うつくしい子ども(石田衣良)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

うつくしい子ども

【ネタバレ有り】うつくしい子ども のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:石田衣良 2001年12月に文藝春秋から出版

うつくしい子どもの主要登場人物

三村幹生(みむらみきお)
本作主人公「ぼく」。夢見山中学2年。9歳女児殺害事件の犯人「少年A」の兄。

三村和枝(みむらかずし)
「少年A」。夢見山中学1年。

向井香流(むかいかおる)
被害者少女。東野第三小学校3年。9歳。

山崎邦昭(やまざきくにあき)
朝風新聞社東野支局。9歳女児殺害事件の記事を担当。少年Aの兄と接触し、事件の真相に迫る。

松浦慎吾(まつうらしんご)
夢見山中学2年。伝説の秀才。父は夢見山署の警察署長。何故か、弟少年Aとつながりが・・・。

うつくしい子ども の簡単なあらすじ

ニュータウンで起きた奥ノ山女児殺害事件の犯人「少年A」は「ぼく」の弟だった。子供のころからの遊び場であった、その場所で起きてしまった事件は家族を一転ばらばらにさせてしまった。妹と同い年の少女を何故?少年Aの兄がその真相に迫る。 学校といわれる表面には現れない深いところで渦まく闇が潜んでいる。明かされない事実。現代社会の問題がここで浮き彫りに。

うつくしい子ども の起承転結

【起】うつくしい子ども のあらすじ①

事件発覚

ある日、ぼくの住むニュータウンで、9歳女児の行方不明事件が起こった。

誰もが、伝説の「夜の王子」の仕業ではないかとささやいた。

以前、〜prince of night〜のサインが残されたいたずらが起こっていた。

夜中に小学校の窓ガラスが叩き割られた時の職員室、中学校で皆殺しにされたウサギの飼育小屋や不審火が続く奥ノ山の伐採跡にそのサインが残されていたからだ。

しかし、奥ノ山では女児の遺体が発見され、その犯人は13歳の「少年A」ぼくの弟だった。

この事件の報道後、少年Aの自宅付近には記者たちが押しかけ、多くの人に囲まれてしまう。

ぼくの家族はバラバラ、町はずれのアパートにひっそりと住むことになった。

被害者と同い年の妹は転校し、身を潜めていても容赦なく追いかけられ、居場所のない生活がはじまった。

【承】うつくしい子ども のあらすじ②

何故。

連日事件関連の報道は続いた。

ぼくはこの事件から逃れられない。

だから見ておかなきゃいけないと思った。

両親は離婚し、妹は姓を変えて転校することになったが、ぼくはどこにいたってこの状況を変えられない。

この名前のままで、元の中学に戻る決意をする。

妹が何気なく言った一言「カズにいちゃん、なんであんなことやっちゃったのかな」なにげないこの一言にぼくはつき動かされる。

なぜ弟があんなことをやったのか、その理由を探そう。

一生かけても無理かもしれない。

でも、理解しようという気持ちをなくしたらだめだと思った。

カズシはこれからもずっとぼくの弟なんだから。

いくら時間をかけても構わない、すくなくとも自分で納得できるまでカズシの心の動きを調べてみようと考えた。

【転】うつくしい子ども のあらすじ③

Mさんの存在

弟の記事を集めることから始めた。

ひとつの事件にも関わらず、記事にもいろいろ取り上げ方があるものだと気づかされた。

そんな中、朝風新聞の記者、山崎と出会う。

山崎もまた、事件を追うごとに9歳の少女と同じように、犯人の兄である少年幹生もまた被害者であると感じていた。

その兄は、弟に向き合い事件を調査していると知り、協力をすることに。

一方、ぼくは知らない弟を見つけていく。

図書館では、2か月で30冊の貸し出しリスト。

自由テキストには「ほんとうのぼくは、どこにいる?」カズシらしい題名をみつける。

 ー家にいても中学校にいても、ぼくはぼくである感じがしません。

中略・・・こんなカラッポの感じはぼくだけかと思っていましたが、Mさんも同じだということを、ぼくは発見しました。

ー そこに書かれている「Mさん」の存在。

カズシが借りたどの本にも必ずカズシの前に読んだ人がいる。

2年5組の松浦慎吾くん。

あの、伝説の秀才だった。

【結】うつくしい子ども のあらすじ④

人形使い

弟の真相を探るにつれ、ぼくを憎んでいる誰かが、ぼくのまわりの人間を片っ端から狙い撃ちにしだした。

それは事件より前からうわさされていた奥ノ山に潜む「夜の王子」の仕業だと辿り着く。

親切な人を装いながら、裏では弱者をいじめ抜いては操り、表では伝説の生徒として存在していた。

「夜の王子」すなわち「Mさん」は松浦慎吾、夢見山警察署署長の一人息子である。

ぼくは、弟を自分を、そして松浦慎吾をも救うべく、直接対決に挑む。

あの奥ノ山の事件現場にて。

結果は如何に・・・ガソリンをまかれ、絶体絶命のその時に駆け付けたのは、松浦君のお父さんであった。

彼を制止する叫び声と共に、彼が襲い掛かってくる瞬間火花がはじけ、崩れ落ちたのは松浦慎吾だった。

わたしたち親子のことは誰にも漏らさないでくれと、頼まれたぼくはけもの道を一人おりた。

その道中、もうひとつの銃声が響いた。

ぼくも夜の王子が誰かわかったよ。

王子は死んで、妹の心配はいらないと、ぼくはカズシに伝え、諦めてはいけないと決心する。

うつくしい子ども を読んだ読書感想

殺人事件の犯人が自分の家族、しかも13歳の弟だったなんて。

衝撃的な始まりだった。

残酷な事件だけに報道がエスカレートするのは目に見えている。

事件と報道と、それを鵜呑みにしてしまう世間と。

手に取るような現実がそこにはあって、様々な現実の事件を思い起こされる。

そんな現実だが、兄であるぼくは立ち向かい、真相を突き詰める姿に胸が苦しくなる。

事件を報じる記事、批判の目、生徒間のいじめ、それでもなぜ弟がと知るにつれ、見えてくる現実には見えない操りの糸。

これは物語ではあるけれど、いくつもの事件やトラブルには決して表には見えてこない見えない心の動きが大きく作用することを感じてしまう。

ましてや、少年少女の心のうちはごく身近な親兄弟にはじまり、友人、教師、学校、先輩後輩との糸の引きの強弱、もつれ・・・。

表面に出ているもがきや、行動は逆に成長の表れと、自己表現。

優秀な生徒の心の闇こそ覆われて深く深く、誰も手を差し伸べられずにいるのではないだろうか。

いったい私たちは何をしたら、灰色の海から救えるのだろうか。

苦しい現実の中、ぼくのまっすぐな姿勢にかすかな光をも感じる作品でした。

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