「ある日、セルリアンブルーの空に」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|橘ふみ恵

ある日、セルリアンブルーの空に 橘ふみ恵

著者:橘ふみ恵 2011年4月に文芸社から出版

ある日、セルリアンブルーの空にの主要登場人物

山里ゆり子(やまざとゆりこ)
ヒロイン。看護師として働いた後で家業を手伝う。好きな人には傷ついてでもぶつかっていく。

谷村純一郎(たにむらじゅんいちろう)
ゆり子の元彼。有名大学から大企業に就職して社長にまで昇り詰める。信仰心を植え付けられたが年を取るにつれて苦しい時の神頼みになる。

篠田(しのだ)
ゆり子の新米ナース時代の仲間。人生のすべてを医療にささげる。

啓太(けいた)
ゆり子の孫。知的な面持ちで親族の誰にも似ていない。

ある日、セルリアンブルーの空に の簡単なあらすじ

10代の終わりに谷村純一郎とお付き合いを始めた山里ゆり子でしたが、考え方の違いや宗教上の理由で分かれます。

別の男性と結婚して平凡な毎日を送っていたゆり子が見たのは、新聞の一面に載るほどの大物となった純一郎です。

再び連絡を取り合うようになるとゆり子は徐々に心変わりをしていき、すべてを捨てて彼の元へ向かうことを決意するのでした。

ある日、セルリアンブルーの空に の起承転結

【起】ある日、セルリアンブルーの空に のあらすじ①

恋に落ちたナイチンゲールの卵

博多の街を見下ろす丘の上にある看護学校で実習を受けている山里ゆり子は、同じ敷地内にある学院と寮とを行き来する毎日で刺激がありません。

そんなゆり子の前に現れたのは九州でもトップクラスの大学に通っている谷村純一郎で、背も高くて顔もキリリとした男前です。

「ナイチンゲールの誓い」を掲げる全寮制の学校のために、男性が訪ねてきても面会室という関所のような狭い場所で短い時間だけ言葉を交わすくらいでした。

門限も午後10時と厳しく設定されていますが、同じような恋愛をしている先輩に裏口のカギを開けておいてもらいます。

夜間には舎監の見回りがありますが、同室の篠田に代返を頼んでいるのでバレません。

初めてふたりだけで旅行に行ったのは世間があさま山荘事件が世間を騒がせていた1972年、目的地は山口県の青海島。

美しい日本海を一望できて風情のある旅館に新婚カップルのふりをして泊まりましたが、従業員にはふたりが夫婦でないことはお見通しだったでしょう。

【承】ある日、セルリアンブルーの空に のあらすじ②

ふたりの旅路を邪魔するのは神様

純一郎から母親を紹介されたゆり子でしたが、彼女はある宗教家に異様なほど心酔していました。

その母から幼い頃から徹底的に「教え」をたたき込まれた純一郎も、良妻賢母を理想の女性像とする古風なところがあります。

もっと自由で好奇心に満ちあふれた暮らしを望んでいるゆり子は、おとなしく家庭に収まっていられるようなタイプではありません。

これまでにプレゼントされたアクセサリーはまとめて突き返し、受け取ったラブレターはマッチで火を付けて灰に。

純一郎との関係が破綻したことを打ち明けたのは篠田くらいでしたが、彼女との付き合いも看護学生がナースキャップを受け取る戴冠式が終わる頃まです。

国立の病院に配属されたゆり子でしたが任期の2年を待たずに退職したのは、土木関係の会社を経営している父親が亡くなったために実家に帰って後始末をするためです。

跡を継いで社長になった男性と結婚したゆり子はすぐに娘を出産しますが、時期的に考えると父親が純一郎でもおかしくありません。

【転】ある日、セルリアンブルーの空に のあらすじ③

一面から飛び込んできたかつての愛しい人

夫はこれといった野心もない人で、工事の受注は減っていき会社の規模も縮小して古くから働いていた従業員も去っていきました。

やっかい事を押し付けられるようになったゆり子は、経理を全面的に引き受けて何とか切り盛りしていきます。

成長した娘は名古屋で出会った男性と結婚して、生まれてきたのは男の子ですが凡庸な両親とはまるで別人です。

しいて言うならば純一郎にそっくりなために、ゆり子はこの啓太と名付けられた孫のことが特にかわいくて仕方がありません。

いつものように朝刊の紙面を隅々まで読んでいたゆり子は、ある経済界の成功者が投稿したエッセイを見つけました。

顔写真入りで記載されているために紛れもなく純一郎だと分かり、たいした期待もせず会社宛てにeメールを送るとすぐに返事がきます。

入社してから今日まで日本全国を転々としてきたこと、とんでもない確率をくぐり抜けてトップに就任したこと、先日のリーマン・ショックで苦難の船出になるのは間違いないこと。

ゆり子と同じく孫に恵まれたという純一郎ですが、いまだに忙しくこの頃では昔を思い出して涙ぐむこともあるそうです。

【結】ある日、セルリアンブルーの空に のあらすじ④

真っ青な空に迷いなし

純一郎は誰もがしる一部上場企業の社長、ゆり子は家族経営の小さな会社の社長の妻。

直接会うことには引け目を感じて悩んでいたところ、相談に乗ってくれたのは今でも博多に住んでいる篠田です。

看護部長にまで昇進したという篠田は、学生の頃にふたりで一緒に歩いた散歩コースに付き合ってくれます。

商店街の突き当たりにある踏み切り、緑の木々に囲まれた協会、テレビ塔のある丘までの道のり。

緩やかな坂道をのぼりきった先にはセルリアンブルーの空には光が射していて、眼下に広がる博多の街並みはあの頃と何も変わっていません。

「あなたが本気だったら応援する」という篠田の言葉に励まされたゆり子が、純一郎からメールを受け取ったのは12月31日です。

浅間山の見える群馬県前橋市に滞在しているという純一郎は、家族旅行でも出張で来ている訳でもありません。

あの山荘での悲劇的な事件から37年、ようやくゆり子は自分の恋人が純一郎たったひとりだったことに気がつき覚悟を決めるのでした。

ある日、セルリアンブルーの空に を読んだ読書感想

修道院のように厳格なナースの養成所で学びながらも、恋するトキメキを抑えられない主人公の山里ゆり子がほほえましいです。

頭脳はピカ一でルックスも申し分はなく、将来を添い遂げるには絶好な好青年・谷村純一郎。

そんな彼の背中に影を落としているのが、得たいのしれない「神の教え」だったというのが皮肉でした。

赤軍が日本中を震え上がらせていた昭和の世相と、記憶に新しい平成の経済恐慌もさりげなく織り込まれていて面白いですよ。

ドラマは期待できないものの安定した老後を選ぶのかと思いきや、ラストで大勝負に打って出るゆり子の行動力に驚かされました。

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