「鴨川食堂」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|柏井壽

鴨川食堂

著者:柏井壽 2013年11月に小学館から出版

鴨川食堂の主要登場人物

鴨川流
本作の主人公。京都でこじんまりとした食堂である鴨川食堂を営む料理人。

鴨川こいし
流の娘。鴨川食堂の店員として店を手伝っている。

来栖妙
鴨川食堂の常連客。京都で長年生活している。食に対する知識が豊富。

鴨川食堂 の簡単なあらすじ

京都で娘のこいしに手伝ってもらいながら、鴨川食堂を経営している料理人・鴨川流。

近所の常連客たちの他には、なかなか利用客がいない食堂では、通常の食堂としての仕事の他に、依頼を受けて思い出の味を探すという仕事も行っています。

流は、お店にやって来る依頼者たちの依頼に応じ、思い出の味を探し出して再現し、依頼者たちの背中を押すのでした。

鴨川食堂 の起承転結

【起】鴨川食堂 のあらすじ①

同僚との再会

娘のこいしとともに、寒さの増す京都でいつものように鴨川食堂を切り盛りする日々を送っている料理人の鴨川流。

そんなある日、過去に刑事をしていた頃の先輩にあたる窪山秀治が鴨川食堂にやって来て、流と数年ぶりの再会を果たす。

流は、自分の料理を振る舞いながら秀治とお互いの近況について話を弾ませます。

すると、秀治から近いうちに、会社の後輩である杉山奈美という女性と結婚する予定があり、奈美との結婚を前に亡くなった前妻が作ってくれていた鍋焼きうどんを作ってほしいと持ち掛けられます。

流は、手掛かりが少ない中で、刑事の頃の観を活かしながら調査を進めていき、前妻がどのような材料で鍋焼きうどんを作っていたのかを突き止めていきます。

後日、流は秀治を鴨川食堂に呼んで、前妻が作っていた鍋焼きうどんを再現して、秀治に振る舞います。

秀治は、前妻が作ってくれたものと同じだと、満足しながら鍋焼きうどんを食べて、前妻の知られざる気持ちを流から聞きながら、奈美と夫婦として歩き始める決意を固めて鴨川食堂を立ち去るのでした。

【承】鴨川食堂 のあらすじ②

時を越えてよみがえる淡い恋心

12月になり、寒さが一層厳しくなって来た京都で鴨川食堂を切り盛りしている流。

すると、長年鴨川食堂に通っていて流の料理の腕に絶大な信頼を寄せている常連客の来栖妙が、友人の灘家信子を連れて来店します。

流は、妙と信子に松花堂弁当を振る舞いながら、妙から事前に連絡を受けていた、信子が探している料理に関する質問をします。

信子は、女子大生だった頃に恋をしていた男性と一緒に食べる予定だったビーフシチューを探して欲しいと依頼します。

流は、時間をもらって信子が食べる予定だったビーフシチューを出していたお店やビーフシチューに関する情報を集めて、ビーフシチューのレシピを突き止めます。

それから、後日流は信子にビーフシチューを振る舞いながら、当時恋をしていた男性の近況に関しても詳細に話します。

話を聞いた信子は、過去に上手く男性に気持ちを伝えられないまま別れることになってしまった後悔を打ち明けつつ、男性の気持ちを知って涙を流すのでした。

【転】鴨川食堂 のあらすじ③

新たな人生を歩く決意

春の気配が感じられるようになった京都で、常連客たちや娘のこいしとともに、鴨川食堂でにぎやかな毎日を送る流。

そんな中、山口県からやって来たという廣瀬須也子という女性が来店します。

流は、須也子に小皿を中心とした料理を振る舞います。

その後、須也子は依頼者の話を聞くことを担当しているこいしに、元夫である料理人の岡江傳次郎が自分の店で提供しているとんかつを探して欲しいと打ち明けます。

こいしは、傳次郎が病気にかかって余命宣告を受けているため、最後にとんかつを2人で食べたいのだという切実な気持ちを聞いて、流に対して急いで探して欲しいと力を入れて須也子の依頼内容を話します。

その後、流は調査を行って、傳次郎が作っていたとんかつを再現して、須也子に食べてもらいます。

須也子は、とんかつを食べながら、傳次郎が須也子の言葉をきっかけにとんかつ屋を始める決意をしたことを教えられます。

須也子は、既に亡くなっている傳次郎に対する気持ちを改めて確認しながら、新たな人生への決意を新たにして店を出るのでした。

【結】鴨川食堂 のあらすじ④

料理に込められた母の愛

流は、春になり観光客が特に増加している京都で、いつものように鴨川食堂を営んでいました。

そこに、流の古くからの知り合いである大道寺茜から紹介を受けたという、会社経営者の伊達久彦という男性が来店します。

久彦は、流とこいしに自己紹介をしながら席に座り、旬の食材をふんだんに使用した流の料理を食べます。

それから、こいしに自分が幼い頃に食べていた肉じゃがを探して欲しいと話します。

流は、こいしを通して久彦の依頼内容を聞き、久彦の故郷である広島県に足を運びつつ、肉じゃがに関する情報を集めていきます。

後日、久彦は流の作った幼い頃に食べていた肉じゃがを食べますが、流の作った肉じゃがは自分が依頼したものではないと言い始めます。

すると、流は久彦が5歳の頃に亡くなった生みの母親が、久彦を大人になるまで育てた育ての母親に、肉じゃがのレシピを受け継いでいたことを話します。

久彦は、これまで距離を置いていた育ての母親が、自分に愛情深く接していたことに気づき、育ての母親に対する気持ちを改めます。

そして、仕事だけではなく家族も大切にしようと、心境を変化させて店を去るのでした。

鴨川食堂 を読んだ読書感想

「鴨川食堂」を読んで、流とこいしの仲の良さが特に魅力的だと思いました。

流とこいしは、父娘の2人暮らしをしながら鴨川食堂で一緒に仕事をしていて、時に言い合いになることはありながらも、お互いのことを誰よりも理解し合っています。

仕事やプライベートでの些細なやり取りから、2人が積み重ねて来たかけがえのない時間が感じられて、感心しながら読んでいました。

さらに、こいしの結婚に関して流が気に掛ける様子を見せるなど、お互いになかなか口には出さないけれど今後のお互いの幸せを考えていることがひしひしと伝わって来て、自分も親との関係性を見直さなければと考えさせられながら読んでいました。

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