著者:佐藤究 2016年8月に講談社から出版
QJKJQの主要登場人物
市野亜李亜(いちの ありあ)
本作の主人公。SNSはしない、スマホと監視カメラが嫌いな高校2年生。
市野杞夕花(いちの きゆか)
亜李亜の母。42歳で20代のスタイルを保つ。背が高く無口。
市野浄武(いちの じょうぶ)
亜李亜の兄。背が高く、インターネットに没頭する引きこもり。
市野桐清(いちの きりきよ)
亜李亜の父。仕事は住宅販売員。52歳。
QJKJQ の簡単なあらすじ
市野家は猟奇殺人一家でした。
亜李亜はナイフで刺し殺すのを好み、撲殺や失血死を楽しむ家族のことが大好きでした。
ある日、兄が自室で惨殺されているのを発見します。
その翌日には母が失踪し、亜李亜は父が犯人ではないかと疑います。
亜李亜は犯人捜しのために過去の殺人事件を調査する過程で今まで忘れていた過去の記憶を思い出します。
そして今まで父だと思っていた桐清から伝えられた事実は、衝撃的なものだったのです。
QJKJQ の起承転結
【起】QJKJQ のあらすじ①
市野一家は郊外の3階建ての一軒家に住む猟奇殺人一家です。
主人公の亜李亜はナイフで刺し殺すのが得意、兄の浄武は首に噛みついて失血死させるのが好き、母の杞夕花は撲殺好き、父の桐清は血を抜いて殺すのが得意でした。
亜李亜はそんな家族のことが大好きで、今後は大学で心理学を学びたいという夢も持っていました。
亜李亜はbygonesというがらくたを売っている店が好きで、昔のCDなどの掘り出し物を捜しに頻繁に訪れていました。
その店で見つけた鹿の角に惹かれ、お小遣いを貯めて購入し、鹿の角でできた殺人ナイフを作って満足するのでした。
亜李亜の父・桐清は住宅販売員の仕事を持つサラリーマンで自分の書斎を持ち、亜李亜との関係も良好でした。
桐清は「日本住宅売買新報」(通称:バイバイ)を定期購読しており、毎週木曜日に届くことになっているので、亜李亜に「バイバイとどいてるか?」と尋ねます。
珍しく家族4人全員が朝食の席についた日、全員がクールで、亜李亜は嬉しくなりました。
【承】QJKJQ のあらすじ②
ある日、亜李亜は学校帰りに異常な吐き気を覚え、やっとのことで帰宅しすぐに眠りにつきます。
途中で目が覚め、自室で朝まで眠ろうと階段を上っているとき違和感がありました。
普段絶対に閉まっているはずの浄武の部屋のドアが少しだけ開いているのです。
亜李亜は様子を伺おうと兄の部屋にそっと近づいたところで、ドアのこ隙間から血が流れだしていることに気が付きました。
驚いて部屋の中を見てみると、兄がめった裂きにされハンガーラックにくくりつけられ、中腰で浮いていたのです。
亜李亜は、あの兄が殺す側ではなく、こんなふうに殺されるなんてとショックを受けます。
しかしすぐに殺されたことへの怒りに変わり、犯人捜しを始めます。
父と母と一緒に家に痕跡が残っていないか捜索しますが、何もみつかりませんでした。
そして翌日には母が失踪します。
父が犯人ではないかと疑いの目を向ける亜李亜は、これ以上父と一緒にはいられないと、家出を決意します。
父はいつもと同じように冷静で、72時間後にこの家に戻ってくるようにとだけ亜李亜に約束させるのでした。
【転】QJKJQ のあらすじ③
亜李亜は家出をしたはいいものの、行く当てがありません。
悩んだ末、よく訪れる公園で見かけるOLを頼りにすることに決めました。
そのOLは鳩に餌をやるふりをして、鳩を殺して楽しんでいることを亜李亜は知っていたのです。
鳩殺しのOL、通称「鳩ポン」は、ホテルの部屋で殺人や自殺などの事件が過去になかったかを調べる、専門のホテル鑑定士でした。
3日までという条件で泊めてもらえることになりました。
鳩ポンは調査が得意ということで、兄の犯行に使われた、パン切り包丁を使った殺人事件を調べてもらい、2003年に神奈川県で起こった事件が関連するのではないかということを突き止めます。
鳩ポンと亜李亜は神奈川に向かいました。
亜李亜は郊外の眺めや米軍基地を見て、自分は昔ここで暮らしたことがあるということを思い出します。
ジョブレスという名前ののドーベルマンを飼っていたことを思い出し、かつてここに自分の家があったのだと確信を持ちます。
忘れていた記憶を取り戻して混乱する亜李亜ですが、父と話をしなければならないと思い、自宅へ向かうことを決意します。
【結】QJKJQ のあらすじ④
亜李亜は、母と兄について自分が出した答えを父に伝えます。
神奈川で起きた事件と蘇った記憶から、自分の家族だった母と兄は元々存在せず自分の空想の中の2人だったのだと気づいたのです。
神奈川の事件の被害者となった、糸山久美果とドーベルマンのジョブレスは桐清に殺され、母・杞夕花、兄・浄武として亜李亜の頭の中の空想で造り上げた家族だったのでした。
桐清は、この世界には「殺人アカデミー」と呼ばれる人殺しを研究する公的機関があり、自分もその一員だと告白します。
殺人アカデミーは政治でも警察でもなく純粋に殺人をする人を科学的に研究しており、「殺人遺伝子」があるかを突き止めようとしていました。
亜李亜の実の父は生まれながらの殺人鬼で、殺人アカデミーの観察対象とされていましたが、神奈川での事件の後、研究という名の拷問で死んでしまいました。
残された亜李亜は殺人遺伝子を持つのではないかと、観察対象として桐清のそばで生かされていたのです。
桐清は長年亜李亜と生活するうちに情が移ってしまい、亜李亜が別の人として生きられるようにとIDやお金を残して自殺します。
しかし亜李亜はIDとパスポートを林に埋め、亜李亜としていきるため、最後には警察に自首します。
QJKJQ を読んだ読書感想
家族全員が猟奇的殺人者でという市野家の事件が語られました。
冒頭からグロテスクな殺人の話で始まるので、最初は読み進める気があまりしませんでしたが、ストーリーが展開していくうちに面白いと感じました。
殺人に焦点を置いているのではなく、現在の社会体制や人間の本質の部分に切り込む作品だと思います。
普段読まないジャンルですが、直木賞作家の作品ということで手に取る機会がありました。
日本が舞台となっていますが少し非現実的な設定のおかげで、猟奇的殺人一家という異常な設定でも読み進めることができたのではないかと思います。
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