「ヒルビリー・エレジー」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|J.D.ヴァンス

「ヒルビリー・エレジー」

著者:J.D.ヴァンス 2017年3月に光文社から出版

ヒルビリー・エレジーの主要登場人物

<私>(わたし)
本作の主人公。自叙伝。<母>(はは)
主人公の母親、薬物中毒、看護士<ウシャ>(うしゃ)
主人公のガールフレンド

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ヒルビリー・エレジー の簡単なあらすじ

貧しい白人家庭に生まれた「私」は、薬物中毒の母親に育てられましたが、軍隊に行き努力をする事で人生が変わりました。

その後イエール大学の奨学金をもらって就職活動をする時にはじめて、世の中には下の階層の人にはアクセスすらできない世界があることを知ります。

彼は弁護士になり、自分の人生を回顧するところから物語は始まります。

ヒルビリー・エレジー の起承転結

【起】ヒルビリー・エレジー のあらすじ①

悲惨な少年時代

「私」が生まれたのは、アメリカの中西部、山脈付近に暮らす白人コミュニティです。

昔は炭鉱があり栄えましたが、今はさびれて仕事がなく、貧しい白人が多く住んでいます。

主人公は貧しい白人家庭に生まれ、薬物中毒の母親に育てられます。

母親との会話も汚い言葉が飛び交って、いつも暴力と罵り合いの中で生きていました。

主人公は今は弁護士となっていますが、彼は自分がこのコミュニティから成功者になることがいかに難しいか、自分の生い立ちを語り始めます。

彼は自分が「ヒルビリー」であると言っています。

ヒルビリーとは、貧しい白人たちをさげずんで言う言葉です。

ヒルビリーは白人という人種的には特権階級であるにもかかわらず、社会的には、豊かなアジア系、黒人、ヒスパニック系に押されています。

弁護士で成功したかのように見えた自分も、母親からの電話で実家に戻り、自分はヒルビリーのルーツであることを実感し、そこから逃れられないのを思い知るのです。

【承】ヒルビリー・エレジー のあらすじ②

軍隊で人生を変えようとする主人公

主人公は高校卒業後、大学に行きたかったのですが、お金がなく、仕方なく軍隊に入ります。

軍隊に入ってお金を貯めて大学に行こうと計画しました。

そしてそれは彼の人生を良い方向に変えました。

アメリカは軍人に敬意を払う文化です。

彼は人に敬意を払い、払われることで自分の人格が正しくなっていくのを感じます。

そして彼はアフガニスタン派兵されます。

そこでの経験は強烈なものでした。

自分が経験した以上の悲惨な貧困に生きる子どもを見て、自分の生活を恨んでいたことを反省します。

軍隊の訓練やアフガニスタン派兵は大変つらい経験でしたが、このおかげで彼は自分自身を変えることができました。

軍隊の規則正しい生活、栄養バランスを考えた食事、規律ある態度が身につき、彼は悟るのです。

自分は変わったのだ、これから新しい未来がある、もうあの酷い生活を送った実家に戻ることはないと。

そして彼は無理だろうと思って受験したイエール大学に合格するのです。

【転】ヒルビリー・エレジー のあらすじ③

イエール大学の素晴らしい日々と劣等感

主人公がイエール大学に合格できたのは、実はアファーマティブアクションという、有色人種や貧しい家庭の学生を何割か入学させるという、奨学金制度があったからです。

彼自身も、貧しいから入れた、と言っています。

そしてこのおかげで彼の人生は薔薇色になっていくのです。

まず、ウシャというインド人女子学生と出会います。

ウシャの実家は裕福なインド人家庭で、主人公は家族の仲の良さ、品のある趣味のいい家に魅了されます。

ウシャ自身も自立した賢い女性です。

そして軍隊生活で自信がついた主人公は、イエール大学生でもトップの学生しか入れないジャーナル(日本の新聞部)に入ることができました。

ここに入ると、将来は有名法律事務所にも入れるし、裁判官への道も約束されます。

大学生活で恋人と学業とジャーナルの活動で、彼は実家のことを全く忘れています。

そんな中、彼は就職活動を始めます。

そして知ることになるのです。

下の階層の人間がどんなに頑張っても入れない世界があることを。

【結】ヒルビリー・エレジー のあらすじ④

格差社会と自分のルーツ

主人公が法律事務所の面接に行った時、それは形ばかりのものでした。

豪華なランチを食べながら話すだけです。

彼は水を頼みましたが、ウエイターに「スパークリングですか」と聞かれ、「スパークリング(輝く)水」ってなんだろうと思いながら飲んだら炭酸水で、吹き出しそうになった、と言っています。

高級なレストランは水も種類があることを初めて彼は知ります。

そして形式だけの面接は、実はイエール出身、という肩書きを得た時から決まっていたことに気づきます。

つまりイエールに行かないと面接すら受けることができない、上流社会の閉鎖性に驚きます。

面接に合格し、やっと幸せになるかと思った矢先、彼は実家から呼び出されます。

母親の薬物中毒がひどくなったのです。

彼は実家に駆けつけて悟るのです。

どんなに成功しても、自分のルーツはヒルビリーなのだと。

友達にマクドナルドのポテトを奢るときにも、貧しさとは人を卑屈にしてしまう、まさにヒルビリーたちの「エレジー(悲しみ)」を感じるのです。

しかしウシャと結婚して子供もでき、最後は幸せな情景でこの本は終わります。

ヒルビリー・エレジー を読んだ読書感想

主人公のお母さんは看護婦で、病院の薬物検査で引っかかると職を失うので、主人公の尿を持っていきます。

主人公の恥ずかしさ、悲しみは心を打ちます。

ヒルビリー時代の言葉はとても汚く、逆にイエール時代の言葉がきれいで、経済格差によって環境や知的水準がこんなに変わるのかと思いました。

彼は言います、ミッシェルオバマが嫌われるのは、ヒルビリーの人と対極のエレガントさ、知的さだからと。

ヒルビリーは共和党支持者で、かつトランプ支持者が多いですが、トランプの乱暴な態度や言い方が、ヒルビリーたちに人気があるのかな、と思いました。

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