「おっぱいマンション改修争議」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|原田ひ香

著者:原田ひ香 2019年4月に新潮社から出版

おっぱいマンション改修争議の主要登場人物

小宮山悟朗(こみやまごろう)
主人公。メタボリズム建築の提唱者。強引な手法とカリスマ性で資金を集める。

小宮山みどり(こみやまみどり)
悟朗の娘。リノベーション住宅に関するエッセイスト。親の七光りにコンプレックスがある。

市瀬清(いちのせきよし)
悟朗の元教え子。建築家にも革命家にも挫折した過去を持つ。

岸田恭三(きしだきょうぞう)
悟朗の一番弟子。忠誠心が厚く口が堅い。

奥村宗子(おくむらむねこ)
若い頃は舞台劇で脚光を浴びた。現在は無職で老後に不安がある。

おっぱいマンション改修争議 の簡単なあらすじ

型破りな建築家・小宮山悟朗の代表作は赤坂にあるデザイナーズマンション、通称「おっぱいマンション」です。

悟朗が亡くなった後でマンションの老朽化が進み欠陥が露になっていき、建て替え騒動が巻き起こります。

終の住み家を奪われたくない元女優と師匠の汚点を世に出したくないデザイン事務所社長の結託によって、マンションはそのままの形で残ることになるのでした。

おっぱいマンション改修争議 の起承転結

【起】おっぱいマンション改修争議 のあらすじ①

赤坂にそびえ立つシンボル

赤坂ニューテラスメタボマンションは、1960年代頃から70年代にかけて流行したメタボリズムを象徴する建物です。

角の取れた細胞を積み上げたようなデザイン、ふたつに並んで前方に突き出ている円すい形の最上階、小さくポッチリとした丸い窓。

まるで女性のバストのようだと騒がれたことから、「おっぱいマンション」というニックネームで呼ばれていました。

デザインを手掛けたのは小宮山悟朗で、新進気鋭の若き建築家の筆頭としてテレビのインタビューに得意気に答えています。

名古屋の公立高校に通っていた市瀬清が都内のS大工学部に進学したのも、番組を見て悟朗の近くで学びたいと考えたからです。

市瀬はカバン持ちから娘のみどりの世話まで何でもこなしましたが、設計図の実技に不合格となり小宮山の研究室には入れません。

建築学科から自然科学科に転科した市瀬は学生運動に熱中していき、卒業後は北関東の県立高校に理科教師として赴任しました。

定年退職してふたりの娘たちが都内に就職したのを期に、市瀬は赤坂のニューテラスメタボマンションを購入します。

【承】おっぱいマンション改修争議 のあらすじ②

老いた革命家の最後の戦いと父に背を向ける娘

ニューテラスメタボマンションが築50年をこえた頃、雨漏りがひどくなっていに塗装もはがれ落ちていきました。

さいころのような各階の形をきれいに見せるために、このマンションには設計の段階から雨どいがついていません。

管理会社と小宮山デザイン事務所が建て替えに難色を示している中で、市瀬は知り合いの弁護士と連絡を取りつつテレビやマスコミを巻き込んで世論に訴えます。

悟朗は10年前に亡くなっていて、いま現在のマンションの最上階にあるペントハウスの持ち主はみどりです。

みどりは20代で父親の影響下から逃れるためにパリに渡って、日本に帰国してからは部屋のインテリアや古い住宅のリノベーションの専門家として何冊も専門書を出版していました。

父との関係を長年に渡って断ってきたみどりにとっては、赤坂のマンションには何の未練もありません。

最上階の権利の一切を放棄したみどりは、今後は建て替えに関する責任を負わないという契約を管理会社と結びます。

【転】おっぱいマンション改修争議 のあらすじ③

四の五の言わずに建て替えろ

一気に建て替え賛成派が息を吹き返していきますが、区分所有者の5分の4以上の同意を得なければなりません。

建て替えに反対している住人のひとりが、ニューテラスメタボマンションに40年以上住んでいる奥村宗子です。

高校卒業と同時に上京して小さな劇団に入った宗子は、資産家の息子である奥村滋樹から婚約の記念としてこのマンションをプレゼントされました。

新婚生活はすぐに破綻して滋樹は別の女性と暮らし始めましたが、離婚する条件として宗子はふたつの約束を取り付けます。

このマンションに宗子がそのまま住み続けること、毎月最低限の生活費だけは振り込むこと。

宗子はマンションの他の住人や管理人には「滋樹は仕事で行った海外で死んだ」と伝えていましたが、不動産登記と部屋の所有権は今でも滋樹のものです。

たとえ新しいマンションが無事に完成したとしても、本当のオーナーである滋樹や彼の再婚相手に立ちのきを求められるでしょう。

何としてもマンションを壊したくない宗子に接触してきたのは、かつては悟朗の右腕として活躍していま現在は小宮山デザインの社長を引き継いだ岸田恭三です。

【結】おっぱいマンション改修争議 のあらすじ④

胸に秘めたまま墓場まで

住民会議には居住者の代表として市瀬清が、岸田たち小宮山デザインはスペシャルアドバイザーとして出席しました。

あらかじめ岸田と打ち合わせしていた通りに、宗子は会議の半ばほどで手を上げて議長に発言の許可を求めます。

このマンションは希代の建築家・小宮山悟朗が残した芸術品であること、日本中探してもこんな素晴らしいデザインはないこと。

彼女にとってはこの会議は「舞台」そのもので、この演出も今日のために練りに練って考えたものです。

最上階の胸のように突き出た部分に耐火材として使用されているアスベストは、図面には記載されていません。

工事を請け負った工務店の大工も交通事故死していて、設計者の悟朗の他にこのことを知っているのは岸田だけです。

長年に渡って隠してきたことが明るみになれば、小宮山デザインは今まで以上にバッシングを受けるでしょう。

秘密を守り抜くために岸田はデザイン事務所を畳んで、古い美術館のリノベーションをするという名目で海外へと移住をします。

コンサルタントを失った建て替え事業は迷走し始めていき、おっぱいマンションは朽ち果てるその日までずるずると存在し続けるのでした。

おっぱいマンション改修争議 を読んだ読書感想

大胆なデザインで周りの人たちの人生設計まで狂わせていった、小宮山悟朗が物語の背後に君臨しています。

設計主が亡くなった後も以前としてその風変わりな全体像を恥ずかし気もなく見せつける、赤坂ニューテラスメタボマンションこそが本当の意味での主人公なのかもしれません。

偉大な父親に愛憎が半ばする気持ちを断ち切るために、あっさりとマンションの権利を手放す娘・みどりが潔いです。

諦めだらけだった自らの人生の最後に一花を咲かせるべく、戦いを挑んでいく市瀬清にも共感できました。

アスベスト問題からマンション建替法の改正まで、分かりやすく解説されていて勉強になりますよ。

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