「リストランテアモーレ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|井上荒野

「リストランテアモーレ」

著者:井上荒野 2015年3月に角川春樹事務所から出版

リストランテアモーレの主要登場人物

瀬尾偲(せおしのぶ)
ヒロイン。サービス係を担当するが愛想はない。ヘアサロンが苦手で身なりにも構わない。

瀬尾杏二(せおきょうじ)
偲の弟。海外で修行をした腕利きのシェフ。顔もよく肉体も健康的な28歳。

松崎光(まつざきこう)
杏二の師匠。体調を崩して料理人としては引退も同然。

櫻川理子(さくらがわりこ)
松崎と結婚予定。セレクトショップ勤務で食に対する関心は薄い。

リストランテアモーレ の簡単なあらすじ

荒れた10代を送っていた瀬尾杏二でしたが、松崎光に弟子入りしてからは料理人として更正します。

姉の偲とふたりでレストラン「アモーレ」を開店させて、順調に客足が伸びてきた頃に現れたのが松崎のフィアンセを自称する桜川理子です。

松崎は偲を選び理子が去っていた頃、失踪中だったきょうだいの父親が帰ってきて店を手伝い始めるのでした。

リストランテアモーレ の起承転結

【起】リストランテアモーレ のあらすじ①

愛情を込めておもてなし

瀬尾偲の弟・杏二は高校生の頃にはひどく荒れていて、ほとんど家に帰ってきません。

麻布十番にある松崎光のイタリアンレストランで住み込みで働くようになると、ようやく落ち着いてきました。

ついには本場・ピエモンテ州で料理を学ぶようになった杏二は、自分が店を持つ際にはなるべくシンプルな店名にしようと考えます。

「アモーレ」はイタリア語で「愛」、立地は目黒の駅から少しだけ離れた細い道の先、敷地は5坪で壁と調理室に沿ったカウンターの9席限定、定休日は日曜日。

材料の仕入れから仕込みまではほぼ杏二がひとりでこなしていますが、メニューの説明をしたり料理に合うワインを選んだりするのは姉の偲の役割りです。

アルコールが大好きな松崎は肝臓を壊して入院していましたが、どうにか持ち直した後も今年の4月から休業していました。

時間が有り余っているのか時々ふらりと立ち寄っては、かつての弟子が腕によりをかけた1品を平らげていきます。

グルメサイトには「イケメンシェフ」などと書き込まれることもある杏二ですが、松崎の「うまい」という言葉が何よりもの勲章です。

【承】リストランテアモーレ のあらすじ②

恩師の幸せが姉には不吉な予感

松崎が引っ越しの準備をしていると聞いて、杏二は荷物の片付けを手伝うつもりで天現寺のマンションまで訪ねました。

室内にいたのはメガネをかけたスレンダーな女性・桜川理子で、育児雑誌を読んでいるために出産を控えているのでしょう。

理子がごちそうしてくれたのは何の変哲もないインスタントラーメンですが、松崎と杏二は文句も感想も言わずに黙って完食します。

ふたりの新居はいま現在に理子が住んでいるお台場だそうですが、結婚式を挙げるかどうかは決まっていません。

杏二の脳裏に浮かんだのは17歳になったばかりのことで、初めて姉と松崎が顔を合わせた時でもあり場所は渋谷警察署です。

バースデーパーティーで羽目を外しすぎた杏二は留置場で1泊することになり、身元引受人としてふたりに連絡がいきました。

松崎と一緒に署まで迎えに来てくれた偲の顔をひと目見ただけで、杏二は姉が恋に落ちていることを確信します。

今回松崎が見知らぬ女性を妊娠させて結婚を考えていることが、偲にとって良からぬ影響を与えることは間違いありません。

【転】リストランテアモーレ のあらすじ③

店内で女同士のバトル勃発

初めて理子がアモーレに来店したのは月曜日、ちょうどお客さんが途切れてふたりともひと休憩していた時間帯です。

アパレル業界に勤めているだけあって服装は高級そうなピンクのチュニック、偲の前で名乗ったのは「松崎の婚約者。」

杏二は牛のハチノスを煮込んだアラビアータを用意しましたが、おなかが空いていないという理子は半分だけ手をつけて残りを偲に勧めました。

2回目も客がふた組しか残っていない遅い時間で、マタニティーウエアを着ているせいで緊張感は最高潮に達していました。

3回目には正面カウンターの真ん中の席に陣取っていますが、偲は注文を聞きに来ようとはしません。

仕方がなく代わりに近づいてきた杏二にアクアパッツァを頼みますが、料理を見た途端にトイレに駆け込んでしまうほど具合は悪そうです。

帰宅した理子が一向に荷作りを進めようとしない松崎を問い詰めると、深々と頭を下げて土下座をしてきました。

本当に結婚したかった相手は偲で慰謝料をできるだけ払うという松崎を見下ろした理子は、頭の中でお金の計算をしながらマンションを出ていきます。

【結】リストランテアモーレ のあらすじ④

似たもの親子で新装開店

那覇市内にある食堂の店主とその妻が近々引退を考えていて、松崎はずいぶん前から後を引き継いでほしいと頼まれていました。

電話で杏二を呼び出した松崎は、偲も一緒に沖縄に連れていき海の見える賃貸アパートで暮らすと宣言します。

ひとりではアモーレを切り盛りすることは不可能なために、白羽の矢が立ったのは瀬尾一家の父親です。

姉弟が幼い頃から放浪癖があり異性関係も派手で、早くに亡くなった母親に苦労をかけた父のことを杏二は今でも許していません。

母の葬儀にケンカになってからは顔を合わせていなかったはずですが、偲はひそかに連絡を取り合っていたようです。

おいしいものを食べるのが大好き、おいしいものを作るのも大好き、きれいな女性も大好き、好きなことにはとことん熱中… 気まずい沈黙の中で開店準備を進めていた杏二ですが、自分が父親似であることは否定できません。

正式なスタッフとしてデビューした父は、杏二にも負けないくらい女性客をとりこにしていくのでした。

リストランテアモーレ を読んだ読書感想

前菜にはあっさりとしたヒラメのカルパッチョ、メインデッシュはポルチーニのリゾット、ドルチェには焼き立てのリンゴのタルト。

都心のオフィスビル街から少し裏道に入ったところに店を構える、リストランテ・アモーレで食事をしてみたくなりました。

無愛想な接客で見た目も地味だという姉・偲と、ルックスに恵まれた弟の杏二とのコントラストも映えていますね。

弟にとってはイタリア料理の先生であり、姉にとっては意中の人である松崎もいいキャラクターです。

招かれざる客によって波乱が巻き起こるもの一件落着、サプライズが用意されているラストも後味スッキリです。

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