著者:樋口明雄 2016年10月に新潮社から出版
炎の岳の主要登場人物
名前(ふりがな)
説明
星野夏実(ほしの なつみ)
南アルプス山岳救助隊員。相棒の山岳救助犬のボーダーコリー、メイと一緒に北岳を拠点に山岳救助に日々明け暮れている。共感覚という特殊な能力を持っている
神崎静奈(かんざき せいな)
星野夏実の同僚。相棒犬はジャーマンシェパードのバロン。空手の名人。
大村翔太(おおむら しょうた)
小学6年生。友人の家に遊びに行く途中で誘拐される。父の大村昌義は衆議院議員選挙に出馬中。
荻島沙耶(おぎしま さや)
登山サイト「やまたび」で見た山岳ツアー募集に参加するため新羅山に登る。父は火山学者の榎田智司
炎の岳 の簡単なあらすじ
「幻の名峰」として最近人気が出てきた新羅山は登山客で賑わっています。
そんな中突如として群発地震が発生しますが、行政は観光業への影響を懸念し火山学者の警告を黙殺、やがて噴火が始まり、星野夏実と神崎静奈は相棒犬と共に救助に向かいます。
一方、新羅山には桜井直人と杉本佳菜子に誘拐された大村翔太も向かっていました。
炎の岳 の起承転結
【起】炎の岳 のあらすじ①
南アルプスの北岳を拠点にしている山岳救助隊員の星野夏実と神崎静奈はそれぞれの相棒犬、ボーダーコリーのメイとジャーマンシェパードのバロンを連れて岐阜県と富山県の県境付近にある活火山、新羅山に向かう途中で交通マナーの悪い黒いワゴン車を見かけます。
新羅山に到着した夏実たちはさっそく新羅山に登ってみました。
共感覚のある夏実は活火山の放つ怒りの感情のようなオーラを感じ、なんとなく不安な気持ちになるのでした。
同じ頃、荻島沙耶は山サイトでメンバーを募集していた新羅山登山ツアーに参加するため、登山口付近のロッジに到着し、ツアーメンバーと初顔合わせをします。
ハンドルネームしか知らなかった者同士のグループで登ることに、若干の違和感と不安を覚えつつも沙耶は登山を開始するのでした。
一方、新羅山の麓に広がる別荘地の一角には、夏実たちがみかけたあの黒いワゴン車が停車していました。
この車でやってきたのは誘拐犯の男女二人組、桜井直人と杉本佳菜子、そして彼らに誘拐された少年、大村翔太だったのです。
【承】炎の岳 のあらすじ②
桜井直人は暴力団の下っ端構成員で違法薬物の取引で生計を立てていました。
ある日直人は違法カジノで知り合った岡田という男に、違法薬物の横流しを持ち掛けられます。
金に目がくらんだ直人は取引に応じますが、それが組の上層部の知るところとなります。
「ひと月以内に掠め取った400万円と詫び料100万円を用意しろ」と命じられた直人は、恋人の杉本佳菜子と岡田と共謀して衆議院議員選挙に立候補中の大村昌義の息子、翔太を誘拐し、新羅山の麓にある岡田の別荘にやってきたのでした。
その頃、直人の所属する暴力団の上層部は、違法薬物の取引に警察の捜査の手が迫ってきたことを知り、直人たちを抹殺するために暗殺者のパク・サンウを雇います。
パクは南北朝鮮の国境付近で紛争に巻き込まれたことをきっかけに、仲間と家族を国家に殺され、居場所をなくして日本にやってきたのでした。
彼もまた、直人たちの跡を追って新羅山の麓に向かいます。
一方、誘拐された少年、大村翔太は、直人と佳菜子の隙をついて別荘から逃げ出します。
しかし彼が向かった先は、今まさに噴火しようとしている新羅山だったのです。
【転】炎の岳 のあらすじ③
夏実と静奈が岐阜県警で、山岳救助と救助犬の有用性について講演をしているところに大きな地震が起こります。
