「僕は、線を描く」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|砥上裕將

「僕は、線を描く」

著者:砥上裕將 2019年6月に講談社から出版

僕は、線を描くの主要登場人物

青山霜介(あおやまそうすけ)
交通事故で両親を亡くして以来、生きる事に無気力。いつも言いようの無い喪失感を抱えている。法学部に所属する大学生。

篠田湖山(しのだこざん)
世界的に有名な水墨画家、テレビなどのメディアにも昔は出演していた。その世界では知らない人がいない。洗練された人生観を持つ。

篠田千瑛(そのだちあき)
湖山の孫娘、将来を期待させている絵描き、画家になることを祖父に反対されている女子大生。霜介にライバル心をむき出しにしている。

藤堂翠山(とうどうすいざん)
湖山とは違い、知る人ぞ知る画家、湖山や湖山の弟子達が一目置く存在。

僕は、線を描く の簡単なあらすじ

 霜介は、両親を事故で無くし、生きる事に無気力。

水墨画の作品展のバイトとして会場に行った際、世界的な水墨画家、湖山に出会う。

他愛無い会話をしただけなのに、なぜか見込まれ内弟子にしたいと申し込まれた。

霜介が承諾もしていないうちから、湖山の孫娘、千瑛は猛反対。

すると湖山は、霜介に水墨画家の登竜門、湖山賞を受賞させてみせると言い放った。

流されるままに霜介は内弟子として、修行を始めることになった。

僕は、線を描く の起承転結

【起】僕は、線を描く のあらすじ①

突然降って来た内弟子話

 霜介は、両親を事故で無くし、生きる事に無気力でした。

法学部の大学生ですが、別に法律に興味があるわけでも、将来、やりたいことがあるわけでもありませんでした。

そんな霜介は、水墨画の作品展のバイトとして会場に行った際、世界的な水墨画家、湖山と出会いました。

展示してある絵について簡単な質問に答えただけなのに、なぜか見込まれ、湖山に内弟子にしたいと申し込まれました。

霜介が承諾もしていないうちから、湖山の孫娘、千瑛は霜介を内弟子にすることに猛反対です。

そんな孫娘をからかうように湖山は、霜介を水墨画家の登竜門、湖山賞を受賞させてみせると言い放ちました。

霜介が賞を受賞できなかったら、湖山は大人しく千瑛を一人前の画家として認め、雅号を与えて独立させると約束したので、千瑛は霜介を内弟子にすることを認めました。

断るなんて勿体ないという周囲からの後押しもあり、霜介は内弟子として、コンクール優勝を目指し、修行を始めることになりました。

【承】僕は、線を描く のあらすじ②

内弟子修行、ひたすら線を描く

 内弟子として修行を始めた霜介でしたが、基本がまったくできていないので、基本的な線を筆で描くことから修行は始まりました。

湖山の見せてくれるお手本を真似しても全く上手くいきません。

仕方なく、家の練習用にと渡された筆と紙を持って帰ろうとしました。

そんな時、千瑛が絵を描いている様子を見ました。

自由自在に素晴らしい技量を発揮して絵を描く千瑛を見た霜介は、1年後に自分が千瑛に追いつけるのかと不安になりました。

しかし、そんな千瑛もまだまだ未熟です。

兄弟子達の技量はそれ以上でした。

コンピューターのような精度で美しい牡丹の花を描く人、生き生きとした牡丹の生命力を描く人など抜きん出た実力を持つ内弟子たちの姿を見て、霜介は刺激を受けました。

家に帰り、貰った筆と紙を使って霜介は夢中で線を描きました。

描いている内に夢中になり寝食を忘れるほど夢中になっていました。

何かに夢中になるのは、両親が死んで以来、初めての事でした。

【転】僕は、線を描く のあらすじ③

霜介、蘭を描く

 練習の甲斐あって、描いた線を湖山に認められた霜介は、新たな課題を与えられました。

それは、荒野に咲く蘭を描く事でした。

ただ線を描くよりも遥かに難しい課題に霜介は困り果ててしまいました。

そんな霜介を兄弟子が翠山という画家の家に連れて行ってくれました。

翠山は知る人ぞ知る水墨画家で、湖山も一目置く、存在です。

しかし、メディアに出ることを好まず、仙人のような暮らしを好んでいる人です。

緊張しながら翠山に挨拶した霜介でしたが、想像していたよりも気さくな人柄の翠山とすっかり打ち解けました。

お手本にと翠山は蘭を描いてくれました。

それは湖山と同じくらい見事で、しかし全く違う印象を受ける絵でした。

翠山の絵を見て、湖山の絵の真似ではなく、自分の蘭を描く事が大切なのだと霜介は思いました。

今までは、ただ湖山のような絵を描きたいと思い、真似しようとしていた為、いざ絵を描こうとすると線が固くなってしまっていたのです。

そのことに気が付いた霜介は、生まれ変わったような気分でした。

【結】僕は、線を描く のあらすじ④

千瑛と霜介二人は線で繋がっている

 翠山の家から帰った霜介は、大学が夏休み突入したことを幸いに、蘭を描く事に没頭しました。

何枚も何枚も描くうちに自分なりの蘭の絵が少しずつ出来上がっていくように霜介は感じました。

そんな日々のが過ぎ、突然、家のインターホンが鳴りました。

霜介が出るとそこには千瑛が立っていました。

音信不通になっていた霜介を心配して来てくれたのです。

霜介のスマホは知らない内に電源が切れており、山のような着信履歴が残っていました。

霜介が謝りながら千瑛を家に通し、蘭を描く所を見せました。

千瑛は描き上げた蘭の絵を見て、どうやったらそんな美しい絵が描けるのか羨ましいと言いました。

そして、霜介と千瑛が対決するコンクールが始まりました。

霜介は蘭の絵を千瑛は牡丹の絵を描きました。

優勝したのは千瑛でした。

しかし、霜介も特別賞を受賞しました。

一目見ただけで、特別な絵だとわかる千瑛と違い、霜介の絵は地味で何の変哲もないように見えます。

しかし、霜介の絵を湖山と翠山、ほかの多くの水墨画に携わる人たちは称えました。

霜介の絵の道はここから始まるのでした。

僕は、線を描く を読んだ読書感想

 生きる事に無気力になってしまった青年が、また生きる事を見つめ直す物語だと思います。

深刻な場面が多い物語ですか、お調子者の大学の友人の存在や周囲の人達の恋愛模様が、明るさを与えていて、暗い気分になることはありませんでした。

主人公の対極にいる存在として書かれている千瑛という存在も主人公を大いに引き立てていると思います。

二人の関係性も読者を引きつける要因の一つだと思いました。

美しい水墨画の表現に彩られた細かい心理描写が、素晴らしいと思いました。

誰でも人生を投げ出してしまいたいと思った事が、一度はあると思います。

そんな時に勇気を与えてくれる物語だと思いました。

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