「黄金旅程」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|馳星周

「黄金旅程」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|馳星周

著者:馳星周 2021年12月に集英社から出版

黄金旅程の主要登場人物

平野敬(ひらのけい)
本作の主人公。本業の装蹄師をしながら養老牧場を営んでいる。

藤澤敬子(ふじさわけいこ)
門別競馬場で働く獣医。

栗木祐一(くりきゆういち)
競走馬(サラブレッド)の生産牧場の経営しており、エゴンウレアの生産者である。

和泉亮介(いずみりょうすけ)
主人公の幼馴染。元JRAの花形騎手だったが、前科二犯でJRAから追放される。

吉村雅巳(よしむらまさみ)
競走馬の育成牧場を経営している。

黄金旅程 の簡単なあらすじ

エゴンウレアという競走馬とエゴンウレアに関わる人間達の物語です。

エゴンウレアは実在する名馬をモデルに描かれています。

物語は主人公である平野敬のもとに栗木祐一の娘である栗木恵海が訪れ、エゴンウレアのことを話します。

彼ら以外にも沢山の人がエゴンウレアに関わっており、彼らの夢を乗せてエゴンウレアは走ります。

「果たして、エゴンウレアはG�T(最も格の高いレース)を勝つことが出来るのか」というお話です

黄金旅程 の起承転結

【起】黄金旅程 のあらすじ①

幼馴染との再会

平野敬が早朝、養老牧場でブラックブリザード(元競走馬)を放牧地に放ち、策の修繕作業をしていると国道の向かいにある栗木牧場の娘、栗木恵海がカンナカムイ(元競走馬)を連れてきます。

