著者:椰月美智子 2016年8月に角川書店から出版
明日の食卓の主要登場人物
石橋あすみ(いしばしあすみ)
静岡在住の専業主婦。36歳。夫の実家の敷地内に家を建て、優等生の息子とサラリーマンの夫・太一と暮らす。
石橋留美子(いしばしるみこ)
神奈川在住のフリーライター。43歳。やんちゃな2人の息子とフリーカメラマンの夫・豊と暮らす。
石橋加奈(いしばしかな)
大阪在住のシングルマザー。30歳。若くして結婚、出産、離婚し、その後は朝晩働きながら一人息子を育てている。
明日の食卓 の簡単なあらすじ
「イシバシユウ」という名前の8歳の男の子を育てる3人の母親たちは、それぞれ異なる環境で子育てをしながら忙しい毎日を送っていました。
大変ながらも幸せな生活を送っていた彼女たちですが、少しずつ家庭が崩れていきます。
そんなとき、我が子と同じ名前・歳の「イシバシユウ」が母親に殺されたというニュースが入ってきます。
3人は心を痛めますが、それぞれが問題に向き合い、苦難を乗り越えて前に進もうとしていきます。
明日の食卓 の起承転結
【起】明日の食卓 のあらすじ①
静岡に暮らすあすみは、息子の優と夫の太一と平穏な毎日を送っていました。
同じ敷地内には義母も暮らしています。
最近は習字教室に通い始め、そこで気の会う若林奈々という友人もできました。
優しい夫と素直で成績優秀な息子がいて、好きな教室にも通える自分の暮らしを、あすみは幸せだと感じていました。
神奈川に暮らすフリーライターの留美子は、毎日ケンカばかりのやんちゃで目が離せない2人の息子、悠宇と巧巳に振り回される毎日を送っていました。
夫の豊は家事にも育児にも非協力的で、ワンオペ育児の状態です。
そんな中、日々の育児の様子を綴ったブログは好評で、留美子はライターとしてまた本格的に仕事をしたいと考えていました。
大阪に暮らすシングルマザーの加奈は、パートを掛け持ちして、朝早くから夜遅くまで働きながら一人息子の勇を育てていました。
貧しくはありましたが、優しい勇と2人でつつましくも懸命に日々の生活を送っていました。
【承】明日の食卓 のあらすじ②
ある日あすみのもとに、優と同じクラスのレオン君のママから、優がレオンをいじめていると突然電話がかかってきます。
驚くあすみでしたが、夫に話しても取り合ってもらえません。
優に話を聞くと、優は涙を浮かべて否定します。
後日、レオン君のママからも、優ではなく光一くんにやられたと連絡があり、あすみはほっと胸をなでおろしました。
しかし、再びレオン君のママから電話があり「全部、石橋優が仕組んだことだった!悪魔っ!」と怒鳴られてしまうのです。
遠足の朝でもケンカする息子たちと、子どものことに無関心で協力的でない豊にうんざりしていた留美子のもとに、いい話が舞い込んできました。
昔の出版担当者からライターの仕事の話がきたのです。
喜ぶ留美子でしたが、逆に豊は仕事が打ち切りになってしまい、夫婦の関係は微妙なものになっていきます。
仕事が増えて忙しくなっていく留美子に対し、豊は家でごろごろしたりお酒を飲んだりすることが増えていきました。
家事や育児を手伝わない夫、騒がしい子どもたちに留美子の苛立ちは募っていきます。
ある日、加奈が勇を留守番させて買い物から戻ると、加奈の弟の正樹が家に来ていました。
仕事を辞めたからお金を貸してほしいと言う正樹に、加奈は2000円だけ渡します。
授業参観の日、加奈は西山力也君のお母さんから話しかけられます。
力也君のお母さんは、加奈の働くコンビニに若い男と一緒によく買い物に来るお客さんでした。
そんなある日、担任の先生に勇の机から力也君の給食費の千円が出てきたということを聞かされます。
勇に話を聞くと、力也君が自分でお金を抜いて勇の机の中に入れたというのです。
【転】明日の食卓 のあらすじ③
