「こんな日のきみには花が似合う」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|蒼井ブルー

「こんな日のきみには花が似合う」

著者:蒼井ブルー 2022年6月にNHK出版から出版

こんな日のきみには花が似合うの主要登場人物

湯乃渚(ゆのなぎさ)
主人公。正社員として順調なスタートを切る。恋愛には消極的で自立した女性が好き。

名草かえ(なぐさかえ)
渚の恋人。進学を機に上京。異性との関係では常に主導権を握る。

はなお(はなお)
名草家の飼い猫。高齢のため1日のほとんどを寝て過ごす。

彼(かれ)
かえの昔の恋人。音楽で身を立てる夢を諦められない。

こんな日のきみには花が似合う の簡単なあらすじ

名草かえとお付き合いを始めた湯乃渚でしたが、仕事が多忙なために少しずつすれ違いが多くなっていきます。

かえの方は転職した先でもつまずいてしまい、さらには背後に元彼の影がちらついてきたことによって別れ話を切り出そうかというほど険悪なムードに。

1年が過ぎる頃にはお互いに誤解を解消して、改めてカップルとしての幸せをかみしめるのでした。

こんな日のきみには花が似合う の起承転結

【起】こんな日のきみには花が似合う のあらすじ①

熱くはじけるような告白に晩夏の怪談

湯乃渚が前々から気になっていた名草かえに自分の気持ちをまっすぐな言葉で伝えたのは、一緒に近所の夏祭りにいった8月7日のこと。

フラれたらどうしようなどと後ろ向きなことばかり考えていましたが、花火が消えた瞬間に思い切って告白をしてみました。

別れ際に「またね」と手を振ってきただけで、はっきりとした返事はもらっていません。

次の日の朝いちばんにはかえからのメッセージが届いたことによって、ようやく人生初の彼女ができたことを実感します。

定時に退社できた日には最寄り駅のカフェで合流をしてお茶を、休みの日には遠出をして映画やアウトドアを、ファーストキスからお泊まり… 渚のアパートで一夜を明かすことが多くなったかえでしたが、自宅にはなかなか招待してくれません。

夏の終わりに土砂降りの雨にまきこまれて傘も壊れてしまい、しぶしぶながらお風呂を貸してくれます。

奥の部屋には幽霊がいるとのことで、廊下で1杯だけコーヒーをごちそうになっただけで退散しました。

【承】こんな日のきみには花が似合う のあらすじ②

さわやかな秋の花に不吉な予感が

キンモクセイの香りがする今の季節がいちばん好きだというかえを、夜の公園へと誘ってみるといつにも増して機嫌が良さそうにしています。

去年もこの場所で散歩をしたそうですが、隣に誰が歩いていたかまでは聞く気になれません。

ベッドの上でそれぞれの恋愛経験を明かしたところ、かえはこれまでの交際相手を3人だと答えていました。

女性の場合は実際の人数よりも少なめに言うのが常用手段なので、5〜6人といったところでしょう。

泊まっていくのは週に1〜2回ほど、土日だけでなく平日も、11月17日のかえの誕生日には合カギとキーケースをプレゼント。

日当たりがいい一角に着替えや化粧品を持ち込んできで自分のスペースにしてしまったかえ、ルームフレグランスはもちろんキンモクセイです。

部屋の片隅に脱ぎ捨てたままにしてある彼女の下着を、渚が洗濯して部屋干しすることも珍しくありません。

そんな最中にかえの置き忘れていったスマートフォンに着信が、ディスプレイには知らない男性の名前が表示されています。

【転】こんな日のきみには花が似合う のあらすじ③

春は近いのに冷えきったふたり

年末年始は帰省して過ごすというかえ、飛行機が欠かせない距離にあるという生まれ育った町がどこにあるのか渚は教えてもらっていません。

空港までお見送りにいってひと目だけでも会いたいという申し出も、やんわりとお断りされてしまいました。

大みそかのカウントダウンのあとに送られてきたのはペットを抱いたかえの写真、名前は「はなお」でかなりのおじいちゃん猫とのこと。

昔からたくさんの花を飾っていたかえの実家、はなおが飼い猫になってからは誤って飲み込まないようにすべて撤去しています。

花の代わりに家族に笑顔を咲かせてくれたはなお、年が明けてまもなく息を引き取り東京に帰ってきたかえはすっかり落ち込んだようすです。

勤め先が変わったということでしばらくは連絡が途絶えたかえ、年度末の雑務を片付けた渚は社会人2年目へ突入します。

かえが見知らぬ男といる場面を目撃してしまったのは3月の下旬、昼間からバンドマンみたいな格好をしているために職場の同僚ではないでしょう。

【結】こんな日のきみには花が似合う のあらすじ④

季節がめぐって咲き誇る愛

ついにかえのワンルームマンションに通してもらった渚でしたが、これが最初で最後になると覚悟していました。

部屋の壁際に立てかけてあったのは1本のエレキギターであり、以前にかえが言っていた「幽霊」の正体です。

ミュージシャンを目指しているという彼ですが口ばっかりなため愛想が尽きてしまい、ずいぶん前に追い出したっきり行方が分かりません。

昨年の秋頃から突然にスマホに連絡がかかってきましたが無視をしていると、ようやくギターを返せるチャンスが巡ってきて待ち合わせ場所に出向いたのが先日のこと。

「捨てちゃっていい」という彼の希望通りにギターを処分したかえ、ようやく未練を振り切って過去ともキッパリと決別します。

会社の方はまだまだ慣れないことがあり苦労もしていますが、元来が社交的な性格なためにすぐに新しい環境に溶け込めるでしょう。

久しぶりにスケジュールが合ったのは8月12日、爆音がとどろく花火大会の会場で渚はかえの耳元で「きれいだね、花みたい」とささやくのでした。

こんな日のきみには花が似合う を読んだ読書感想

ちょっぴり奥手で草食系な彼氏が湯乃渚、自由で奔放かつ肉食系な彼女・名草かえ。

正反対の男女が手と手をとりあって、時にはぶつかり合って前に進んでいく姿をそっと見守りたくなりました。

夏の線香花火から秋のキンモクセイなど、季節の風物詩が不器用な恋人たちの仲を盛り上げるのにひと役を買っています。

スマートフォンやメールなどの便利なツールがふたりの気持ちを取り持つのではなく、かえって事態をややこしくしてしまうのが何とも皮肉です。

アニメーターとしても有名な新井陽次さんのイラストがパステルカラーのように優しいタッチで、物語のあいまにほっとひと息つけますよ。

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