「ときどき旅に出るカフェ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|近藤史恵

ときどき旅に出るカフェ

著者:近藤史恵 2019年11月に双葉社から出版

ときどき旅に出るカフェの主要登場人物

奈良瑛子
本作の主人公。照明を取り扱う会社で働いている。独身で37歳。

葛井円
瑛子の近所にあるカフェの店主。6年前に瑛子の会社で一緒に働いていた。

新庄遥
円のカフェにやって来る常連客。円の親友でもある。

ときどき旅に出るカフェ の簡単なあらすじ

奈良瑛子は、長年同じ会社に勤務して、仕事に追われる日々を送りながら気ままな独身生活を謳歌していました。

そんなある日、休日に買い物に出かけた瑛子は、近所にカフェがあるのを発見します。

そこで、かつての同僚である葛井円と再会し、その日以来カフェに常連客として通いながら世界各国のスイーツを味わう生活を始めるのでした。

ときどき旅に出るカフェ の起承転結

【起】ときどき旅に出るカフェ のあらすじ①

予期せぬ再会から広がる世界

奈良瑛子は、会社員として毎日仕事をこなしながら、特に楽しみの無い毎日を送っていました。

そんな中で、休日に買い物をしようと思い立ち、出掛けた瑛子は近所にこじんまりとしたカフェがあるのを発見します。

興味を惹かれてお店に入り、メニューを眺めていると聞き覚えのある声で話し掛けられます。

驚いて声がした方を見ると、かつての同僚である葛井円がいました。

円は、カフェの店主で会社を辞めた後、2年前からカフェを経営していたのです。

円は、かつて会社を辞めてカフェを経営しようと考えていると円に相談された際に、冷たく対応してしまったことを思い出し、気まずさを感じます。

それでも、円は瑛子に冷たくされたことを気にしていないようで、オーストラリアの炭酸飲料を瑛子におすすめします。

瑛子は、円から提供された炭酸飲料を飲みながら、円が世界各地を旅しながら、旅先で得た知識を活かしてカフェのメニューを提供していることを知り、興味を惹かれて常連客として通い始めるのでした。

【承】ときどき旅に出るカフェ のあらすじ②

スイーツで解き明かされる謎

瑛子は、常連客として週に何度も円のカフェに足を運び、円のカフェでしか味わえない世界各国のスイーツを味わうようになりました。

基本的に1人でお店に行き、円と話しながらスイーツを食べていた瑛子ですが、学生時代の親友である珠子と休日に2年ぶりに再会し、一緒に夕食を取ろうと食事のメニューもある円のカフェに一緒に行くことになります。

珠子は、カレーとケーキを食べながら、夫でパティシエである恵輔が浮気をしているかもしれないと、瑛子と円に打ち明け始めます。

特に浮気の気配はないのではないかと思っていた瑛子でしたが、円は単身赴任先からケーキを持ち帰って来る際に、保存のきくドボシュトルタという種類のケーキを選んでいることから、誰かと会っている可能性が高いと推測します。

円の推測は当たっていて、恵輔は異性の幼馴染と会っていたことが判明します。

浮気の決定的な証拠は?めなかったものの、珠子は今後浮気に関して警戒しながら過ごすと、瑛子に話すのでした。

【転】ときどき旅に出るカフェ のあらすじ③

明かされる円の過去

円のカフェが少しずつ人気を集めるようになり、瑛子は嬉しさと寂しさが入り混じったような不思議な気持ちを感じていました。

その後、仕事が立て込んでいたことによって、しばらく足を運べていなかった円のカフェに足を運んだ瑛子は、小さめのデザートが数種類のせられたデザートのプレートメニューが人気を集めていて、新規の利用客が増えていることを知ります。

瑛子もプレートメニューを味わって帰宅しましたが、ふとスマホでプレートメニューの画像を検索していると、他のカフェが同じようなメニューを売り出そうとしていることを知ります。

後日、瑛子は円のカフェに嫌がらせをしようとしていると思われる他のカフェの情報について円と話しながら警戒心を強めていました。

すると、他のカフェを経営している男性が来店して、円に対して喧嘩腰の口調をぶつけて帰って行きます。

そして、何が起きていたのかを尋ねる瑛子に、円は他のカフェを経営しているのは自分の兄で、家族との間に問題を抱えていることを打ち明けるのでした。

【結】ときどき旅に出るカフェ のあらすじ④

大切な場所のための戦い

後日、円のカフェに行った瑛子は、常連客で円の親友である新庄遥と一緒に3人だけで話すことになります。

瑛子は、円と遥におすすめされたヨーロッパでよく食べられているというお米を使ったスイーツを食べながら雑談をしていきます。

すると、円は祖母と仲が良く、他の家族が毛嫌いするスイーツでも祖母だけは美味しいと言って食べてくれたことを話します。

さらに、祖母の介護をしていた際に、自分が見ていないうちに祖母が亡くなってしまったことで兄をはじめとした家族から恨まれていることも話します。

それから、遥が兄の元妻であり、同じように家族に虐げられていたことがきっかけで仲良くなったことも説明します。

その後、瑛子と遥は一緒にお店を出て話をして、兄と1人で戦おうとしている円を自分たちも援護しようということで合意します。

そして、後日円は兄と話をすることになり、瑛子もその場に立ち会います。

円と兄がそれぞれの主張をぶつけていく中で、遥がやってきて、祖母が亡くなった日に介護をしていたのは自分で、朝目覚めた時に祖母が亡くなっていたことを打ち明けます。

それから、兄をはじめとした家族が介護を円に押し付けていたことを証言すれば、裁判で不利になるのは兄たちの方だと言い返して、兄を退散させます。

こうして、円は自分の立場もカフェも守ることができたのでした。

ときどき旅に出るカフェ を読んだ読書感想

「ときどき旅に出るカフェ」を読んでスイーツから世界が広がっていくところが特に魅力的だと思いました。

この小説では、円が経営するカフェでアジアやヨーロッパなど世界各地で親しまれているスイーツが幾つも登場します。

スイーツを通して、お米をスイーツとして食べるなど、自分たちの常識にはなかった価値観に触れて、常識にとらわれず柔軟に物事を捉えることで自分の視野を広げることができることに気づかされて、自分が見ている世界を広げていける感じがして楽しくなりました。

それから、仕事や恋愛に関しても、それぞれの考えがあっていいと肯定されているようにも感じられて勇気をもらいました。

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