新羅山について研究している火山学者の榎田智司は、東京の大学でその地震を知り、大噴火の前兆ではないかと考え、新羅山の警戒レベルの引き上げと入山規制を行政に要請します。
しかし観光業へのダメージを懸念する行政はなかなか動きません。
現地へ向かう車の中で、榎田は別れた妻からの電話で娘の荻島沙耶が新羅山に登っていることを知らされます。
新羅山山頂に向かう途中で地震に遭遇した沙耶は、中腹にある山小屋の管理人から、大噴火の可能性があるので下山するように勧められます。
しかし、「せっかくここまで来たんだし、まさか噴火するわけがない」とグループの他のメンバーと共に、火口のある山頂に向かうことにします。
登頂後、下山途中で大噴火が起こり、沙耶は他のメンバーとはぐれてしまうのでした。
一方、誘拐犯から逃げ出しはからずも新羅山に登ってしまった翔太ですが、噴火から逃げる途中で沙耶と出会い、二人で下山しようとします。
しかしその直後、直人と佳菜子に追いつかれ、沙耶は崖から転落し、翔太は直人たちに捕まってしまうのでした。
【結】炎の岳 のあらすじ④
要救助者を探して新羅山に入った夏実とメイ、静奈とバロンは、沙耶がはぐれた登山グループメンバーのうちの二人を発見します。
彼らから沙耶がまだ山にいることを聞き出した夏実たちは更に上を目指し、翔太を連れた直人と佳菜子に遭遇します。
「自分たちは夫婦で甥と登山に来ていた。
荻島沙耶らしき人物が崖から転落するのを見た。」
と話す直人。
夏実に3人と一緒に下山するように言って、静奈は沙耶を探すために山頂へと向かうのでした。
夏実は3人の態度に不信感を抱きます。
夏実に気づかれたことを悟った直人は夏実を攻撃、夏実は直人に捕まってしまいますが、直前にメイを逃がし、静奈を呼んでくるように頼みます。
メイは降りしきる火山灰の中、懸命にかけてゆくのでした。
沙耶を無事に保護した静奈は下山、そこで夏実を誘拐犯と一緒に置いてきてしまったことを知り、再び山に戻ります。
その頃、捕らえられた夏実と翔太は誘拐犯に連れられて、麓の別荘に戻ってきていました。
身代金を受け取るために一人で外に出た直人は、待ち構えていたパクに殺されてしまいます。
そこへ静奈とバロンが現れます。
メイが静奈を夏実のところに連れてきてくれたのでした。
いよいよ火砕流が迫りくる中、静奈とパクは死闘を繰り広げます。
間一髪で何とかヘリコプターに逃れた夏実たちですが、パクは火砕流に飲み込まれてしまうのでした。
炎の岳 を読んだ読書感想
樋口明雄の「南アルプス山岳救助隊 Kー9」シリーズのうちの一作です。
お馴染みの山岳救助隊員、星野夏実と神崎静奈がそれぞれの相棒犬、メイとバロンと一緒に、舞台を南アルプスの北岳から新羅山(架空の山)に移して大活躍します。
登山客で賑わう山が突如噴火する描写はリアルで、2014年の御嶽山噴火の火山災害を彷彿させます。
行政の思惑に苛立ちながらも現場で懸命に人命救助に向かう警察官や火山学者、インターネットサイトで知り合い、初対面どうしで登山ツアーにやってきた若者たち、誘拐犯から逃げ出した少年と誘拐犯、そして誘拐犯を狙う孤独な暗殺者…。
それぞれの物語が同時進行でj徐々に絡み合いながら錯綜する様子がライブ感をもって描かれており、これがこの作品のみどころのひとつになっています。
山好きだけど犬好きじゃない人、犬好きだけど山好きじゃない人、犬も山も好きな人、そしてミステリーを愛する全ての人に読んでいただきたい作品です。
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