「ジョシカク!」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|黒野伸一

「ジョシカク!」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|黒野伸一

著者:黒野伸一 2010年8月に光文社から出版

ジョシカク!の主要登場人物

浅田美麗(あさだみれい)
ヒロイン。芸能事務所に所属する19歳。スタイルがよく運動神経もいいが根気はない。

溜池豊(ためいけゆたな)
美麗と同せい中。バンドでメジャーシーンを目指すもののメンバーはコロコロと変わる。

三木谷(みきたに)
美麗の所属先の社長。押しが強く身内にも容赦がない。

杉野(すぎの)
三木谷の前任者。お人よしで先読みが甘かった。

井上比呂子(いのうえひろこ)
女性格闘家の第一人者。美麗の才能にいち早く着目する。

ジョシカク! の簡単なあらすじ

恋人の溜池豊を追って地方から上京してきたのは浅田美麗、タレント活動を始めたのも一向に目が出ない彼のためです。

ラウンドガールをしていた縁で試しに選手としてリングに上がってみると、あっという間に秘めたる才能を発揮していきます。

豊とは破局に終わるものの、多くの人から声援を受けた美麗は本格的に格闘技の道へ進むことを決意するのでした。

ジョシカク! の起承転結

【起】ジョシカク! のあらすじ①

リングアウト寸前まで追い詰められて

工業高校に通っていた浅田美麗はバスケットボール部に所属、頑張ればレギュラーを取れる位置にいましたがサボりがちで練習に身が入りません。

学園祭がきっかけで付き合い始めた溜池豊は、音楽で世界を取りたいと卒業後すぐに東京に行ってしまいました。

建設業をしている父親の反対を振り切って豊を追いかけていった美麗、当面の衣食住を確保するために応募したのはモデル募集の広告。

事務所の社長をしていた杉野とは出身地が同じこともあって、すぐに仕事を回してもらえます。

「仕事」といってもラウンドの合間にプラカードを掲げてニコニコと歩き回るだけ、勝利選手と一緒に写真を撮ったりスポンサーグッズの宣伝をするくらいです。

そんな最中に杉野が業績悪化の責任を取らされて解雇、その後は実家の養豚業を手伝っているとのこと。

後任の三木谷はすぐに口と手が出るタイプで、美麗のたるんだおなかを見た途端にダイエットを命じてきました。

クリアできなければ杉野のように家業を継ぐか、言われるままアダルトビデオにでも出演するしかありません。

【承】ジョシカク! のあらすじ②

甘い誘惑を断ち切って神聖なる舞台へ

ドーナッツやワッフルが大好きな美麗は例によって3日で挫折、逆にストレスから3キロほど増えてしまいました。

見かねた三木谷が紹介してくれたのは「ジュリアス格闘スクール」、運営団体は女子格闘技の試合を主宰しています。

美麗を指導してくれるのは井上比呂子選手、ブラジリアン柔術の全米大会で優勝したこともある実力者だとか。

その比呂子が構えるミットに向かって右のストレートや左のジャブを打ち込んでいくと、思いのほかスカッとした気分です。

腰と背中に走る筋肉痛も心地よいものへと変わっていき、週に3回ほどのレッスンもまったく苦になりません。

徐々に体つきも引き締まってくると三木谷との約束である1カ月で7キロ減量という目標も達成、本来であればここで終わりですが予想外の事態に。

ジュリアスの運営会社に出資している三木谷は、この機会に美麗をラウンドガール出身のジョシカク選手として売り出すつもりです。

デビュー戦は格闘技の聖地、後楽園ホールで行われることが決まりました。

【転】ジョシカク! のあらすじ③

ほろ苦い初戦に恋も敗戦

派手なコスチュームの下には耐久性にすぐれたラッシュガード、ひらひらのスカートの下には機能性を優先したバトルショーツ。

第1試合ではこれまで通りのラウンドガールを務めていた美麗、インターバルですばやく着替えて第2試合に備えます。

赤コーナーから美麗が入場した瞬間に観客席からは大歓声が湧きましたが、結果は第1ラウンドであえなくノックアウトです。

迷走する女子総合格闘技、茶番劇にブーイング続出、ジョシカク撃沈、浅田美麗(19)1分KO… 翌日のスポーツ新聞では4紙に後楽園での試合記事が載りましたが、見出の内容は決して誇れるものではありません。

記事を読んだ実家の父からもすぐに電話がかかってきて、こっちに戻ってこいとのこと。

祐天寺のワンルームマンションでかれこれ10カ月程度いっしょに暮らしている豊の方も、結成と解散を繰り返しているばかりで一向に芽が出ません。

ある日の夜にフラりと出ていきそのまま音信不通、ジャンルは違えども先にプロになった美麗に引け目を感じていたのでしょう。

【結】ジョシカク! のあらすじ④

自分の道を切り開き新女王の座へ

辞めたいと弱音をはく美麗に、本音でぶつかってきてくれたのが比呂子。

大学で国際関係を学んで貿易会社に就職した彼女が、この道に転身した際には両親から猛反発を浴びたそうです。

全戦無敗を続けてきたものの来年で32歳、この業界の集客力をひとりでリードしているだけに周りが引退させてくれません。

その比呂子が覚えるのに3カ月ほどかかったミドルキックを、美麗は初日でマスターしてしまいました。

関節のやわらかさは天性のもので、軸足の使い方にも素質があるとのこと。

比呂子との会話で心の中のわだかまりが消えた効果は大きく、2カ月後の再戦で美麗は見事に初勝利を収めます。

リング中央でマイクを渡された美麗、次の対戦相手に指名したのはジョシカク界の絶対的な女王・比呂子。

会場には母親と弟が駆けつけてくれましたが、父の姿はありません。

控室でスマートフォンをチェックしてみる父からのメールが、テレビで観戦していたそうで「応援してるぞ」との短い文面で締めくくられているのでした。

ジョシカク! を読んだ読書感想

子供の頃から学校の体力測定では1番、ルックスにも恵まれながらも放課後は友だちとカラオケが家でゴロゴロ… 何とも残念な女の子、浅田美麗が未来のボーカリストを自称する溜池豊にすっかり夢中になってしまうのも無理はありません。

流されるように都会に出てきた彼女が、巻き込まれるかのように足を踏み入れていくのが女子格闘技の世界。

元アスリートから現役のOLさん、売れないアイドルまでとそれぞれの事情も千差万別で面白いですね。

マットの上で組んず解れつ、打撃から蹴撃に寝技まであって迫力満点でした。

ショービジネスとしての一面にスポットが当てられがちですが、誰よりも強くなりたいという彼女たちの熱い思いにも共感できるでしょう。

コメント