に登り、彼の祖父母の家を訪ねました。

その晩は会ってもらえませんでしたが、翌日は会って、とことん本音で話し合いました。

そしてとうとう、よりを戻したのでした。

求めよ、さらば を読んだ読書感想

世の中に、子供がほしいと思いながら、恵まれない夫婦というのは、けっこういるそうです。

そうした夫婦が子供をさずかるために行うのが不妊治療です。

これが肉体的にも、精神的にも、また経済的にも、大変なのだそうです。

本書の初め、第一章でも、主人公のひとりである妻、志織が、その大変さを味わうシーンが多く見られます。

苦労して、それで子供がさずかるならまだしも、何度こころみても一向に妊娠しません。

志織の落胆や苦悩が、読んでいるこちらにも伝わってきて、読み進むのがつらい面がありました。

しかし、第二章から、かなり作品の色合いが変わります。

純粋な恋愛感情をもりこんだ、文字通りのラブストーリーへと変わっていくのです。

主人公である誠太の純な気持ち、志織の純な気持ち、それらに触れているうちに、つい涙腺がゆるくなってしまいました。

ふたりは不器用で、お馬鹿で、それゆえになんともかわいらしいのです。

愛すべきカップルだと感じたものでした。

年齢の少し上の人のためのラブストーリーとして、お勧めの作品です。

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