「イノセント・デイズ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|早見和真

「イノセント・デイズ」

著者:早見和真 平成26年3月1日に新潮社から出版

イノセント・デイズの主要登場人物

田中幸乃(たなかゆきの)
放火殺人犯の死刑囚。報道で有名になる。

佐々木慎一(ささきしんいち)
幸乃の幼なじみ。幸乃の無実を信じている

小曽根理子(おぞねりこ)
幸乃の中学時代の友人。翻訳家を目指していた。

イノセント・デイズ の簡単なあらすじ

ある日、田中幸乃は元恋人の家に放火殺人をして死刑囚となります。

しかし、ニュースで報道される事実とは裏腹に、幸乃に対して違った印象を持つ人も少なくありませんでした。

その隠された真実を解き明かしていく、早見和真さん著書の長編ミステリーです。

イノセント・デイズ の起承転結

【起】イノセント・デイズ のあらすじ①

異常な放火殺人犯

ある日のニュースで、幸薄そうな女性が放火殺人をしたという報道がされていました。

その放火犯は、田中幸乃です。

幸乃は元恋人である敬介さんのストーカーをしていて、気が狂い、放火に手を染めたという主旨の内容でした。

その後は彼女が私生児として生まれたこと、養父からの虐待があったこと、強盗致傷事件を起こしていたとこと、放火前に整形をしていたこという事実が次々と明らかになり、報道は加熱していきます。

被害者遺族の声も凄まじく、世論からも死刑にするべきだという声が聞こえる程でした。

加えてワイドショーでは、「整形シンデレラ殺人事件」と命名までし、裁判員制度初の女性死刑囚が誕生したことでも、田中幸乃は注目を集めてしまったのです。

しかし、田中幸乃に出会ったことのある人たちは、その報道に違和感を覚えていました。

また、それと同時に彼女が死刑判決を受け入れて、ホッとする人物も少なくありませんでした。

彼女の半生は、報道とはまた違ったものだったのです。

【承】イノセント・デイズ のあらすじ②

幼少期の幸乃

幼少期の幸乃は、病弱ながらも幸せな家庭で育っていました。

確かに私生児ではありましたが、養父にも愛され、連れ子で1つ年上の姉とも仲が良かったのです。

しかし、ある日、母親が運転中に持病を引き起こし、交通事故で亡くなってしまいます。

悲しむ父親は、辞めていたお酒を飲んでしまい、「必要なのはお前じゃない」と1度だけ幸乃の顔をぶってしまったのでした。

しかし、このことが何故か近所に伝わり、父親が虐待をしているという噂になってしまいます。

そうして幸乃は結局、母方の祖母に引き取られることとなってしまいました。

引っ越した町は宝町という、低所得者層が集まる町でした。

幸乃はそこから中学生となり、理子というクラスメイトと友達になります。

しかし、理子は不良グループにも属するような女の子でした。

そして理子は、グループに仲間はずれにされるのが怖く、金目のものをプレゼントしたりしていたのです。

そんなある日、理子と幸乃は古本屋に行きます。

そこで、誰もいないレジに理子は手を伸ばしてしまいました。

お金は盗まなかったものの、それを店主の老婆に捉えられ、とっさに突き飛ばしてしまうのです。

どうやらこの古本屋では、多くの窃盗事件が起こっているようで、その犯人が理子だと店主は思ったようでした。

このままでは、捕まると思った理子は、まだ少年法に引っかからない13歳の幸乃に身代わりを頼み、自分だけ逃げて行くのでした。

【転】イノセント・デイズ のあらすじ③

敬介と幸乃

強盗致傷事件の身代わりとなった幸乃はその後、児童自立支援施設で育ちます。

そこから出た幸乃は20歳となっていて、敬介と付き合うようになりました。

しかし、敬介はパチスロにハマり、幸乃にお金をたくさん借ります。

それだけでなく、暴力もふるうような男でした。

ですが、幸乃は自分を必要としてくれるのは敬介しかいないと、彼に尽くすようになっていくのです。

しかし、敬介は新しい彼女が出来て変わっていきます。

彼女との未来を考え、幸乃に別れを告げました。

とうてい理解出来なかった幸乃は、別れを拒みますが、敬介は住所も電話番号も替え、妻と双子の赤ちゃんと共に新しい生活を始めたのでした。

しかし、友達からの助言で幸乃への借金返済は、ネット銀行から欠かさずしていました。

ある時、うっかり自宅近くの銀行から入金すると、幸乃はそれを執念に調べ、敬介の自宅までたどり着きます。

何をしているんだろうと自分を咎める幸乃でしたが、鬱も再発し、自分が壊れるような感覚に陥っていました。

【結】イノセント・デイズ のあらすじ④

死刑執行

佐々木慎一は、幸乃の幼なじみでした。

彼だけは、雪乃がこんな事件を起こすはずがないと信じていました。

なぜなら、中学生の頃に古本屋で窃盗を繰り返していたのは自分だったからです。

彼は、幸乃がまた誰かの罪を被っているのだと直感的に分かっていました。

そして、友人たちの聞き込みをもとに、ある人物にたどり着きます。

それは、幸乃の裁判を傍聴していた老婆と金髪の少年でした。

実は、放火殺人の真犯人は金髪の少年だったのです。

そして、金髪の少年は自分の罪に耐えきれず、自殺をしてしまっていたのでした。

彼の三回忌を終え、老婆も事実を公表しなければならないと、やっと真実に向き合う覚悟が出来ます。

やっと突き止めた真実に、慎一は喜びました。

急いでこの事を幸乃に知らせようとします。

しかし、運悪く時が遅すぎました。

幸乃の死刑は執行されてしまったのです。

幸乃は死ぬことをずっと待ち焦がれていました。

自殺をしてはいけないと人から言われたこともあり、どうやって死んだらいいのかをずっと考えていたのです。

こうして、慎一の想いが届くことはなく、幸乃の一生は幕を閉じたのでした。

イノセント・デイズ を読んだ読書感想

最後の方は、どうか間に合ってくれ!と祈るような気持ちでページをめくっていました。

静かだけども熱い闘志が文書に散りばめられていて、読んでいてとても面白かったです。

賛否両論の別れる展開となっていて、読み応えもあります。

読んだ後は死刑のことについて、いろいろと考えてしまいました。

また、普段ニュースで見ている報道は、何が真実なんだろうと、疑うきっかけにもなりました。

犯人は全てが悪いようにも思えるけれど、報道次第でそれは変わるんじゃないかなと思ったからです。

読み手によって感じ方も様々だと思うので、ぜひ多くの人に読んでもらいたいです。

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