著者:加藤シゲアキ 2017年12月に扶桑社から出版
チュベローズで待ってる AGE32の主要登場人物
金平光太(かねひらこうた)
32歳。ゲームクリエーター。今回、ゲームメーカーのAIDAから、スマホゲームメーカーのDDLへ出向。
金平芽々(かねひらめめ)
光太の妹。高校三年生。
斉藤ユースケ(さいとうゆーすけ)
八年前に自殺した斉藤美津子の甥。ホストクラブ・チュベローズの現在の人気ホスト。
加賀宮明(かがみやあきら)
40歳。AIDAの営業部員。父親が大手電機メーカーの社長。
八千草(やちぐさ)
AIDA社の、光太の上司。
チュベローズで待ってる AGE32 の簡単なあらすじ
金平光太はゲームメーカーAIDAで、「ゴーストタウン」というゲームを作り、ヒットさせます。
今度は、そのゲームのスマホ版を作るべく、子会社のDDLへ出向することになりました。
ところが、「ゴーストタウン」でプレイした中学生に健康被害が出たという抗議が寄せられます。
光太たちは対応を迫られます。
同じころ、新宿では、女子高生の失踪事件が相次いでいるのでした……。
チュベローズで待ってる AGE32 の起承転結
【起】チュベローズで待ってる AGE32 のあらすじ①
前巻から八年後、光太はゲーム会社AIDAで、ゲームクリエーターとして活躍しています。
彼が作った3Dゲーム「ゴーストタウン」は、ゲームセンターで大人気です。
今回、「ゴーストタウン」のスマホ版を作るために、光太は子会社のDDLへ出向することになりました。
出向して間もなく、かつて彼が働いていたホストクラブのオーナー、水谷が亡くなったという連絡を受けます。
光太は店で行われる通夜に出席しました。
喪主は、水谷の養子となった亜夢です。
彼はいまライターをしています。
かつて光太をスカウトした雫も来ています。
雫は、チュベローズ大阪店をしきっています。
東京店を仕切るナンバーワンホストは、ユースケという男です。
ユースケは、かつて光太とかかわって自殺した斉藤美津子の甥でした。
さて、通夜からしばらくたったころ、「ゴーストタウン」をプレイしていた中学生に障害が出た、というクレームが寄せられました。
発信者はNPO法人フレンズで、障害が出たのは大阪だけです。
光太は大阪へ飛び、雫に調査を依頼します。
雫の調べたところでは、フレンズは救済施設の団体で、バックには暴力団がいます。
中学生に出た障害というのは、フレンズが細工した仮病のようです。
話の途中で、光太の実家で働いている外国人家政婦から電話が入りました。
妹の芽々が失踪したというのです。
いま、新宿で次々と女子高生が失踪するという事件がおこっています。
妹がその被害にあったと考え、光太はすぐに東京にもどります。
しかし、警察へ行っても、事実関係はわかりませんでした。
とまどう光太の元へユースケが近づいてきて、協力を申し出ます。
うまくいったら、亡くなった叔母のことを教えてほしい、という条件をつけて。
【承】チュベローズで待ってる AGE32 のあらすじ②
新宿の女子高生連続失踪事件が解決しました。
ある老夫婦が、家庭に問題のある女子高生たちを保護して、みなが共同生活していた、ということでした。
しかし、保護された女子高生たちのなかに、芽々はいませんでした。
一方、「ゴーストタウン」に対する抗議の裏には、ラスコースという遊技メーカーがいるらしい、と推測されました。
確証はないものの、光太は上司の八千草とともにラスコースに乗りこみます。
そして、かつてDDLの圧迫面接で大恥をかかされた女性が、いまはラスコースで働いており、彼女が復讐心から企てたものだとわかったのでした。
こうしてふたつの事件が解決し、残るのは芽々の件です。
これについては、ユースケが情報を持ってきました。
新宿のクラブで働いているというのです。
光太はユースケといっしょに客として入店しました。
そこで芽々の源氏名らしい「めぐみ」を指名すると、やはりそれは芽々でした。
彼女は、自立することで、勝手に家を出ていった兄を見返してやろうとしたのでした。
芽々が未成年とわかった店側は、あっさりと芽々を解雇します。
