「キラキラネームが多すぎる 元ホスト先生の事件日誌」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|黒川慈雨

「キラキラネームが多すぎる 元ホスト先生の事件日誌」

著者:黒川慈雨 2019年7月に宝島社から出版

キラキラネームが多すぎる 元ホスト先生の事件日誌の主要登場人物

上杉三太(うえすぎさんた)
主人公。元ホストで、小学校教諭に転職、一年スペード組の担任になる。

伊藤公人(いとうギフト)
一年スペード組の男子生徒。両親がおらず、いつも1人で過ごしている。人の感情が読める。

山本生命(やまもとらいふ)
一年スペード組の女子生徒。おとなしい。お母さんが新興宗教にのめり込んでいる。

山本無命(やまもとないふ)
生命の兄。お母さんが傾倒している宗教の教祖に死んだものとされ、親に愛情を注がれなかった。

キラキラネームが多すぎる 元ホスト先生の事件日誌 の簡単なあらすじ

元ホストの上杉三太は、祖父に強引に小学校教諭に転職させられます。

そこで受け持った一年スペード組の生徒は皆キラキラネームばかりで困惑します。

そんなある日、通り魔事件が起こります。

ターゲットは、無機物から小動物になり、遂には人間も襲われ始めます。

容疑者として公人の名前が上がりますが、真犯人は三太のクラスの生徒、生命の兄の無命でした。

その後、退任することになった三太は寂しさを感じるのでした。

キラキラネームが多すぎる 元ホスト先生の事件日誌 の起承転結

【起】キラキラネームが多すぎる 元ホスト先生の事件日誌 のあらすじ①

元ホスト、先生になる

元ナンバーワンホストの皇聖夜こと上杉三太は、祖父のコネで半ば強引に小学校教諭に転職させられ、嫌々ながら一年生の担任をすることになります。

しかし、受け持ったスペード組の生徒は、昼太(しえすた)、愛犬(らぶら)、美食蘭(みしゅらん)などキラキラネームばかりで困惑します。

それでも、前職のスキルを活かして生徒と積極的に交流します。

ある日、家族の絵を描くという授業の際、三太は山本生命の絵に目を留めます。

真ん中に人間が三人描かれているのを見て、三太は三人家族かと尋ねますが、生命は家の隅の方に描いたものを指差して、「これが兄でうちは四人家族だ」と言います。

三太はなぜ兄だけ隅に描いたのか疑問に思います。

続いて公人の絵を見た三太は思わず言葉を失います。

公人は黒一色で大人と子供と思われる人物を一人ずつ、そしてその周りにはバラバラになった人体のようなものを描いていました。

気味悪く思った三太は、公人の過去について校長先生に尋ねますが、校長先生はなにも答えてくれません。

【承】キラキラネームが多すぎる 元ホスト先生の事件日誌 のあらすじ②

通り魔事件発生

ある日、三太は校長先生から最近頻繁に起こっている通り魔事件のことを聞きます。

始まりはガードレールや塀、民家の庭木などの無機物や植物が刃物で切りつけられていただけでしたが、ほどなくして怪我を負った犬や猫、鳥などが発見されるようになったというのです。

そして、その容疑者として三太のクラスの生徒、伊藤公人の名前が挙がります。

公人の様子を注意深く見ていた三太でしたが、山崎愛犬の飼い犬が殺されたり、和田美食蘭が切りつけられたり、吉田昼太の父が刺されたりするなど、事件は三太のクラスの生徒を中心にエスカレートしていきます。

そんな時、三太は小学校の同級生だった滝川と再会します。

滝川は刑事になっており、事件の捜査のためにやって来たのでした。

そこで三太は滝川から公人の過去について聞きます。

数年前、二十人以上の小学生が殺される事件が起きたのですが、公人は実の親によってその殺人犯の元に送られたというのです。

三太はこの話から、公人が描いた家族の絵の意味を理解し、衝撃を受けるとともに、公人が通り魔事件の犯人ではという疑惑を深めます。

【転】キラキラネームが多すぎる 元ホスト先生の事件日誌 のあらすじ③

真犯人発見

公人のことを校長先生に尋ねると、校長先生は公人の境遇を気にかけ、自分の学校に通わせることにしたと話します。

一方三太は抜き打ちで道具箱の中をチェックし、公人の道具箱に血のついたハンカチと給食の残りを発見したことで、一つの仮説を立てます。

そして、校舎の裏手の段ボールハウスで、見慣れない少年と、その少年を庇う公人を発見したことで三太は自分の仮説が正しかったことを知ります。

血のついたナイフを持つ少年を見て、三太はその少年が通り魔事件に関係していると直感しますが、怯え切っている少年を宥めるためにひとまず2人を自分の家に連れて行きます。

夜になり、彼らが眠りについた頃、たまたまテレビを見ていた三太は山本生命の母親が昼太の父親を刺した罪で逮捕されたことを知ります。

その後眠ってしまった三太は朝になって少年がいなくなってしまったことに気付きますが、とりあえず学校に行きます。

しかし、その日の放課後、例の少年が三太たちの学校に乱入し、7名を刺殺する事件を起こします。

【結】キラキラネームが多すぎる 元ホスト先生の事件日誌 のあらすじ④

三太の変化

ナイフを持った少年は山本生命の兄で無命(ないふ)という名前だということ、スペード組の蒼星の母親が教祖をやっており、生命の母親がそれにのめり込んでいたことが明らかになります。

そこで三太は、以前クラス内で起こった「サンタクロースはいるか」という些細な言い争いのことを思い出します。

愛犬、美食蘭、昼太を筆頭としてクラスメイトのほとんどが「サンタクロースはいる」と主張していたのに対して、教祖の母を持つ蒼星と生命だけが「サンタクロースはいない」と言い張っていました。

これが事件の発端ではないかと考えた三太は蒼星の母親と話をし、事件の裏で糸を引いていたのは蒼星の母親だと判明します。

真相が明らかになり、学校には平和が戻ってきましたが、三太は二学期いっぱいで退任することになります。

最後の学級会を終え、動揺したり悲しんだりする生徒を見て、先生なんて向いていない、早く辞めたいと考えていた三太の心にも寂しいという感情が生まれました。

キラキラネームが多すぎる 元ホスト先生の事件日誌 を読んだ読書感想

これは、第17回『このミステリーがすごい!』大賞の隠し玉に選ばれた作品です。

題名からすると、一見ギャグ要素の多い小説のように思えますが、一人一人の名前に深い意味が込められていてハッとさせられます。

また、この小説を読むと、家族のあり方について考えさせられます。

この本に登場する子どもたちの中には、朝ドラの女優になるという母親の夢によって物心つく前から芸能界に入っていたり、父親に暴力を受けているにも関わらず、母親に見て見ぬ振りをされ、深く悩んでいる子どもがいます。

そんな様々な事情を抱える子どもたちの姿を、本作はキラキラネームを通して描いており、理想の家族とは何か、親にとって子どもはどのような存在なのかについて考えるきっかけになる作品です。

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