著者:桜井美奈 2021年4月に小学館から出版
殺した夫が帰ってきましたの主要登場人物
鈴倉茉菜(すずくら まな)
本作の主人公。28歳。いつも暴力を振るっていた夫・和希を殺した過去を持つ。取引先に勤める穂高に付きまとわれている。
鈴倉和希(すずくら かずき)
茉菜の夫。気に食わないことがあるとすぐ、茉菜に暴力をふるっていた。5年前に茉菜が殺したはずだが、再び茉菜の前に姿を現す。一部の記憶を失っている様子。
穂高(ほだか)
茉菜が勤める会社の取引先に勤務。茉菜にしつこく付きまとう。
上坂愛(かみさか あい)
鈴倉茉菜になり代わっている。ネグレクトの母親に育てられたため無戸籍。
和田佑馬(わだ ゆうま)
鈴倉和希になりすまし、鈴倉茉菜になり代わっている上坂愛に近づく。
殺した夫が帰ってきました の簡単なあらすじ
都内のアパレル会社で働く鈴倉茉菜はある悩みを抱えていました。
大事な取引先に勤める穂高にしつこく付きまとわれていたこと。
ある日、穂高に襲われた茉菜の前に夫・和希が現れます。
茉菜は驚愕しました。
なぜなら、茉菜は和希を崖から突き落とし殺したはずだったからです。
死んだはずの和希の正体を探るべく、茉菜は和希との生活を送ることにしました。
殺した夫が帰ってきました の起承転結
【起】殺した夫が帰ってきました のあらすじ①
都内のアパレル会社で働く鈴倉茉菜は、会社の取引先に勤務する穂高にしつこく付きまとわられ悩んでいました。
ある日、仕事が終わり、自宅のアパートへたどり着いた茉菜。
すると、そこには穂高が待ち構えていたのです。
茉菜を押さえつけ、無理やり家の中に入ろうとする穂高。
その時、2人の前に男が現れ穂高を追い払います。
茉菜は安心するどころか驚愕しました。
その男は5年前に崖から突き落とし殺したはずの夫・和希だったからです。
目の前にいる和希が本物だとは信じられず、茉菜は今までどうしていたのか尋ねてみました。
すると、和希はケガの後遺症で一部の記憶を無くしていること、足に痛みが残っていることを明かしました。
和希は茉菜とやり直したいと懇願。
いつ記憶が戻るかわからない和希を放っておくわけにもいかず、茉菜は和希と暮らすことをにします。
和希は茉菜に優しく接してくれました。
気に食わないことがある度に暴力を振るっていた男とは思えませんでした。
そんな中、茉菜の元に一通の手紙が届きます。
そこにはひと言「鈴倉茉菜の過去を知っている」とだけ書かれていました。
【承】殺した夫が帰ってきました のあらすじ②
手紙の主は和希かもしれないと思い、茉菜は和希の行動を調べてみることにしました。
ですが、これといって疑わしいところが見当たりません。
そして優しく穏やかな和希との生活に茉菜は幸せを感じるようになり、今では和希を信じたいという気持ちが強くなりました。
和希が外泊していたある日、茉菜の元に再び手紙が届きます。
そこには「鈴倉茉菜が殺した」とだけ書かれていました。
同時に、茉菜のスマホが鳴り響きます。
相手は、宮城県の大山署の刑事・西垣からでした。
西垣から和希と思われる白骨自体が見つかったことを告げられた茉菜は仙台へと向かいます。
大山署に着いた茉菜は、山中で見つかった白骨死体の歯形から和希のもので間違いないことを聞かされます。
西垣は、何年もの間、自分の夫の捜索願いを出さなかった茉菜を疑っている様子でした。
茉菜は和希を殺したことがバレるのではないかと焦りますが、証拠も見つからないことから事故として片付けられるとのこと。
大山署を出た茉菜は東京へは戻らず、そのまま昔住んでいた盛岡へと向かいます。
【転】殺した夫が帰ってきました のあらすじ③
盛岡に着いた茉菜が歩いていると、突如穂高が現れました。