光太は、すんなりと芽々を家に連れて帰ることができました。
芽々を見つけた見返りに、光太はユースケに、斉藤美津子について知っていることをすべて話します。
それでもユースケは納得しません。
姉は会社のお金を使いこんで自殺するような人ではない、と知っているからです。
光太は、上司の八千草を呑みに誘います。
彼は美津子の元彼でした。
八千草は、光太の知らない真実を語りはじめます。
【転】チュベローズで待ってる AGE32 のあらすじ③
八千草が語るには、美津子はキレ者の完璧主義者でした。
あるとき、コネ入社したどうしようもない男性を部下としたとき、彼にパワハラを働いて、そのせいで経理へ左遷されたというのです。
そのパワハラの被害者のことは知らない方がよい、と八千草に言われます。
しかし、光太は、それがAIDAの営業部にいる加賀宮明であることをつきとめます。
光太は彼に接触し、美津子がパワハラしている証拠の動画を見せてもらいます。
しかしそれは不自然な出来で、作り物のように思われたのでした。
光太は、ユースケを使って加賀宮のマンションに侵入させ、彼を脅して、真実を白状させます。
加賀宮は八千草にそそのかされて、美津子をおとしいれたのでした。
当時、AIDAの役員の枠がひとつ空いて、美津子と千草のふたりが候補にあがっていました。
それで八千草が美津子を罠にはめ、役員の椅子をねらったのです。
数日後、光太はユースケのいる店に八千草を誘いました。
八千草は、美津子のパワハラを偽装したことを認めます。
理由は、とても複雑な感情がからんでのことだったと言います。
話のうちに、光太はいつしか八千草に、亡くなった父の役割を求めているのでした。
ユースケは怒り狂って八千草を打ちのめします。
八千草は、兄に助けを求めました。
光太が、八千草のつけているワイヤレスイヤホンに耳を近づけると、「会おう」という男の声が聞こえたのでした。
【結】チュベローズで待ってる AGE32 のあらすじ④
その男とは、光太のマンションの前にある公園で会うことになりました。
男は八千草の兄でした。
肉体的欠陥から、ずっと陰の世界で生きてきた人間です。
一方、弟のほうは精神に問題があり、兄は弟に指示を出して、操縦していたのでした。
かつて、兄はゲームに強く、下木という男からスカウトされて、AIDAに入社しました。
そして兄弟一組でひとりの人間としてゲームを開発し、出世していったのでした。
一方、美津子は、八千草のはかりごとで左遷された恨みから、光太に近づき、光太をあやつり人形として使おうとしたのだ、と兄は説明します。
実際、光太が開発したゲームのアイディアは、美津子が生前に話してくれたものだったのです。
光太が兄から話を聞いていると、突然ユースケが飛びこんできて、兄を刺し殺し、車で逃げていきました。
しかしその直後、別の車と衝突して、ユースケは瀕死の重傷を負ったのでした。
後日、光太がユースケの見舞いに行くと、彼の母親が、美津子の残したUSBメモリを渡してくれました。
中のデータを再生すると、そこには、美津子から光太にあてた愛のメッセージが収録されていたのでした。
チュベローズで待ってる AGE32 を読んだ読書感想
「チュベローズで待ってる AGE22」の続編です。
本書が出版されたのは2017年で、作品の舞台となっているのは2025年です。
つまり、近未来を舞台にしているのです。
3Dホログラムを利用したゲームが登場し、街なかを運転手のいない自動運転のタクシーが走っています。
第一部の「AGE22」で就活に失敗して苦しんでいた光太は、そんな少しだけ未来の世界では、ゲーム会社のクリエーターとして活躍しています。
作品全体の印象は、第一部とはかなり違っていました。
第一部が青春小説だったのに対し、第二部はノンストップサスペンス小説といったところです。
手に汗をにぎって、ハラハラとしながら読み進んでいくと、意外なラストが待っています。
読み応えのある娯楽作品でした。
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