「ラストは初めから決まっていた」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|小手鞠るい

「ラストは初めから決まっていた」

著者:小手鞠るい 2021年1月にポプラ社から出版

ラストは初めから決まっていたの主要登場人物

堂島ことり(どうじまことり)
岡山大学文学部三回生。

真壁時生(まかべときお)
岡山大学経済学部三回生。ことりの元彼。

熊野涼介(くまのりょうすけ)
岡山大学経済学部三回生。時生の友人。

流山凛子(ながれやまりんこ)
五十八歳。アメリカ在住の日本人作家。夏季特別講座の講師。

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ラストは初めから決まっていた の簡単なあらすじ

大学生の堂島ことりは、恋人にふられたばかりです。

夏季に開催された小説創作講座に参加すると、元彼の友人である、熊野涼介がいるではありませんか。

災難と感じつつ、講師から指示された通り、自分の失恋体験を小説に書いていきます。

ところが、熊野涼介の書いた小説によって、元彼がことりと付き合っていたのは、本命の女を落とすためだったことを知ります。

つまり、ことりは当て馬だったのです……。

ラストは初めから決まっていた の起承転結

【起】ラストは初めから決まっていた のあらすじ①

小説を書き始める

堂島ことりは、岡山大学文学部の三回生です。

先日、つきあっていた男性、真壁時生にふられたばかりです。

もっと好きな人ができた、というのが彼の言い分でした。

失恋のショックを引きずりながら、ことりは夏季特別講座を受講します。

それは小説創作の講座で、講師はアメリカ在住の日本人作家、流山凛子です。

文学部を対象にしたその講座に、なぜか経済学部の熊野涼介が参加しました。

彼は、時生の友人でもあります。

ことりは災難だと感じます。

さて、凛子先生の出した宿題により、ことりたちは、自分の体験をもとにした恋愛小説を書くことになります。

まずは「起」の部分。

ことりは時生との出会いを書きます。

小学六年生のとき、母親が亡くなってことりが泣き暮れていたとき、ハンカチを差し出してくれたのが時生でした。

それから七年後、岡山大学に入学した年に、学校内でふたりは再会したのでした。

「起」の部分を書いて講座に出ると、くじ引きでペアを組まされることになりました。

ペア同士で互いの作品を読むのです。

ことりの相手は、なんと涼介となったのでした。

彼の作品を読みました。

子供のころ、雌の捨て犬を拾ってかわいがったこと。

それが彼のコイだったこと。

やがて、ガンのために犬が亡くなってしまい、とても悲しかったこと。

そういったことが書かれていました。

ことりは彼の作品を読んで、つい、もらい泣きしたのでした。

【承】ラストは初めから決まっていた のあらすじ②

「承」へと進む

ことりが書いた「起」について、涼介はアドバイスします、時生と大学で再会した件は、「承」にまわしたほうがよいと。

ことりはそのアドバイスに従って「起」を直し、苦心して「承」を書いていきます。

凛子先生は、生徒たちの「起」を読んで、新鮮であることは褒めたものの、「言葉をもっと大切にしなさい。

書く前にもっと呻吟しなさい」とアドバイスします。

そして、司馬遼太郎の「竜馬が行く」の一説を涼介に朗読させます。

彼は高校時代に演劇部員だったのです。

涼介の朗読する声は、ことりを魅了します。

ことりは「声におちて」しまったのでした。

さて、宿題の「承」の読み合わせが行われました。

ことりは涼介の作品を読みます。

まるでエッセイのような文体で書かれています。

愛犬が死んだあと、彼は恋をしなければいけない、と思い、友人のマカベに相談します。

マカベはモテる男なので、こういう相談にもってこいだと思ったのです。

マカベには、大学の一年先輩に本命の好きな女性がいました。

彼女にはカレシがすでにいました。