茉菜は必死に走って逃げようとしますが、穂高に捕まってしまいます。
その時、和希が現れ茉菜を助けました。
和希の本当の名前は和田佑馬。
あの2通の手紙を出したのは佑馬でした。
警察官だった佑馬は和希の白骨死体が見つかったタイミングであの手紙を出し、茉菜に揺さぶりをかけたのでした。
佑馬は仙台のショッピングモールへと茉菜を連れて行きます。
そこには昔、茉菜を可愛がってくれていた松木が掃除係として働いていました。
松木と再会を果たした茉菜は佑馬に全てのことを明かすことを決めました。
茉菜の本当の名前は上坂愛。
今まで鈴倉茉菜になり代わっていたのでした。
ネグレクトの母に育てられた愛は無戸籍でした。
小学校へ通わせてもらえずにいた愛に、松木はいつも勉強を教えてあげていました。
16歳になった頃、母の再婚相手が住むアパートに転がり込む形で住むことになった愛は、再婚相手の連れ子で血のつながらない兄と肉体関係にありました。
ある日、恋仲だった男性にそのことがバレてしまい、そのショックから愛は家を飛び出します。
【結】殺した夫が帰ってきました のあらすじ④
仙台へ向かった愛は鈴倉茉菜と知り合います。
茉菜の母は、何度も再婚を繰り返していました。
似たような境遇だった愛と茉菜は意気投合し、2人は一緒に住むこととなります。
ある日、茉菜は交際相手の鈴倉和希との子を妊娠します。
ですが、和希からの度重なる暴力で茉菜は流産してしまいました。
その後、別れ話を持ちかけた茉菜は和希に殺されそうになります。
ですが、茉菜はタイミングを見計らい、和希を崖の上から突き落し殺してしまいました。
泣きながら、和希を殺してしまったことを愛に打ち明ける茉菜。
自首しようと2人は警察へ向かいます。
その矢先、地面が大きく揺れ、巨大な津波が2人に襲い掛かります。
愛は茉菜を助けようと必死に手を伸ばしますが、愛が掴んだのは茉菜が持っていたバッグでした。
茉菜はそのまま濁流に飲みこまれてしまいます。
震災後の混乱に乗じた愛は、鈴倉茉菜として生きることを決め、東京へと向かいました。
無戸籍だった愛が鈴倉茉菜になりすましていることは、誰も気づきませんでした。
たった1人を除いては。
佑馬は茉菜の母の再婚相手の息子でした。
また佑馬にとって茉菜は昔一目惚れした相手。
父親が亡くなり、身辺整理をしていた佑馬は茉菜の行方を追いました。
そして茉菜になり代わっていた愛のことを知りました。
昔、茉菜が大事な人だと言いながら見せてくれた写真。
愛はてっきり写真の人物は和希だと思い込んでいましたが、実は佑馬の写真でした。
その為、愛は佑馬が和希になりすましていることに気づかなかったのです。
佑馬は警察へ全てのことを話すよう愛に言いました。
佑馬との幸せだったあの日にはもう戻れないことを知り、愛は涙をながしました。
佑馬は愛の戸籍が作られることを告げます。
そしてそっと呟きました。
「幸せな時間だと思っていたのは愛だけじゃないから」と。
殺した夫が帰ってきました を読んだ読書感想
自分が殺したはずの暴力夫が、優しい性格となって主人公・茉菜のもとに現れます。
その正体は幽霊なのか、幻覚なのか、双子の兄弟なのか、誰かが整形し茉菜に近づいているのか。
いろんな結末を予想しながら、あっと言う間に読み終わってしまいました。
悲しい境遇を持つ茉菜の過去に遡りながら、最後に全ての伏線が回収された時に予想不可能な結末が待ち構えています。
まさか茉菜も、死んだはずの夫・和希もなりすましていたとは思いもよりませんでした。
何度も読み返してしまうこと間違い無しです。
ミステリー好きの方にはおすすめの作品でした。
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