「街コン柏」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|池田真哉

「街コン柏」

著者:池田真哉 2013年3月に文芸社から出版

街コン柏の主要登場人物

成瀬悠斗(なるせゆうと)
主人公。機械メーカーでクレーム対応に追われている。1から女性との関係を築くのが苦手。

松田洋次(まつだようじ)
成瀬の幼なじみ。何事も器用にこなすが物にはならない。

新田樹里(にったじゅり)
見た目はおとなしく幼い。地域の魅力のPRに積極的。

近藤アキ(こんどうあき)
実体験を創作に生かす兼業作家。長身でスレンダー。

大門渡(だいもん わたる)
アキの元カレ。複数の企業の顧問をしていて経済的にも頼りになる。

街コン柏 の簡単なあらすじ

成瀬悠斗が地元の友だち・松田洋次と一緒にエントリーしたのは、地域活性化と婚カツを目的とした街コンです。

イベントを通じて知り合った新田樹里と自作のご当地映画の公開を目指し、小説家の近藤アキも仲間に加わります。

何とか映画を完成までこぎ着けた成瀬は、プライベートでも樹里とお付き合いを順調に重ねた末に結婚するのでした。

街コン柏 の起承転結

【起】街コン柏 のあらすじ①

柏コン参加でルーチンから抜け出す

30代の半ばで独り身であることに孤独を感じていた成瀬悠斗に、小学生からの付き合いがある松田洋次が電話をかけてきました。

千葉県の柏市で開催される合同コンパですが個人での参加は認められないために、同性2名以上で申し込まなければなりません。

都内の機械メーカーに勤務している成瀬が帰宅したのは深夜遅くになってで、柏駅から徒歩で10分程度のワンルームマンションを借りています。

人数は男女総勢で300名、場所は柏駅周辺のエリアでも特徴のある20軒ほどのおしゃれな飲食店、1時間ごとに店替えで3ラウンド制。

「街コン柏」で検索してホームページにアクセスしてみると、思いの外に書き込みが多いです。

昔から松田の周囲には異性が集まっていましたが、目の前を通りすぎるだけで一向に交際にまでは発展していません。

成瀬の方も平日は仕事一辺倒で、週末になるとその疲れを取るかのようにダラダラと寝ていました。

同じように続く毎日を変えるために、ふたりは新しいパートナーを見つけるつもりです。

【承】街コン柏 のあらすじ②

私たちの街をシナリオに

街コン当日に柏神社の境内で待ち合わせをした成瀬と松田は、まちづくりボランティアをしている4人組の女性と同席しました。

その中でも柏市のイメージを高めるための企画に携わっているという、20代らしき新田樹里と成瀬は意気投合します。

昭和初期には芸術家が集う避暑地、1970年代にはベッドタウン、2000年前後からサッカーチームのホームタウン… まだまだ歴史が浅いこの街のために樹里は前々から柏住人を題材にした映画を撮ることを考えていますが、資金面では見通しが立っていません。

席替えの時間が近くなったために成瀬は彼女とメールアドレスを交換して、近いうちに連絡すると約束しました。

次に隣り合わせになったのは同世代かと思われる近藤アキという女性で、事業と平行して何冊かの恋愛小説を刊行しています。

同じく柏出身だというアキは、映画の脚本に協力してくれるそうです。

親しみやすく柔らかそうな頬がかわいらしい樹里、髪の毛が長くミステリアスな雰囲気を漂わせたアキ。

お開きとなって参加者が解散した後で、成瀬がふたりっきりの二次会へと誘ったのはアキです。

【転】街コン柏 のあらすじ③

ふたりの美女に挟まれた街おこし男が選んだのは

アキが言うには自分の行為のすべてが小説につながっていて、成瀬と一夜をともにしたことも「愛情」ではなく「実験」にすぎません。

アキへのときめきはすっかり冷めてしまった成瀬ですが、彼女は6カ月をかけて一気に脚本を書き上げました。

登場人物はお金を稼ぐことに熱中している若者たち、舞台となるのはとある地方都市、テーマは少子化。

愛の力によって男も女も活力が湧いていき、最終的には生き方を改めるというのが大まかなあらすじです。

アキがこれほどのやる気を見せたのは、制作チームの中にかつての恋人・大門渡の存在があったからでしょう。

とにかくよくしゃべりコンサルタントとしても押しが強い大門のおかげで、商店街や地元企業からの協賛を得られます。

完成した脚本をあらゆる方面に売り込むのは、ボランティア活動で人脈を培ってきた樹里の役割です。

成瀬を挟んでアキと樹里のあいだには時おり緊張感が走りますが、結果的にはこのライバル関係が映画を良い方向へと導くことになりました。

【結】街コン柏 のあらすじ④

それぞれのエンドクレジット

試写会の成功をきっかけにして大門は街づくりコンサルタント、略して「街コン」として独立することになりました。

多忙な中でもマイペースにじっくりと手弁当で仕事をする大門を見直して、アキは彼のもとへと帰っていきます。

アキは次回作の構想を練って執筆に励んでいますが、その中には成瀬をモデルにしたキャラクターも活躍する予定です。

相変わらずフラフラと放浪している松田が落ち着くには、しっかりと家庭につなぎ止めてくれるような女性の存在が必要でしょう。

あの街コンの日から成瀬は複数の女性からアプローチを受けてモテモテ感を味わうことができましたが、あくまでも一時的なものでしかありません。

大きな波が引いていくように静かな日常が訪れると、側にいてくれたのは樹里だけです。

成瀬が樹里にプロポーズをしたのは映画公開日の3カ月後、場所はウォーキングやマラソン大会で有名な手賀沼のほとり。

成瀬には幸せはどこからやって来るのかは分かりませんが、心を開いて出会う機会を求めれば未来は手の内にあることを信じているのでした。

街コン柏 を読んだ読書感想

自宅のマンションとオフィスを行き来する、無機質な日々を繰り返すアラフォー男の成瀬悠斗が主人公です。

ネットで調べた情報をあっさりと信じて、その場のノリで合コンに参加してしまうところは1980年代生まれのでしょう。

キュートな年下女性の新田樹里と、知的でさばさばとした近藤アキのあいだで揺れ動く優柔不断さも憎めません。

東京から快速列車で30分程度、田舎というにはにぎやかで都会というほど栄えてもいないリラックスした街。

「北の鎌倉」や「東の渋谷」などとちょっぴり皮肉なネーミングセンスを付けられた、千葉県柏市の微妙な距離感に重ね合わせてしまいました。

コメント