その女性をおとすために、マカベはそこそこに好きな女の子を当て馬として交際しました。

マカベは、当て馬の彼女を、本命の彼女に見せつけ、とうとう本命の彼女をおとすことに成功したのでした。

涼介のこの「承」は、明らかにことりの元彼のことを書いています。

ことりはひどいショックを受けたのでした。

【転】ラストは初めから決まっていた のあらすじ③

思いがけない「転」

涼介の「承」を読んでからというもの、ことりは混乱しています。

自分の「承」を修正しようと思います。

また、凛子先生の添削には、「ここには作者の秘密がない」とあったので、そのアドバイスに従うことにします。

ことりにとっての秘密は「ラブソングなんて大嫌い」ということでした。

時生のことを憎んでいない、なんて、うわべだけのきれいごとでした。

ことりは時生も、涼介も、憎いのです。

その憎しみから目をそらさず、ことりは「承」として、時生との別れのシーンを書きました。

ことりは凛子先生の言葉を思い出します、「小説は書いただけでは小説ではない。

読まれて初めて小説になるのだ」と。

ことりは書き上げた「承」を涼介に読ませてやる、と決意するのでした。

と、その時、涼介から「会いたい」と連絡がきました。

夜も遅いですが、すぐそこまで来ているというので、会いに行きます。

そのときのことは涼介の「転」に書かれています。

涼介は目の病気がひどいのです。

このままでは失明するので、治療のために渡米するのです。

涼介は、夜、ことりに会って、そのことを打ち明けました。

ことりは、先日の朗読の時、涼介の声におちたことを告白します。

そして、涼介がアメリカでの手術が成功したら、いっしょに王寺町に行くことを約束します。

王寺町は、涼介が少年時代をすごした町なのです。

ことりは涼介のほっぺにキスをしました。

【結】ラストは初めから決まっていた のあらすじ④

再会

土曜日を利用して、ことりは大阪へ行きます。

すっかり自分が恋におちたことを自覚しています。

王寺に行きました。

雪丸ロードを歩き、達磨寺で絵馬を買って「涼介の目が治りますように」と書きました。

旧家の谷邸を見てから駅にもどろうとして、道に迷いました。

そこで見つけたのが「森の庭」カフェでした。

カフェでおいしいスイーツを食べ、ぜひとも涼介といっしょに来ようと思うのでした。

帰宅して「転」を書き上げたことりは、翌日、大学に行きます。

しかし、涼介は来ません。

凛子先生を経由した手紙によると、急遽手術が決まったので、アメリカに行くことになったそうです。

ことりは講義を放り出して空港へ向かいます。

創作講座の単位を落としてもいい。

いま涼介に会いに行かなかったら、自分は人生の単位をおとしてしまう、と思うのでした。

涼介の「結」には、結末が書かれています。

アメリカでの手術は成功し、彼は王寺町の西にある明神山の頂上で、ことりを待ちます。

ことりはやってきます。

実は一年前、成田空港へいった彼女は、飛行機をまちがえたために、涼介に会えなかったのでした。

一年ぶりに涼介に再会したことりは、自分の恋心にきっちりと目を向けることができるのでした。

ラストは初めから決まっていた を読んだ読書感想

読み終わっての印象は、非常に甘い恋愛小説だということでした。

元カレにとって、自分は本命を落とすための当て馬だった、という情報が、主人公の女性を苦しめます。

また、小説講座の講師によるきびしい指摘もまた、彼女を追いこみます。

しかしそれらの苦悩は、言ってみれば、幸せな結末に至るための、産みの苦しみみたいなもの。

最後には、きちんと甘くて幸せな結末が待っているのです。

そういう意味で、この作品は、ど真ん中ストライクの恋愛小説と言ってよいのではないでしょうか。

人間の醜さを鋭くえぐった文学も、それはそれでよいのですが、たまにはこういうハッピーエンドで終わって、よかったよかった、という恋愛小説を読むのも、なかなかに悪くないです。

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