著者:宮下奈都 2016年12月に株式会社文藝春秋から出版
静かな雨の主要登場人物
行助
本作の主人公。会社員をしている。幼い頃から足が不自由。
こよみ
行助が通うたい焼き屋の店主。
姉
行助の姉。行助に度々お節介をする。夫と幼い息子と一緒に暮らしている。
静かな雨 の簡単なあらすじ
突然仕事を失い、途方に暮れていた行助。
そんな中、偶然立ち寄ったたい焼き屋で店主のこよみと出会います。
美味しいたい焼きとこよみの人柄に魅せられます。
それから、行助は仕事や家族との関係性に迷いつつも、こよみの存在を励みに、毎日を生きるようになるのでした。
静かな雨 の起承転結
【起】静かな雨 のあらすじ①
会社員として平凡ながらも真面目に働いていた行助。
ところが、ある日突然会社から倒産することを報告されます。
行助は、突然仕事を失い、今後の仕事が見つかるのか途方に暮れながら歩いていた中で、最寄り駅の近くにあるたい焼き屋を見つけます。
寒さの中で、温まろうとたい焼き屋に立ち寄り、自分と同年代でたい焼き屋の店主をしているこよみと出会います。
こよみの作ったたい焼きを食べて、その美味しさに感動した行助は、思わずこよみにたい焼きの美味しさを伝えます。
後日、行助は仕事を探す日々を送ることになり、大変さを感じつつも、たい焼きとこよみという新たに出会った幸せにこれまでの日々と違う楽しさを感じながら時間を過ごすようになります。
それから、母校の大学の研究室という新たな職場で働くようになり、給料は安いながらもマイペースに働ける仕事環境に幸せを感じながら、仕事帰りにこよみが営むたい焼き屋に常連客として通うようになるのでした。
【承】静かな雨 のあらすじ②
行助は、仕事帰りにこよみのたい焼き屋に毎日通い、たい焼きを食べる生活を続けていく中で、こよみに顔を覚えてもらい短いながらも会話を交わすようになります。
その後、他に利用客がいなかった日に、こよみは行助にコーヒーを勧め、2人でこよみの休憩を兼ねて話すことになります。
こよみは、行助に名前とその由来を尋ね、行助はこよみに父親が小説の主人公をもとに名前をつけたことを説明しながらゆっくりとした時間を過ごしていきます。
後日、久しぶりに母親と会った行助は、母親をこよみのたい焼き屋に連れて行きます。
行助は、こよみに関して特に説明しなかったものの、行助とこよみは今後もっと仲良くなれると行助に話します。
後日、行助はこよみからたい焼きを作る際に材料や作り方などで気をつけていることなどの話も聞きます。
行助は、こよみがたい焼きを焼くことについて並々ならぬ情熱を持っていることやその丁寧な仕事ぶりに感心しながら、こよみと日々仲を深めていくのでした。
【転】静かな雨 のあらすじ③
行助は、夫が出張に行っているため実家に帰っているという姉からの誘いを受けて、久しぶりに実家に行って姉と会います。
姉は、行助がこよみと交流を深めていることを母親から聞いたと言い、こよみがどのような人物なのかなどを次々と質問しながら、こよみに合いたいという気持ちを口にします。
その後も、こよみと交流を重ねる毎日を送っていた中で、ある日こよみが交通事故に巻き込まれて意識不明になります。
行助は、こよみが意識を取り戻さない日々が続く中で、こよみと離せない日々に物足りなさを感じていきます。
事故から約3か月後にこよみは意識を回復させたものの、事故のことを覚えておらず、能に障害を抱えていて新たな記憶を蓄積できない状態にあることが判明します。
行助は、こよみの自宅に度々通いながらこよみの生活を支える生活を始めます。
その後、姉と再び会い、こよみのことを話し、こよみとの関係性を今後どうしていくかよく考えてから進むべきだとアドバイスを受けるのでした。
【結】静かな雨 のあらすじ④
行助は、こよみをどう支えていくべきかを考えた末、自分の部屋でこよみと一緒に生活することをこよみに提案します。
こよみは行助の提案を受け入れて、行助とこよみは2人で暮らすことになります。
行助とこよみは、協力して2人暮らしでどう過ごしていくかを、食事などを中心に決めていきます。
それから、こよみは長期間休んでいたたい焼き屋を再開して、事故に遭う前と同じ日常を取り戻していきます。
それから、行助はこよみが電話で姉と話している光景に遭遇し、姉がこよみのたい焼き屋に来ていたことを知ります。
姉は行助に、こよみが素敵な女性であることを嬉しそうに話します。
数日後、行助はこよみが自分の嫌いな食べ物を何度言っても覚えられないことに思わず苛立って強い口調でこよみを責めます。
しかし、こよみが懸命に記憶を保とうと頻繁にメモを取っていることを知り、行助は自分の態度を反省します。
そして、行助はこよみが新しい記憶を維持できないことに苦しみ、時折涙を流す姿を見ながら、こよみとこれからも一緒にいようと改めて決めるのでした。
静かな雨 を読んだ読書感想
「静かな雨」を読んで、緩やかに変わっていく2人の関係性が特に魅力的だと思いました。
行助が偶然たい焼き屋に立ち寄ったことをきっかけに、こよみと交流を始めた中で、大きな出来事が起きない中でも徐々にお互いに心を開き合って、お互いにかけがえのない存在になっていく過程が繊細に描かれていて、癒されながら読み進めていました。
また、こよみが事故に遭った後で、2人がぶつかり合うことがありながらも、お互いへの気持ちを強めていくところが、それぞれの複雑な気持ちを巧みに表現しながら描いていて、2人がどうなっていくのかずっと見守っていきたい気持ちになって一気に読んでいました。
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