学校に呼び出されたあすみは、優が光一君に命令してレオン君をいじめていたという事実を聞かされます。
「実験だった」と悪びれもしない優に、あすみは大きなショックを受けます。
そんなあすみを太一は「お前のしつけが悪い」と責めました。
そしてある日、あすみは優が庭で義母を蹴り飛ばしているところに遭遇します。
義母は認知症になっていて失禁をしていたのでした。
あすみが義母を家に入れようとすると臭いと怒る優を、あすみは思わず突き飛ばしてしまいます。
太一を小ばかにする態度を取る優は、太一の浮気を指摘し、殴られると大声をあげて、ついには警察が来ることになってしまいます。
やっと夕食の支度をしても片付けもしない子どもたちにイライラしていた留美子は、豊に対してもきつい言葉を言ってしまいます。
すると豊は逆上し、子どもたちに暴力をふるって家を出て行ってしまいました。
夏休みは子どもたちを留美子の実家で預かってもらい夫婦で穏やかに過ごすことができた留美子でしたが、子どもたちが帰ってくると豊は怠惰な夫にもどり、部屋はすぐにめちゃめちゃになり、父子はまたケンカを始めます。
留美子は怒りを抑えられず、豊とは殴り合いのケンカになり、悠宇にも手をあげてしまいました。
夏休みのある日、正樹が加奈の家から通帳とハンコを持って逃げてしまいます。
それは借金返済の目途も立ち、勇との小旅行を考えていた矢先のことでした。
加奈が留守の間の出来事で、帰宅した加奈は勇を問い詰めてしまいました。
加奈は力也君のお母さんから「デリヘルで一緒に働かないか」と誘われます。
弟に全財産を持ち逃げされ、パートの契約も解除となった加奈の心は揺れます。
その数日後、勇が大火傷を負ってしまいます。
病院に連れていくも、なぜもっと早く連れてこなかったのかと叱責され、虐待を疑われた加奈のアパートには児童相談所の人が訪ねてきました。
【結】明日の食卓 のあらすじ④
義母はデイサービスに通うことになりました。
太一と優はぎこちない関係のままでしたが、あすみのお腹には新しい命が宿っていました。
イシバシユウの虐待死のニュースを見て心配した奈々から未来を見通せる先導師の先生を紹介されたあすみは、お腹の子は石橋家の救世主になると言われます。
留美子は豊と離婚することにしました。
親権は留美子がとり、2人の息子と3人で暮らしていくことにしました。
イシバシユウの事件は留美子にとって衝撃的で、その母親の石橋耀子に2度手紙を出しました。
返事には石橋耀子の正直な気持ちが書かれており、留美子は我が家で起こってもおかしくなかったとむせび泣くのでした。
勇自身が児童相談所の人に激しく抗議したため、加奈の虐待の誤解は解けました。
加奈は怒りより世間が勇を心配してくれていることにありがたさを感じていました。
イシバシシユウの事件に憤りを感じた加奈は、力也君のお母さんの恋人に力也君がDVを受けていると気づき、児童相談所に連絡するのでした。
明日の食卓 を読んだ読書感想
小学3年生の男の子「イシバシユウ」が母親に殺された、という虐待のシーンから始まるこの物語は、とても衝撃的なものでした。
そのあと登場する「イシバシユウ」という名前の息子を持つ3人の母親のいったい誰が子どもを殺してしまったのか、いったい何があったのか、どきどきしながら読み進めていくと、3人の息子ではない「イシバシユウ」君の事件であることがわかります。
しかし、それがわかってほっとするというより、この事件はどこの家庭でも、誰にでも起こりうるものだと恐ろしく感じました。
我が子はこれ以上ないほどに愛おしい存在です。
だけど、どうしようもなく苛立ってしまうときもある、それだけ子育ては大変なことだと思います。
子育てをしている母親として、とても共感できる、考えさせられる話でした。
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