恵海は敬に対し、カンナカムイの蹄鉄(蹄を守るためにつける鉄)が外れたから装蹄してほしいとお願いします。

敬はそれを引き受けます。

敬が作業している間、恵海と敬は「エゴンウレアがこの週末のレースに出走する」という話題で盛り上がり、敬は週末に栗木家へ行く約束をします。

恵海が帰った後、敬は吉村ステーブルへ行き、装蹄の仕事をします。

一通り、装蹄が終わった後、敬は帰途につきます。

吉村ステーブルを出て、敬が養老牧場に帰ると見慣れない車が停まっており、車内には幼馴染である和泉亮介がいました。

亮介は覚せい剤の所持等の罪で服役しており、一週間前に出所したようです。

亮介は敬に金を無心しますが、敬は断ります。

敬に断られた亮介は車に乗り、車を発進させます。

日曜日になり、敬はエゴンウレアのレースを見るために栗木家を訪問します。

栗木祐一は「勝利の前祝い」と言って、お酒を飲み始めますが、エゴンウレアは3着でした。

栗木祐一と敬は「騎手に問題があった」という意見で一致し、エゴンウレアの馬主である小田に会うために門別競馬場へ行くことを決意します。

紋別で敬は「亮介が安永調教師と紋別に来たこと」を知ります。

また、装蹄師の師匠(渡辺光徳)を訪ねて、昔話に花を咲かせます。

かつて、敬は暴力事件の当事者だったことが話題になったので、敬は当事者である騎手に会いに行き、和解します。

小田の馬が凡走したため、馬体に異常がないか確認するため、獣医の藤澤敬子が確認します。

藤澤敬子は馬体に異常がなかったことを確認しました。

その後、彼女は敬のファンだったため、敬と連絡先を交換します。

小田からエゴンウレアが吉村ステーブルにいる間の装蹄を頼まれます。

【承】黄金旅程 のあらすじ②

黄金の悪魔

敬達は吉村ステーブルに戻ってきたエゴンウレアを観に行きます。

その後、藤澤敬子から電話でデートのお誘いがあったので、待ち合わせ場所と時間を決めました。

敬が養老牧場に帰るとやくざみたいな男(国重春彦)がいました。

国重達は亮介を探しており、敬にも亮介の居場所を訊きました。

国重達が帰った後、敬は安永調教師や齋藤騎手に電話をかけて亮介の居場所や連絡先を尋ね、齋藤経由で自分の連絡先を亮介に伝えることにします。

夜になり、藤澤敬子と合流した敬は居酒屋〈深山〉に行きます。

深山は敬の同級生である深田典夫が経営するお店で、二人は楽しい一時を過ごします。

途中で亮介から電話があり、敬は亮介が心配になります。

亮介のことが気になった敬はキサラギさん(浦河の人から尊敬されている名士)に相談します。

キサラギさんが帰った後、敬達は後日、エゴンウレアを観に行く約束をして解散します。

敬達はエゴンウレアの調教を見ようとしますが、乗り役が怖がって調教が進みません。

急遽、敬が乗ることになりますが、敬は振り落とされます。

典夫の仲介で亮介と再会した敬は亮介に吉村ステーブルで乗り役をやるように勧め、亮介は無事、採用されます。

日曜になり、敬は渡辺光徳が倒れたので、渡辺光徳が復帰するまで門別で装蹄をやることになります。

敬は亮介のためにお金を借り、亮介の借金を代わりに支払います。

駐車場に戻る途中で藤澤敬子から電話が来たので、敬は電話に出ます。

敬は苫小牧で藤澤敬子と会い、藤澤敬子から「初めて出会った時の話」をされます。

藤澤敬子は小田の馬が凡走した話を切り出し、田島という厩務員が不正を働いている事と口封じのお金が振り込まれていた事を敬に伝えます。

藤澤敬子の話を聞いた敬は藤澤敬子の代わりに田島と話をつけ、田島の背後にいたヤクザと話をしようとします。

敬とヤクザ達がもみ合いになり、敬が圧倒的な不利な状況で突如、大きな地震に見舞われます。

【転】黄金旅程 のあらすじ③

みんなの夢を乗せて

瓦礫に埋もれた敬は自力で脱出します。

敬はヤクザ達の安否を確認しますが、反応はありませんでした。

敬は助けを求めて車で移動し、ラジオで被害状況を聞きます。

亮介から「浦河は大丈夫」という連絡が来たので、門別にいる渡辺夫妻や藤澤敬子の元へ向かいます。

渡辺家に着いた敬は渡辺一枝に「渡辺夫妻が怪我をしていないか」を尋ねます。

渡辺一枝は大丈夫と答えた後、藤澤敬子の元へ急ぐよう、敬に言います。

厩舎内で藤澤敬子と再会した敬は安心します。

敬が指に大怪我を見た藤澤敬子は助手の並木に敬を病院に連れて行くように指示をします。

敬が行った病院は怪我人で大混雑していました。

レントゲン写真を撮った後、診察を受けた敬の指は添え木のようなもので固定され、包帯で巻かれていました。

敬は病室にあるベッドで横になるとすぐに眠りました。

目が覚めた後、ヤクザ達のことが気になった敬は近くにいた警官に事情と連絡先を話しました。

その後の診察で無理を言って敬は退院しました。

出迎えは藤澤敬子が来てくれました。

しばらくの間、功労牧場のことは亮介に任せて、藤澤敬子の家でゆっくりしました。

約、一週間後、敬は功労牧場に戻ります。

亮介に戻ったことを伝えると亮介から「吉村ステーブルでエゴンウレアの最後の調教を行うから来い」という返信が来ます。

家を出た敬は恵海を助手席に乗せて吉沢ステーブルに行きます。

エゴンウレアの調教は順調に終わります。

栗木祐一と吉村は「亮介が最大手の育成牧場に引き抜かれる」という話をします。

恵海は不服そうに話を聞いています。

皆、エゴンウレアの次のレースに各々の人生を賭けます。

敬は藤澤敬子との結婚を、亮介は浦河に残るか否かを、恵海は牧場を継ぐかどうかを賭けます。

エゴンウレアがトレセンに旅立ちます。

【結】黄金旅程 のあらすじ④

夢の続き

エゴンウレアがレースに出る日がきました。

エゴンウレアが出走するレースは中日新聞杯という名前で、メインレース(第11競走)です。

栗木祐一は新調したスーツを披露した後、現地へ旅立ちます。

諸々の作業を終えた敬達は祝杯用のシャンパンを持って栗木家に行きます。

栗木家では睦美(栗木祐一の妻)と恵海が亮介、深田夫妻、敬、そして藤澤敬子が集まり、レースの観戦や食事の準備をしています。

ひとつ前のレースで、深田が亮介の予想に乗って馬券を的中させます。

場の空気も盛り上がってきたところで中日新聞杯のパドックが始まります。

全員でパドックを見て、エゴンウレアが万全な状態であること確認して、安心します。

レースが始まると各々が声を出して、エゴンウレアを応援します。

早々に先頭に立ったエゴンウレアはライバルの追撃を振り切り、先頭でゴールします。

実況の声とともに皆が喜びを爆発させます。

恵海は睦美に牧場を継ぐことを宣言します。

敬は藤澤敬子にプロポーズし、藤澤敬子はそれを承諾します。

抱き合っている二人をみた深田は歓声をあげ、亮介は軽いヤジを飛ばします。

栗木家の固定電話や睦美のスマホは祝福の電話が鳴りやまない状況です。

その後、エゴンウレアは年末に行われるビッグレースである有馬記念で凡走します。

年明けに行われたG�Uの日経新春杯を勝ち、ドバイでもG�Uのレースを勝ちます。

ただ、最高峰であるG�Tでは勝つことが出来ませんでした。

馬主の小田はエゴンウレアを種牡馬にしたいと思った小田は亮介の進言を採用し、エゴンウレアの現役最終戦を香港で行われるG�T、香港ヴァーズに決定します。

香港でG�Tタイトルを手に入れたエゴンウレアは種牡馬になることが決まりました。

数年後、敬と敬子の間に子供が出来、数年後、エゴンウレアはカンナカムイとの間に誕生したアインツァビダイアは皐月賞、日本ダービーを勝利し、菊花賞を勝てば三冠達成というところで終わります。

黄金旅程 を読んだ読書感想

ステイゴールドとその産駒の物語を纏めたらこのような物語になると思います。

現実で既に起きていることばかりなので、新鮮味は無いです。

当時の記憶が頭の中をよぎります。

ずっとシルバーコレクターなどと言われ続けたステイゴールドが初めて重賞を勝った時、海外でG�T制覇を成し遂げた時のことを思い出します。

過去の出来事なのに物語で出てくると胸に熱いものを感じるから不思議です。

細かな部分も再現されていて、馳星周さんのステイゴールドに対する愛を感じる作品です。

ステイゴールド自身は亡くなってしまいましたが、子孫の種牡馬が生きているので、これからも見守り続けたいと思います。

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